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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第五章 エオロー連合国漫遊記
210/364

210 混沌渦巻く

驚き、というよりも釈然としない、そんな表情で小さな呟きを漏らしたのはリアメノだった。

ただ、それは隣に座っている私にだけ届いたようで、他の三人はそれぞれ思考に耽っていて気付かなかったようだ。

しかも、当の本人も自身の呟きに気付いていないようで、ジッと机を見つめたまま。

その横顔に、何処か違和感を感じた私は気付かれない様に彼女を観察する。

これまでのあどけなさを感じさせる彼女には似つかわしくない真剣な顔。

普通なら今の状況に流石の彼女も普段通りには居られないと思うのだろうけど、何故かそうじゃないと私の直感は告げている。

ただ、それを問い質す前に、

「、、、少し席を外すね」

早口にそう告げ、リアメノは食堂を出て行ってしまった。


リアメノが動いたのをきっかけに、他の面々も顔を上げる。

気になる事はたくさんあるけど、どの道一つずつ追うしかない。

なら、まずすべきはドランドの死の真相を追う事か。

「、、、犯人もだけど、彼が何故殺されたのか、それも知りたいわね」

ヴァネス達の顔を見回し、その視線が集まるのを確認して私は続ける。

「恐らくだけど、彼が殺された事と、私やフェイネルが狙われたのは繋がってる」

「、、、根拠はあるのか?」

ヴァネスが腕を組んで私とフェイネルを見比べる。

確かに、私と彼女に共通点は無い。

年齢も離れているし、顔付きや体付きが似ている訳でも無い。

つまりそれは、私を狙う理由とは根本的に別な何かがあってフェイネルは狙われた事になる。

「簡単な話よ。私はともかくとして、フェイネルが狙われる理由が分からない。島主としてであれば他の四人でも良かった訳だし、もしも私が黒幕として島主を狙うならどう考えてもリアメノが一番狙いやすい」

「じゃあ私が狙われたのは、、、」

フェイネルが顔を青くしながら、自分の体を抱きしめる。

その肩をそっとキネレイが支え、私へと視線を戻す。

「最初は私も貴女も貴族の慰み者として狙われたと思ってた。でも、ドランドが狙われた上に殺されたとなれば話は変わる。そうなると、今度は私とドランドには共通点が出てくるのよ」

「、、、まさか、あの壁か!?」

それに気付いたヴァネスが身を乗り出してくる。

「ええ、私も彼も壁の調査をしている。私はまだ視察を隠れ蓑にしてるけど、彼は島主として表立って動いてた」

「待って、私は壁については何もしてないわ。幾らか手を貸したりはしたけど、大した事じゃないし」

フェイネルが早口に話す。

何処か怯えた様に見えるのは、自身も殺される可能性があると思ったからだろう。

可能性としては確かに無くは無い。

でも、それならドランドの様に初めから殺してしまえばいいだけで、実際はそうじゃなかった。

であるなら、

「逆よ。そもそも、無理に命を奪う必要は無かった。でも、ドランドは何かに気付いてしまった」

「口封じか。確かに、ほぼ同時に館も賊が入っているし、その何かを回収する為だとしたら、、、」

ヴァネスの言う通り、館に侵入した賊とやらはドランドの調査資料を持って行ったのだろう。

「フェイネルには悪いけど、恐らく貴女が攫われたのは私達の目をこっちに向ける為。多分、本当はドランドの件は私達には伝わらないはずだったのかも」

「だが、ドランドは頭が良い。恐らく、こうなる事も見越して手を打っていたのかもしれん、、、クソッ!」

ヴァネスが悔しがるのも頷ける。

ドランドは恐らく、例の壁を追う事がどういう結末になるかを予期していたのだろう。

結果として黒幕を出し抜けたけど、その代償は余りにも大きい。

私としても、彼を失ったのはかなりの痛手だ。

「なら、リターニアさんが狙われたのは、、、」

恐る恐る聞いてきたフェイネルが、私を見つめる。

彼女としては、自分達の事に巻き込んでしまったと感じているのだろうけど、、、


事ここに至って、全てが偶然だなんて間抜けた事は考えてはいない。

ただ、誰がどこまで関わっているのか、悔しい事にそれがまるで見えてこない。

もしも初めから、なんて事になれば、それは即ち、、、

「、、、私が狙われたのは壁の調査を妨害する為、だけじゃない。憶測でしかないけど、私を狙った貴族とやらの後ろに本当の黒幕が居るはず。そしてそいつの目的は、、、聖痕の聖女」

認めたくは無いけれど、双血の楔のローブ男からの話も信じるなら、結局全ては私だ。

「何か根本的な計画があって、それを隠す為に幾つもの策を同時に動かしている。私やフェイネル、ドランドが狙われたのはそう言う事で、これらの裏には何かがある、或いは誰かが居る」

それも、相当前から私について調べ、足取りを追い続けている。

そんな事が出来る奴は限られる、、、必ずそいつは聖痕を持っている。

答えは出ているも同然なのに、決め手が無い。

そして、そんな私を嘲笑うかのように事態は更に動いていく。

「お話し中失礼します。リアメノ様は居られますか?」

使用人が食堂の中を見回しながら聞いてくる。

「あの子ならさっき出て行ったけど」

「そうなんですか?先程から数人で探しているのですが、、、」

「おい、まさか、、、」

ヴァネスが立ち上がり、使用人と共に廊下を駆けていく。


そして、館の何処にもリアメノが居ないと分かるのに、そう時間は掛らなかった。

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