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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第五章 エオロー連合国漫遊記
212/364

212 黒幕の下へ

キネレイの館は島の東の町にある。

まずは一度そこに行き、対策を練る事になった。

もしもこれが西側だったりしたら、完全に打つ手なしになっていたから一安心だ。

とはいえ、それで何かが解決する訳でも無い。

寧ろ、そこからどうするかが問題な訳で。

「とにかく、島主に断りも無いなんて有り得ねぇ。そこを突いて封鎖を解除させてみる」

執務机に座るや否や、猛烈な勢いで文を書き始めるキネレイ。

表情こそ怒りを滲ませてはいるけど、意外な事に文字や文章は丁寧で少し感心してしまった。

私も私でのんびりなどする暇は無いからすぐにそこから離れ、これまで得てきた情報を纏めた紙を見返す。

ただ、やはり肝心な部分は見えない。

現時点で、リアメノが関わっていると推測した場合に繋がるとは思えるけれど、理由がまるで分からない。

何せ、彼女はほぼ私と共に居た。

確かに、途中で別れた時はあったから、そこで何かしらをしていたとすれば分からなくも無い。

けれど、フェイネルの誘拐やドランドの死にまで関わっているのか、、、もしそうだとしたら、ヴァネス達の受ける衝撃は計り知れない。

「よし、これを届けてくれ」

キネレイの声で顔を上げる。

彼が書き上げた文を受け取った使用人が大急ぎで出て行き、足音が遠ざかっていく。

「何処に届けるの?まさか帝国までなんて事は無いんでしょ?」

「当然だ、ここには帝国の関係施設がある。俺の島はエオローの中で随一の避暑地だ、色んな国のお偉いさんも来る位のな。特にヤーラーンは皇帝やその血縁者も来るから、そういうのはこっちに居る帝国の連中が対応するんだ。今回もそいつらが絡んでるに違いないから、島主として苦情を入れてやるんだ」

成程、それならすぐに返事は来るだろう。

ただ、私の勘が正しければ恐らく取り付く島もないだろうけれど。

それはキネレイとしても同じなのだろう、既に彼は次の仕事に取り掛かっている。

「それは?」

「アンタも勘付いてるだろうけど、あの手紙は効果が無いだろう。ただ、それならそれで出来る事もある」

顔を上げ、新たに認めていた文を見せてくる。

そこに書かれていたのは、一言で言えば島主としての権限を用いての強制介入だ。

「ヤーラーンが俺の文を受け入れなければ、それを口実に強制的に封鎖を突破する。こっちは島主の一人が殺されてるんだ、協力しないって事は怪しまれても文句は言えないだろ?」

ニヤリと笑みを浮かべるキネレイに、私は思わず感心してしまった。

最初の印象だと何だか軽い男だなと思っていたけど、こうして話を聞かされるとしっかりと考えているし、強かでもあると理解できる。

勿論、相手が相手だから思い通りにはならないだろう。

だけど、

「もしも、それでも駄目なら最後の手段だ。情けないが、アンタに頼らせてもらう事になる」

この通り。

それが何を意味するのかも、勿論理解しているはず。

それでも、既に悠長な事を言ってられる状況では無くなってしまった。

それを打破する為にも、今はリアメノを追うのが最短と彼も分かっている。

だからこそ、いざとなれば彼は自分を囮にして私を行かせるのだろう。

フェイネルを助け出したからか、それだけ私を信頼しているのだろう。

なら、それには応えてあげないと。

「分かったわ。一応聞くけど、その最後の手段になった場合、最悪貴方は帝国に囚われるわよ?」

「上手くいくか分からんが、一応手はある。だから、アンタは気にせずリアメノを追ってくれ」

なら、これ以上は彼の覚悟に水を差す。

彼に頷いて返事をし、それを受け取った彼が足早に部屋を出ていく。

帝国からの返事がいつ来るか分からないから、すぐに動ける様に備えるのだろう。

私は特にする準備は無いけれど、荒事になる可能性もあるからそのつもりで気を引き締める。


その後、すぐに手紙を届けに行った使用人が戻ってきた。

案の定、門前払いを受けた、どころか目の前で文を破かれたという。

それを聞いたキネレイがすぐに私の元にやって来て、怒りを隠す事無く声を掛けてきた。

「リターニア、行こう。もう我慢出来ねえ!」

「一応、フェイネルには連絡を入れたわ。いざとなれば、彼女と一緒にヴァネスの所に逃げなさい」

「うっ、アイツの事まで気にしてくれてたか。ああ、頼り切りになっちまうが、よろしく頼む」

最後の確認を済ませ、馬車に乗り込む。

驚いた事に、御者はキネレイがやるそうだ。

「流石に島民を巻き込めねぇだろ。それに、これなら目眩しで暴れられるからな」

もはや、彼も穏やかに進むとは考えてないのだろう。

チラリと見えたけど、服の下に何かを着込んでいたから、多少傷を負う事も覚悟しているのだろう。

「なら、少しだけ身体強化を掛けるわ。私と距離が離れたら自然と消えるから、さっさと逃げるのよ」

「何から何までスマン。必ずリアメノに追いついて、フェイネルを拐った奴を捕まえてくれ」

最後に気合いを入れた彼が馬車を走らせる。

ここから一番近い封鎖地点まで十分程。

何がどうなろうと、そこから先は荒れる事になる。

それが、何処まで波及するかは誰にも分からないけれど。

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