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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価540&120000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第六章 ヤーラーン帝国淫蕩録

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224 己との戦い

ゼムに魔力を流してもらったのは失敗だったかもしれない。

けれど、ああしないと確かめようが無かったのも事実だし、いきなり魔導具で試して失敗した、なんてなればそれこそどうなっていたか分からない。

それに、今は後悔している時ではない。

馬車の外からは魔法が着弾する音が止む事無く続いている。

ゼムは馬車の屋根に乗り、追手に向けて魔法を放っている。

私も扉を開け、身を乗り出して応戦する。

幸い、聖痕が作用しないのはラウや皇帝にされた事だけで、身体強化やそれ以外の魔法は問題無く使える。

「クソ、魔法師団が来てやがる!しかもこの練度、恐らく第一だ!」

「どれくらい強いの!?」

「街一つを数時間で更地に出来る程度には!厄介な連中だよ!」

少しづつ白み始める空に照らされて、そいつらの姿が浮かび上がる。

速さを重視したからだろう、軽装の馬に跨るそいつらは、一言で言えば異様だった。

ローブの様な物を被っているのだけど、私が被せられていた物とは違って、全身を覆い隠している。

そう、顔すら見えないのだ。

目のある部分が他と少し違う様に見えるけど、素肌が見える部分が全く無い。

手綱を握る手も、わざわざローブに袖が付けられていて、それで覆われている有様だ。

「不気味な連中!始末して良いのね!?」

「構わん!どうせ親父の言いなりだ!」

なら、遠慮は要らない。

右手に魔力を集中させ、炎を作り出すと、それを空に向けて放ち、少し間を置いて弾けさせる。

降り注ぐ炎に巻かれて次々と追手達が火だるまになる、、、のだけど、止まらない。

炎はローブを焼き、馬にまで燃え移っているのに、人も馬もまるで気にする素振りを見せずに追跡を続ける。

そして、仕返しとばかりに連中が一斉に杖を構える。

すぐに障壁を張って攻撃に備えるけど、奴らは魔力を溜めたかと思うと、攻撃はせず、そのまま霧散していく。

「なんだぁ?奴ら、何をした!?」

「分からない!でも、、、ぁんっ!?」

ゼムと話している最中に、突然腰が抜ける。

何とか馬車の中に体を戻せたけど、そのまま椅子に凭れ掛かってしまう。

「何かされた、、、いえ、これ、はっ、、、」

自身の体に起きた事に驚き、思考が止まりかける。


そう、理由はともあれ、私はまたしても発情している。

ゼムの魔力を受け取った時とはまるで違う、、、これは、皇帝の言葉を受けた時の感覚だ。

だけど、当然ここに奴は居ない。

なら、考えられる原因は一つ。

「アイツら、私に掛けられた皇帝の魔法に魔力を送り込んだのね!でも、そんな、こ、と、、、あぁっ、、、こ、れ、、、すご、っ!」

あの時の感覚が猛烈な勢いで体を駆け巡り、私を昂らせていく。

理性が吹き飛び、服の中に手を突っ込んで自身を慰め始めてしまう。

すぐ近くに人が居るのに、右手で胸を揉みしだき、左手は股を何度もなぞり、水音を響かせる。

我慢出来ず、椅子から滑り落ちて蹲る。

腰を突き出し、必死に振り乱して己の指が心地良い所に当たる様にしている姿は、さながら発情期の犬か何かだろうか。

あまりにも浅ましく淫らな姿だけど、今の私にそんな事を考える余裕も気にする暇も無い。

瞬く間に絶頂を迎え、それでもなお手が止まらない。

まるで誰かに操られているかの様に絶頂を重ね、息も絶え絶えになった頃にようやく昂りが治っていく。


「おい、どうした!大丈夫か!?」

「揺れに足を取られただけよ!奴らは!?」

「何とか引き離せた!すぐに隠れ家に行くぞ!」

平静を装ってゼムと言葉を交わす。

驚きというか、私が一人で盛っていたのはほんの数分だった。

お陰で行為を見られずに済んだし、彼はそのまま御者席に座ってくれたので、車内に漂う私の臭いにも気付かれずに済んだ。

窓を開けて、空気を入れ替えながらあの現象について考える。


あの数分間、私は完全に理性を失っていた。

無我夢中で己を慰め、果ての無い快楽に身を委ねていた。

だけど、それがある瞬間、唐突に消えた。

私が満足した、なんて簡単な話では無い。

そもそも、私が狂う切っ掛けとなったのは、あの追撃者の魔力によるものだ。

なら、奴らが離れた事で私もまた、落ち着いたと考えるのが妥当だろう。

試しに、聖痕で体を清めてみたけどそれは問題無く、だけど、芯に潜む物に向けた途端、力が霧散した。

外からの刺激にも気を付けないといけないけど、内側の方は本当にどうしようもない。

そして、この不可思議な現象の原因に、心当たりがある。

「、、、グレイス・ユールーン。そうまでして私に復讐するつもりなの」

私の魂に潜む者。

ウルギスでの出来事といい、今回の聖痕の機能不全といい、どう考えても彼女の魂が干渉しているに違いない。

なら、これは他ならぬ私自身との戦いだ。

理屈など分からないけれど、彼女が未だ私の内に残り続け、今度はこうして辱めようとしている。

そっと胸の聖痕に触れ、その奥に語り掛ける。

「アンタがどう足掻こうと、私は負けない。すぐにその魂を完全に喰らい尽くしてやるわ」

朝日が馬車に差し込む。

それを受けて、思いを新たにする。

ようやく、私は明るい世界に戻って来れたのだから、そう簡単に手放したりはしない。

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