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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第六章 ヤーラーン帝国淫蕩録
219/364

219 二つの真実

あまりにも長く感じた船旅がようやく終わった。

ラウから告げられたエオローの島主達の捕縛についても気にはなるけど、現状ではどうしようもない。

ただ、ヴァネスとフェイネル、キネレイの無事を信じるしかない。

そして私自身も、船の中で散々好き放題されてはいたけど、まだ何とか無事だ。

ラウはエオローで宣言した通り、未だに私の純潔には手を出してはいない。

但し、その分とでも言う様に連日連夜、媚薬を焚き、私を快楽漬けにし続けている。

それが止んだのは昨日で、つまりはその時にエオローの状況を語られた事になるワケでもある。

船旅は予定通り十日で、即ち、私は九日に渡り、、、いや、今は考えないでおこう。


今は再びローブを被せられ、首輪に繋がれた鎖を引かれてラウと共に馬車へと乗り込んだ所だ。

驚きというか呆れというか、船の桟橋に馬車が横付けされていたのはともかく、その桟橋には天幕が張られていて、完全に視界が遮断されていた事だ。

視界が塞がれているからか、感覚はやけに鋭く、そのお陰か桟橋の上を歩いた感触はあったのにまるで海風を感じなかったのだ。

そっと手を伸ばしてみると、予想通り幕が張られていて、その動きに気付いたラウがそっと近付いて耳打ちしてきた。

「言ったでしょう?貴女の姿を民に見せるのは当分先です。私との婚姻が成り、初夜を終えたらです」

最後に耳を舐めて奴は離れていき、そうして馬車へと乗り込んだのだった。

そのまま何処をどう移動しているかも分からないまま私も馬車に揺られる。

時折、人々の声が聞こえるから窓を開けて顔でも見せているのだろう。

それも終わり、車内が静寂に包まれる。

「ふぅ、いやはや。面倒な事ですよ、外面を維持するは」

唐突に、私の肩を抱きながら、ラウは語り始めた。

「ヤーラーンの真実を少しお教えしましょう」


ヤーラーン帝国の歴史は古い、、、噓に塗れた、二つの顔を持つ国としての始まりもその時だった。

帝政でありながら民に寄り添い、善政を敷いてきた、、、それ自体はある意味では事実である。

但し、そこにはあまりにも悍ましい裏の面が隠されていた。

分かりやすく言うなら、激烈な階級社会。

それも男尊女卑を前提とした、女にとっては悪夢の様な国、それがヤーラーンの秘められた側面だという。

特に、貴族達はそれが顕著で、国に係わる者となるとより一層。

そして皇族ともなれば、もはや女を人と見做していない、、、それを語る誰かさんが良い例だろう。

繰り返すけど、それはあくまで裏の顔であり、表向き、この国は平穏そのものだ。

エオローには劣るものの、観光客もそれなりに訪れるし、各国との交易や交流も盛んだ。

街も賑わい、そこに性別や年齢、立場による差など存在しない、、、いや、感じさせない。


各地の街、そして帝都。

一歩奥に足を踏み入れると、この国の闇の一端に触れられる。

国民だけが立ち入りを許されているそこは、女が物として扱われる店が並んでいる。

看板も無く、そもそも建物もごく普通の見た目で、間違って観光客が迷い込んでも一目ではそうと分からないようにされているそこで、知る事が出来る。

自ら身を堕とす者、生きる為望まずに身を捧げる者、拐わかされ或いは売られ身も心も穢される者。

差はあれど、女が女として扱われない場所がそこら中にあるなんて、とても信じられないだろう。

そして、その全てを束ねているのが皇族。

市井で民と語らう皇帝、即ちラウの父親も、その本性は、、、


得意げに語るラウの声に、私は怒りを覚え、だけどどうする事も出来ない。

馬車という密室の中、いつもの私ならここで魔法の一つでも叩き込んで黙らせる事もしてただろうけど、今は哀れな玩具だ。

そんな私の心を読んでいるのだろう、肩を抱くラウの手が離れ、また向かい側に座り直して私の顔を覗き込む。

「まぁ、簡単ですがこれがこの国の本性。不思議でしょう?何故誰も声を上げないのか」

ローブの頭の部分だけを下ろされ、ラウの手が頬に触れる。

「答えは簡単。この国に産まれた男は須らく女を物と扱う様に教わるから。そして女は、表向きは幸福な民を演じ、しかして男に従順であるようにと躾けられる、、、徹底的にね」

ローブの裾を捲り上げ、僅かに晒された足を撫でられる。

その手が膝から太腿、そして股へと這い上がり、指でなぞられる。

「っ、、、」

歯を食いしばって声が漏れるのを堪える。

その様を愉快そうに見つめながら、ラウが続ける。

「この国は腐っている。そして私にもそんな血が流れている、、、これでも、かつては改革を志したんですよ?しかし、それが徒労であるとすぐに理解した、、、してしまった。その頃ですよ、私に聖痕が宿っていると判明したのは」

それ以来、この男は力の全てを女を理解する為に使ったという。

恐らく、心が折れた時に、運悪く聖痕の試練にも負けた、、、こいつの二面性にも納得だ。

「つまり、逃げ出したのね、、、臆病者」

言葉を発した直後、本当に一秒にも満たないであろう刹那に、ラウの気配が変わる。

両手で首を絞められ、あっという間に息が出来なくなり意識が遠退く。

そして、意識の糸が切れる寸前、奴の感情の無い言葉が耳に届いた。

「そろそろ、躾も必要ですね」

知る由もない事ではあるけど、その時の、私を見下ろすラウの目は、何処まで昏かった。

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