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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第六章 ヤーラーン帝国淫蕩録
242/362

242 壊れた町

どんな小さな町であっても、その中心には広場がある。

それはただの開けた場所であれば、何かしらの像だったりが置かれていたり、噴水なんかがあったり。

大きな街になれば公園などになっていたりもする、謂わばその町を象徴する場所だ。

そして、当然この町にも広場があった、、、はずだ。


見渡した限りでは、町の中心地なのは間違いない。

だけど、広場であったはずのそこは、町人が運んでいた箱で埋め尽くされていた。

彼等はこの箱を何処かへと運び、また箱を持ってここに戻ってきているようだった。

それが何を意味するのかはさておき、問題なのはその中心。

広場の中央に位置する場所、そこに、形容し難い奇怪な何かが置かれている。

少し離れたこの位置からだと、何かしらの像にも見えるけれど、、、その見た目は決してそんな物ではない。


そう、あの見た目は、魔法師団が持っていた謎の装置と似ている、、、即ち、人の肌の様な外見に、そこかしこが脈打ち、そして、やはり謎の宝石が陽射しを受けて青く輝いている。

但し、像と呼んだ様に、今回の物はほぼ人の形を保っている。

いや、保っていると言っても、その表面はまるで溶かされた様に爛れていて、手足の形もほぼ見えないし、体なんて男か女かすら見分けがつかない。

極めつけは顔だ。

例の宝石は、その顔に当たるであろう部分に埋め込まれているのだ。

しかも、目の代わりだとかそんな生易しい物ではない、顔がほぼ全て宝石で埋め尽くされている。

これがもっと別の何かであれば、まだ芸術作品とでも呼べただろうけれど、これはそんな域を遥かに飛び越している。

私でさえ、目を背けていたい位には悍ましく、そして吐き気を催す。

だけど、、、私はそれから目を離せなかった。

決して認めたくない予感が、一目見た時から拭えない。

それを確かめる様にゆっくりと近付き、その像の傍に辿り着く。

表面は見るに堪えない有様だけれど、体格そのものは維持されているようで、、、恐らく、かなり大柄な人物で、であれば恐らくは男だったのだろうか。


宝石が埋め込まれた頭部、そこに、記憶にある快活な笑みが重なる。

「、、、ヴァネス、、、」

理由なんて分からないし、決して認めたくはない。

けれど、私の直感が、これがヴァネスであると告げていた。

けれど、、、だけど、何がどうしてこんな事になっているのか。

自分でも自分の考えを受け入れられず、顔を背ける。

その視線の先に、一つの木箱が置かれていた。

他の木箱と違い、大きさは片手で持てる程度で、アチコチが赤黒く変色している。

吸い寄せられるようにそれを手に取り、留められていない蓋をそっと持ち上げる。

その中には、予想通りの物が収められていた、、、あの宝石がある場所に本来あったはずの物、、、ヴァネスの顔だ。

抉り取られ、恐怖と苦痛と驚愕に染まった彼の顔が、その小さな箱の中に無造作に放り込まれていた。

「、、、何があったのよ。どうしてこんな事に、、、」

蓋を戻し、そっと箱を像の側に下ろす。

今すぐにでも宝石を破壊して彼を解放してあげたいけれど、、、もう少しだけ。

前回の時は、全てが終わった後に色々と気になる事が出てきて失敗した。

ここでまた同じ失敗は出来ない。

彼の犠牲を無駄にしない為にも、今だけは心を殺して調べる必要があるのだから。


私を凝視しながら箱を運搬し続ける町人達を無視して、変わり果てたヴァネスを調べる。

とはいえ、変質した体はやはりというか私の聖痕が拒絶してしまい、詳しく分からなかった。

ただ、直接触れてみて分かったのが、脈動している事からも分かるように、こんな状態でもまだ生命活動は続いてる。

前に見た物もそうだったけど、ここまで変容が進み、今回に至っては顔まで剥ぎ取られている状態なのに、肉体的には生存している。

視線を上げ、その失われた顔に埋め込まれた宝石を睨む。

前回と明確な違いがあるとするなら、この宝石の大きさだろう。

片手に収まらない程の大きさのそれに手を伸ばし、そっと表面に触れてみる。

「、、、何も起きない」

前は何か違和感があったけれど、今は何も感じない。

そのまま表面をなぞり、少し力を込めたり魔力を流したり、と試したけれど変化は起こらない。

ただ、やはり魔力の流れは見えた。

この宝石を中心に、町全体を覆う程の魔力が放たれている。

ただ、それが何にどう影響しているのかが見えない。

少なくとも私には何も感じられないから、無意味に垂れ流している訳ではないのだろう。

だとすると、これは町の人達に対して作用しているのだろう。

像から目を離し、町の人々を観察する。

「彼等がこんな状態なのはこの魔力のせい?だとすると、そもそも何かしらの魔法を掛けられて、それを維持、或いは増幅している?」

近くに箱を置きに来た町人が居たから、右目の聖痕で状態を観察する。

「、、、彼等も生きてる、死体を操っている訳じゃないのね。だとすると、精神操作?いえ、今回なら記憶操作の方が正しいかもしれないわね、、、」

そこで、ふと視線を感じて後ろを振り向く。

そこに、

「、、、彼がここにいるなら、当然貴方もいるわよね」

虚ろな瞳をこちらに向けるキネレイが佇んでいた。

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― 新着の感想 ―
良い作品なのでとても面白いです!これからの物語を楽しみにしています!
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