表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第五章 エオロー連合国漫遊記
207/362

207 救出

フェイネルの館は町の中心に位置している。

そこへ至る道は町の中央を貫き、港まで続く大通りとなっていて常に活気に溢れている。

加えて、島の東西を繋ぐ街道にもなっているから昼夜を問わず馬車も行き交っている。

それだけを見ると、寧ろフェイネルの誘拐に向いている環境に思えるけど、当然ながら屋敷の周辺は警備が置かれている。

特に商人達は別の島だけでなく、国外から直接商売しに来てたりもするから、身元や商品の確認はされているし、住人であっても積み荷の確認はされている。

いくら平和とはいえ、島主の館の前を通る以上警備はそれなりに厳重だ。

まぁ、他の島ではそんな事は無かったからこれもフェイネルの施策なのだろうけども。

ともかく、そういう訳で館周辺は人の目が多くある。

だから私は今、そこから外れた方へと足を向けている。

島の南は西にあるもう一つの島と隣接しているからそこではない。

反対に北側は自然が多く残されていて観光地としては人気ではあるけど、人の手が加わっていない場所がほとんどだ。

つまり、隠れる場所があるとするならそっちにあるはずであり、

「、、、当たりね」

今回の騒ぎが私を誘き出す為なのだとしたら、何かしらが起こるはずだ。

そして、まさに森の中から一人の男が姿を現した。

「おいおい、早過ぎんだろ」

私の姿を見て驚きを見せて呟く男が、何とか気を取り直して警戒を強める。

左手は見えているけど、右手は後ろに隠している。

恐らくは何かしらの武器か魔導具を持っているのだろうけど、そこはどうでもいい。

「フェイネルは何処?」

「まぁそう焦るな。お前がヤバい奴なのは聞いてるんだ」

そう言って男が右手に持っていた何かを投げて寄越す。

「それを付けろ」

「ふぅん、魔力を封じる魔導具ってとこ?随分上等そうなのを持ってるわね」

何ともまぁ懐かしい事に、フェオールで逃げ回っていた時に襲撃者達に付けられたあの首輪型魔導具の酷似しているのだ。

恐らく出所は今は無き某帝国だろうけど、まさかこんな奴らまで持っているとはどんな因果か。

まぁ、何を出されようと私には意味が無いから、さっさとそれを首に付ける。

躊躇いの無い私に男が拍子抜けした表情を浮かべているけど、間抜けた顔をいつまでも見ている暇は無い。

男の傍に近付き、さっさと案内する様に促す。


まるで臆する事の無い私に、男は腰が引けながらも先導して歩いていく。

何ともお粗末な事に、手足が縛られる事も、目隠しも無し。

魔導具を付けただけで安心しているのか、それとも私を女だからと侮っているのか、どちらにしろ不用心極まりない。

いや、私の時は腐っても軍人だったけど、こいつらはどう見てもただの破落戸だ。

細かい事なんか考えてすらいないのだろう。

目印でもあるのか、迷いはしてないけど足取りそのものはどこか覚束無い。

正直、早くしてほしいからケツを蹴り上げてやろうかと考えてしまうけど、まだ我慢だ。

フェイネルが囚われている場所がハッキリするまでは大人しく、彼女を助けた後は、、、まぁいつも通りになるだろう。


ようやく辿り着いたのは森の奥深くにある小屋だった。

恐らくは野生動物を狩る人用の休憩所か何かなのだろう、大分古くは見えるけど手入れはされているようだ。

男は真っ直ぐに小屋へ向かい、扉を開ける。

「ボス、例の女を連れてきやしたぜ!」

(わぁ、こんな風に言う奴って本当に居るんだ)

あまりにも絵に描いたような言葉に笑いそうになるの堪えて、扉から中を覗き見る。

すると、椅子に座っているボスらしき男の足元に倒れているフェイネルの姿があった。

ここから見える限りでは乱暴をされた形跡はない。

だからと言って安心はできないけれど、一先ずこいつらの命が少しだけ延びたのは確かだ。

「魔導具は?」

「ちゃんと付けてますぜ。ゲへへ、早く剝いちゃいましょうぜ!」

どうしてこの手の連中は同じ事しか考えないのか、いや今はともかく、こいつ等がそれをフェイネルにしなかったのは不幸中の幸いとでも言うべきか。

とにかく、彼女の無事は確認できた。

なら、後始末と行きましょうか。

「はいはい、お喋りはそこまでよ」

挨拶代わりに私を案内してきた男を蹴り飛ばして小屋の中へと突入する。

中に居たのはリーダー含め六人。

呆気に取られている間抜け共の中心で首の魔導具に魔力を流し込んで破壊する。

「なっ!?」

驚愕するボス男以外を風で吹き飛ばして小屋の壁に叩きつける。

呆気なく気絶した奴らは置いといて、ボス男へと距離を詰める。

「こっ、コイツ!」

「とりあえず腕かな」

右腕を大きく振り被って殴ろうとしてくるボス男の懐に入り込み、足払いをして体勢を崩し、そのまま左腕を掴んで軽く捩じる。

まぁ軽くと言っても身体強化を入れているから、それだけでボス男の腕は捩じ折れる訳で。

「うぎゃあああああ!!!」

情けない悲鳴を上げて床を転げまわるボス男を無視してフェイネルの横に屈む。

「気絶はしてるけど、手を出されてはいなさそうね」

殴られた様な後も無いし、一応念の為に体の方も確認したけど穢されてもいない。

恐らくは薬か何かで眠らされただけだろう、そのままここに置かれたと見て良さそうだ。

「さ、なら後は」

転げまわるボス男の首を踏みつけ、その動きを止める。

「ぉっ、、、がっ、、、!」

「聞きたい事があるから素直に話しなさい。話せば腕を治してあげる。けど、もしも話さなければ、、、」

首を踏む足に力を込めて本気を伝えると、ボス男は涙を浮かべながら頷くのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ