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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第六章 ヤーラーン帝国淫蕩録
228/364

228 揺れる覚悟

夜の風に冷えた体が朝陽に照らされて暖まっていく。

「あれ、、、寝てた、、、?」

ぼんやりとする頭で昨夜の事を思い返す。

確か、泉に飛び込んで汚れを落とした後、服を着替えて、、、そのまま眠ってしまったんだ。

改めて自分の体を確認するけど、一先ず大量の返り血は落とせている。

ただ、近くに脱ぎ散らかしたままの服は、流石に酷い有様だ。

仕方なく、それは処分しておくとして、問題は。

「、、、内側の方は、どうにもならない、か」

要塞でラウの目の前に立った時の事を思い出す。

屈辱的ではあるけど、あれへの対策を考えないとこの先も同じ事の繰り返しだ。


そもそも、あの時も私は対策を講じていた。

体がどうにもならないなら、外部からの刺激を無理矢理断てば良いはず、そう考えて周囲に障壁を展開させていた。

だけど、実際にはラウの姿を見ただけで駄目だった。

勝手に障壁は解かれ、体は言う事を効かなくなり、自然に言葉が出てきた。

怒りと恥辱を抑え付けて、冷静にあの時を思い出す。

まず、最も効果的だったのは、ラウが裸だった事だろう。

特に、男の象徴が雄々しくそそり立っていたのが、私の理性を破壊した要因だ。

加えて、彼の体臭や声、その全ても相俟ってより私に働き掛けたのだろう。

現に、こうしてあの光景を思い出しても何も異変を感じないし、劣情を催す事も無い。

なら、目と耳、鼻を塞いでしまえば良い、、、訳が無い。

奴に触れられる事もまた、今の私には致命的だ。

魔法による補助で警戒する事も出来るはずだけど、それに頼った結果がアレだ。

更に困った事に、聖痕も今は当てに出来ない。

遠距離からの暗殺が現状の最善策ではあるけど、奴も聖痕を持っている以上、成功率はかなり低い。

「やっぱり、私自身をどうにかするのが一番なんだけど、、、」

試しに治療をしてみるけど、やはりラウと皇帝から与えられた物だけは消せない。

何なら、昨日鞭で打たれた部分は綺麗に治せているのに、だ。

そっと胸に触れて、己の内に問い掛けてみるけど、当然何も返っては来ない。

大きく溜め息を吐き出し、諦めて手を考える。


、、、実を言うと、一つ、確実に成功する作戦がある。

ただ、、、それをするには、相手が必要になる。

要は、私がラウの妻になる条件から外れてしまえば良い訳で、それを可能とする方法がある、、、私が純潔を失えばいい。

勿論、私とて色々あるけれど、そもそも一人の女だ。

出来る事なら、心から愛する人と結ばれたいし、そういう行為も子を成す為に捧げたい。

でも、既にそんなささやかな望みを抱き続けられる状況では無くなった。

流石に相手は選びたいけど、行きずりの誰かに抱かれるのも、、、想像するだけでも吐き気がする。

一人、まだ許してもいい奴はいるけど、、、いや、それも色々と面倒になる。

ふと、視界の端、地面に転がる木の枝が映り込む。

「、、、いくら何でもそれは、ね」

一瞬、それが頭を過るけど、すぐに打ち消す。

ともあれ、最終手段として考えておく必要はあるから、あとは私が覚悟を決めるだけだ。

今はとにかく、次にラウと向かい合う時に備えて対策を考えるのが先決で、、、

「誰!?」

気配を感じて立ち上がり、周囲を見回す。

だけど、人影は無い。

背筋に走る緊張感は確かに警戒を促しているのに、肝心の相手が見当たらない。

ゆっくりと視線を巡らせ、意識を研ぎ澄ませ、、、




「跪け」




突然、耳元で声が聞こえたかと思うと、考えるよりも先に体が反応する。

力が抜け、ストンと地面に膝を突く。

それでも、何とか倒れるのは堪え、首を回して背後を見ると、、、

「こ、うて、い、、、?」

そこに、居るはずの無い人物が、、、皇帝ヘル・ゼス・オ・ヤーラーンが立っていた。

冷酷な眼で私を見下ろし、感情の無い声で、私に告げる。

「果てろ」

それだけだった。

たったそれだけで、私は絶頂を迎えた。

快感も、苦痛も無い。

ただ、条件反射の様に体が反応して、私の意志など入り込む余地が無かった。

「なんで、、、」

「まだ思考出来るか。ならば」

皇帝の顔が近付き、耳元で囁く。

「壊れろ」

「ぁっ、、、ぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああ!!!」

全身が痺れ、頭が、体が、何もかもが狂おしい程の快楽で破壊されていく。

絶頂に絶頂が重なり、そこに更なる絶頂が押し寄せる。

頭の中で何かが焼き切れ、目や耳、鼻から血が流れだす。

下半身は体液や尿でぐちゃぐちゃになり、カクカクと痙攣し続ける。

両手で頭を抱え、必死に耐えるけど、それも無駄になり、そして、、、プツンと、意識が途切れた。






「えっ、、、」

朝陽に照らされて目を覚ます。

夢を見た気がするけど、何も覚えていない。

「、、、気のせい?」

辺りを見回してみるけど、何も変化は無い。

昨日着ていた服は処分したし、ラウへの対策もちゃんと考えた。

この後は、とりあえずゼムと合流して、ヴァネス達から話を聞く、、、うん、問題ない。

立ち上がり、体の調子を確かめるけどこちらも異常無し。

最後に大きく体を伸ばし、身体強化を掛けて駆け出す。

気にする事は何も無い。

なら、まずは顔を見ておくべき奴らの所に行くとしよう。






・・・私が眠っていた場所のすぐ近く、その地面に、私の物ではない足跡が残っている事に気付く事無く、、、

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