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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第六章 ヤーラーン帝国淫蕩録
222/362

222 呪縛

目が覚めると同時に飛び起き、体に触れる。

既視感のある状況だけど、明らかにそれとは違う出来事に思考が追い付かない。

皇帝による、ラウの妻とする事を認める発言が耳に届いた瞬間、意識が消え失せたのだ。

それも、理解出来ない程の幸福感や快感が全身を駆け巡り、脳を焼き切ったかの様に。

記憶には無いけど、体は確かにあの時快楽の頂点に達していた。

今は、まるで何事もなかったかの様に落ち着いているけど、何とも言えない違和感が体に残っている、、、特に、下腹部辺り。

見る事は叶わないから手を伸ばしてみるけど、触れても何も無いし、それこそ純潔を奪われた痕跡も無さそうではある。

(何かしらの魔法を使われた?でも、そんな感じはしなかったし、あったとしても人の感覚を自在にあやつるなんて不可能だ、、、)

自分の考えを否定したい所だけど、最早結論は一つしかない。

(、、、聖痕。ラウだけでなく、皇帝までも持っている)

ただの憶測ではあるけど、楽観的になど考えてはいられない。

聖痕による魔力を込めた言葉、全ての守りを失った私にそれが放たれたという事は、恐らく最も最悪な状況に陥った事になる。


とりあえず、現状を把握する事は出来た。

何一つ好転していない、どころかジワジワと追い詰められているけど、まだ、、、


「おや、もう起きているとは、流石です」


その声が耳に届いた瞬間、異変は起きた。

憎まれ口を叩いてやろうと開いた口から言葉が出ず、代わりに熱い吐息が漏れ出す。

それに呼応する様に全身が火照り、頭に靄が掛かり思考が蕩けてゆく。

「全く、父には困ったものだ。しかし、確かに残された時間も余り多くは無い。如何ですか、ご気分は?」

ラウの近付いてくる足音が聞こえる。

それと共に、彼の臭いを感じる。

本来なら感じ取れない筈の臭い、男の臭い、、、もっと、、、

「っく、、、あああっ!」

思考が止まった瞬間、軽い絶頂を迎えた。

そのままベッドから転がり落ち、体を抱き締めて蹲る。

「な、んで、、、」

制御の効かない己の体を必死に抑えながら、ラウのいる方へと顔を上げると、それを待っていたかの様に、顎を掴まれる。

体が動かなくなり、見えない筈の彼の顔が脳裏に浮かび上がる。

瞬く間に消え去りそうな理性を保つ為に、必死で考え続ける。

「せい、、、こ、ん、、、」

「ああ、素晴らしい。その通りです。我が父は聖痕を持っています。その力、今まさに味わっているでしょう?」

ラウの言葉が響く度、それが全身を駆け巡り全てを捧げたくなる衝動に駆られる。

目の前に居る彼から漂う男の臭いが鼻孔を突き抜け、体の隅々まで染み渡るのを感じてしまい、それがより一層私を壊していく。

我慢できず、体が小刻みに震えだす。

その体を、彼の手が愛おし気に優しく触れる。

「ぃっ、だめ、ぇ、、、ゃ、ぁぁぁあああ、、、」

これまでの愛撫とは違うその手付きに、全身が悦びに打ち震え、またしても絶頂に果てる。

それでも体はさらに昂り、その先を求め始めて淫らに腰を揺らす。

「ああ、美しい、、、今すぐ全てを喰らい尽くしてしまいたい!」

その言葉に、体の奥底から歓喜が湧き上がる。

体を抱き締める手がゆっくりと離れ、ラウを求めて伸びようとして、、、

「しかし、残念ながら暫くはお預けです。次期皇帝として、皇太子公務に務めねばなりません。その間、良い子にしているのですよ?」

最後に優しく頭を撫でられ、喜びの飛沫を撒き散らし、何もかもが満たされ、子供の様に眠りに落ちていった。


満ち足りた幸福感に包まれながら目を覚ます。

かつて、これ程までに清々しい目覚めなんてあっただろうか。

視界が塞がれている分、脳裏に愛しい人の顔を思い浮かべ、、、

「っ!違う!」

そのふざけた妄想を振り払う。

私は今何を考えていた!?

あのクソ野郎を本気で!?

ベッドから飛び降り、だけど手足の枷に引っ掛かって無様に床を転がる。

その一部が湿っているのは、私が垂れ流した物だろう。

それがより一層怒りを湧き上がらせる。

だけど、幾ら暴れようと叫ぼうと、静まり返った部屋に虚しく響くだけ。

だけど、お陰でようやく頭がスッキリした。

「はぁはぁ、、、もう悩んでる暇は無いわね」

これ以上ここに留まるのは危険だ。

ラウが何時戻るかは分からないけれど、次に奴と向かい合ったら、私は完全に堕ちる。

身も心もあの男に捧げ、この身の全てを奴の為に振るう事になるだろう。

それだけは有り得ない。

例えこの恥ずかしい姿を晒す事になっても、外へ脱出を、、、

「誰!?」

背後に気配を感じ、見えない相手に殴りかかる。

その手を軽く受け止められ、

「おいおい、まだ正気を保ってるか。流石と言うか、間に合って良かったというか」

何処か軽薄さを感じさせる声が私の動きを止める。

その声に、私は聞き覚えがあったからだ。

「アンタ、双血の楔の?」

「おう、覚えててくれたか。遅くなっちまったが、助けに来たぜ」

頭から布を被せられ、それが身を隠す為に着せられていたローブだど気付く。

「まずは城から出る。少し我慢しろよ」

そう言われるや否や、体を持ち上げられる。


こうして、ようやく私は絶望的な状況から逃げ出す事が出来た、、、それが仮初の物である事も気付かないまま。


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