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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第五章 エオロー連合国漫遊記
208/362

208 裏に潜む者

実を言うと、フェイネルが眠っているのは有難かったりする。

足元で藻掻くボス男を見下ろしながらそう思う。

「じゃ、手短に済ませるわよ」

喉を踏みつける足の力を少しだけ緩め、話せるようにしてやる。

呼吸が出来るようになって咳き込む男が涙目になりながら、それでも歯を剥いて私を睨んでくる。

「テメェ、ただで済むとっ」

「はいお仕置き」

余計な事を言おうとする男の左足に氷の刃を放ち、床に縫い付ける。

「ガアアア!!!」

「次は右足、その次は左腕。間違っても殺しはしないから、これ以上苦しみたくないなら聞かれた事だけ答えなさい」

必死に頷く男を睨み付け、そう告げる。

うん、殺しはしない、ちゃんと犯人として突き出さないといけないからね、、、手足が残ってるかは知らないけど。

「誰からの依頼?」

「や、ヤーラーンの貴族だかだよ!召使が前金をたんまりと積んで!」

やはり私の時と同じか。

ただ、残念ながら同一人物かは知る由も無い。

「理由は?私が目的?」

「そうだ!ただ、何でかは知らねぇけどそこの女も連れてこいって!だから()()()の手引きで!」

「フェイネルも?」

男の口から予想外の言葉が出てきて、一瞬思考が止まる。

私が狙いなのはともかく、何故フェイネルも狙ったのか。

この事件は偶然ではなく、意図しての物だとすると余計に謎が深まってしまう。

「彼女を狙う理由は?」

「知るかよ!俺達は金を貰ったから仕事をしただけだ!」

流石にそこまでは聞かされてないか、あわよくばと思ったけど、そうは都合良くいかないか。

それは一先ず置いておくとして、もう一つ気になる事を言ってた。

「なら、アイツって誰?フェイネルの誘拐を手引きした奴が居るのね?」

ここまで素直に話していた男が、この質問には押し黙る。

それはつまり、今目の前に居る私よりも恐れているという事だ。

そして、その口ぶりからしてソイツは依頼人である貴族とは関係無い者なのだろう。

少なくとも双血の楔では無いだろうから、ここに来て謎の第三者が関わってきた事になる。

しかも、それでいてこの誘拐事件には関わっているという事でもあるからややこしい事この上ない。

とは言え、だからと言ってコイツが何も言わないのを許す気も無い。

「はぁ、右足もいっとく?さっきは串刺しだから、次は膝辺りから真っ二つ?」

「まっ、待ってくれ!アイツの事だけは勘弁してくれ!それこそ殺されちまう!」

私相手にも啖呵を切っていた男が、どうにも本気で怯えている。

こいつ等はエオローのチンピラのはずだから、ヤーラーンの貴族に恐れをなすとは思えない。

なら、謎の人物はそれ以上にこいつ等と距離が近く、かつ恐れられる存在だという事になる。

いや、そもそもとして、私にすら吠える気概のある奴が恐れる?

「ならこれ位は答えなさい。ソイツはエオローの人間?」

「あ、ああ、、、アンタも知ってるはずだぜ、、、これ以上は勘弁してくれ」

「私が知ってる、、、?どういう、、、っ!?」

その先を問い質そうとした瞬間、背筋に寒気が走る。

咄嗟にフェイネルに覆い被さり、障壁を展開する。

その直後、辺りが閃光に包まれ、同時に強烈な爆風が吹き荒んだ。


粉々に吹き飛んだ小屋の破片を風で吹き飛ばし、辺りを見回す。

私とフェイネルの居る場所は障壁のお陰で守られたけど、それ以外は綺麗さっぱり、小屋どころか誘拐犯共も跡形も無く消え去ってしまった。

「、、、ただの魔法じゃないわね。魔導具?魔力の高まりを感じなかった」

抉れた地面や周りを観察しながら、爆発が起きる直前の事を思い返す。

私がそれを察知出来たのは魔法が放たれた瞬間だ。

出来ればボス男も確保したかったけど、間に合わないと諦めた。

そう、私ですら気付くのが遅れたのだ、恐らくは魔導具にあらかじめ魔力を込めておいて、即座に放てる様にしていたのだろう。

それでも、これだけの威力を出せる魔導具などそう簡単には用意出来ないはず。

なら、これは私を狙った物では無く、犯人共を消すための工作だろう。

あわよくばで私を巻き込んだのか、そこまでは分からないけど、とにかく。

「やってくれるわね。いい加減、我慢の限界よ」

既に爆破を行った者は居なくなってるだろうけど、それでも私は告げる。

「何処の誰だかは知らないけど、私を敵に回した事を後悔させてやる!」


フェイネルを背負って森を抜ける。

町へと出ると、流石にあの爆発音が届いていたのか住人達が何事かと集まっている。

その中にはキネレイも居て、

「あ!アンタ!よくも俺をって、、、フェイネル!?」

私への恨み言もそこそこに、背中で寝ているフェイネルに気付いて大慌てで駆け寄ってくる。

「フェイネル!何があったんだ!?」

「落ち着きなさい、とにかく館に戻るわよ。ここじゃゆっくり話も出来ないわ」

「あ、ああ!おい!道を開けてくれ!」

キネレイが道を開け、その後に続いていく。

何はともあれ、こうしてフェイネル誘拐事件は解決したけど、更に厄介な事になってきた。

一度だけ森を振り返り、だけどすぐに館へと向かう。

まずはフェイネルを休ませないと。

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