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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第六章 ヤーラーン帝国淫蕩録
241/362

241 不穏な兆し

陽射しの眩しさで目が覚める。

ぼんやりとする頭で辺りを見回し、

「そうだ、あのまま気を失ったんだ」

幸いと言うか、私が倒れた場所は人も動物も近寄らない位置だったらしく、何事も無く目を覚ます事が出来た。

とは言え、全身ずぶ濡れな上に泥まみれ。

体も頭もまだ軽く重く感じるし、先を急ぎたいけれど休息を取る必要もある。

ともかく、まずはこの姿をどうにかしてからだけどね。


とりあえず、服を脱ぎ捨てて水の魔法で体に付いた泥なんかを洗い流す。

ただ、水気を拭き取る布は流石に無かったからこれも風の魔法で吹き飛ばしてしまう。

何だか落ち着かない感じはするけど、贅沢は言ってられないから今は我慢。

ささっと新しい服を着て汚れた服は焼いて処分。

こんな感じで身支度だけ整えて早々に出発する。

ラウの言葉が事実だとしたら、状況はかなり宜しくない。

奴の見せた謎の力も気にはなるし対策しないとだけど、今は東へ向かうのが先だ。

果たしてゼムも記憶操作されているのか、ヴァネス達は無事なのか、急いで確認しないと。


身体強化を掛けた足で島を横断していく。

ラウとの一戦で無茶したせいか、体が重く感じるけれど今は無視する。

幸いにも土地面積は広くないからあっという間に中央の島を走破し、東の島へと入る。

ただ、そこで今更ながら気付いた問題がある。

「、、、アイツらの本拠地って何処にあるのよ」

元々、私と同行していたメンバーの案内で向かう予定になっていたから、詳細を聞いていないのだ。

短い間に多くの事が起こり過ぎたせいですっかり失念していたけれど、一体どうしたものか、、、

虱潰しに町を巡った所で、そもそもが地下組織である以上見て分かる訳が無い。

知った顔の一つでもあればいいけれど、全員が揃っていない以上警戒はしているだろうし、そもそもゼム達は魔法師団の襲撃を受けているのだ。

いや、それを言うなら橋も落とされているのだ、一番最悪な展開は北側に向かった連中は全滅している可能性もある。

そうなると、より一層警戒しているだろうし、或いは更に別の場所に移動している事も有り得るだろう。

「困ったわね、、、」

考えれば考える程どうしたものかとなってしまう、、、いや、ともかく立ち止まってても仕方がない。

一度だけ見た地図を何とか思い出して、ここからもう少し北東に進んだ辺りに町があったはずだと思い至る。


小走り程度の速さで進み、予想通り町に辿り着く。

そこそこの大きさの町で、周囲は石造りの壁で囲まれている。

ただ、アチコチが崩れているから動物の群れか、或いは魔物の襲撃でもあったのかもしれない。

その様子もだけど、もう一つ気になると言えば、その崩れた壁を修復している様子が無い事だろうか。

進んでいない、ではなく、全くの手付かずな風情なのだ。

修復する石材やら道具やらも見当たらず、そもそも人が一人も見当たらないのだ。

何か違和感を感じて、ゆっくりと町に近付く。

少し荒れた街道を進み、町の外観がハッキリと見えてくる。

「、、、」

そこまで来て、頭も体も戦闘態勢に切り替える。

これだけの大きさの町で、今は昼の盛り。

にも拘らず、喧騒の一つも聞こえてこない。

町全体が静寂に包まれ、何の気配も感じられない。

これが夜なら、人も家畜も寝静まっているのだろうと納得出来るけど、この時間でこれは明らかに異常だ。

町の入り口に辿り着き、念の為に外壁に身を隠してそっと中の様子を覗き見る。

人は、、、居る。

ごく普通の住人のようだけど、何故か足音を立てずに歩いている。

いや、それ以前に、彼等の顔に生気が感じられない。

無表情で、誰も彼もが何かを詰めた箱を運んで行き交っている。

その光景に、何か既視感を覚えて何故かと思い返してみる。

そして、

(この人達、、、まるであの幻惑の町で見たのと同じね)

私が嵌められたあの町での事を思い出す。

宿から飛び出した私を囲んできた町人達の様子と、今目の前に居る人々の姿が余りにも似ている。

であるなら、この元凶もまた絞り込める事になる、、、但し、ここで何が起きているのかは分からないけれど。

私を狙った物なのか、或いはまたしても幻惑なのか。

試しに右目の聖痕で見てみるけど、町人達の異常は見えるけど町そのものは至って普通。

これが本当に実在するのか、或いは私の力が発揮されない事象なのか判断が付かないけれど、、、いや、ここまで来たら悩む必要は無いだろう。


念の為に体を魔力で覆い、不意打ちに備えておく。

他にも、右手に意識を向けて黒炎を呼び出せるようにもしておく。

それだけ準備をして、町の中に足を踏み入れる。

途端、あれだけ無感情に動いていた町人が一斉に動きを止め、首だけをこちらへと向けてくる。

余りにも不気味な光景だけど、それ以上の動きは無い。

大量の視線が突き刺さるのは物凄く落ち着かないけれど、ゆっくりと町の中を進んでいく。

それに合わせて彼等の首も追従しているのだけど、、、そこかしこから嫌な音が聞こえてくる。

それを無視して、更に奥へと進んでいく。


そして、、、町の広場に理解を超える、いや、理解を拒む光景が広がっていた。

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