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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第五章 エオロー連合国漫遊記
206/363

206 大事件

キネレイが引っ張ってきた馬車に飛び乗り、一先ずフェイネルの館へと向かう。

焦りを滲ませて落ち着きの無い彼だけど、それでもフェイネルの為と何とか自重している。

「リアメノ、昨日フェイネルとは会ったのよね?」

「うん、一緒にお買い物して、港で別れたよ」

「ならその後か。館に戻る途中で何が、、、クソッ!」

港から館までの距離はそれほど離れてはいない。

今は急ぎな上、あまり話を聞かれたくはないから馬車に乗っているけれど、ゆっくり歩いても三十分程度で着くだろう。

何かしら事故にあったのならすぐに分かる事だし、何よりも彼女は島主だ、相応の対応がされるはず。

「何処かから連絡は?医者からとか、何も無いの?」

「ああ、今の所は何も。昨日の夜遅くにアイツの使用人が血相変えて駆け込んできてな、フェイネルが帰ってこないって、、、」

キネレイの憔悴を見るに、恐らく昨晩からずっと探し回っていたのだろう、よく見ると目の下に隈が出来ている。

心配なのは分かるけど、それでコイツが倒れでもしたらそれはそれで面倒になる。

「アンタは少し休みなさい。そのままじゃ倒れるわよ」

「そんな暇は!」

「アンタが倒れたら誰が指揮を取るの?私は部外者よ?それともリアメノに押し付ける?」

私の言葉にキネレイが唇を噛んで黙り込む。

頭では分かっていても、心情としては、と言う所だろう。

「ったく、仕方ないわね」

指先に魔力を込め、それをキネレイの眉間に添える。

「何を、、、?」

怪訝そうにこちらを見てきた彼が、突然糸が切れた様に意識を失う。

それを支えて座席に横にしてやる。

「リタちゃん、何したの?」

「魔法で眠らせたのよ。このままじゃ意地でも休まなそうでしょ」

キョトンとするリアメノに肩を竦めて見せる。


馬車が館へと着くと、すぐにフェイネルの使用人達が駆け寄ってくる。

すぐにでも話を聞きたいけど、その前に。

「悪いけど、誰かキネレイを部屋に運んで。疲れて眠ってるの」

そう声を掛けると、数人の男達が動いてくれた。

馬車からキネレイを抱えて連れ出し、館へと運んで行った。

「リアメノ、悪いけどアイツの事頼むわ」

「うん、分かった。リタちゃんは?」

「出来る限り情報を集めるわ。あまり悠長にはしてられないからね」

何処か不安そうな表情のリアメノだけど、すぐに頷くと館へと駆けていく。

後に残されたのは私と、数人の使用人達だ。

「とりあえず中へ。昨日の事を聞かせてくれる?」

「は、はい!こちらへ!」

緊張の面持ちをした使用人が上擦った声で案内をする。

その後に続いて私も館へと足を踏み入れた。


フェイネルの館は、彼女らしく落ち着いた雰囲気で、調度品なんかも一見すると地味だけど、細やかな装飾の施されたお洒落な物に纏められていた。

それらが並ぶ廊下を抜け、応接室へと案内される。

私と共に四人の使用人が中へと入り、促されてソファに座ると、すぐにお茶が出される。

それを手に持って口へと近付けて、

「、、、やるならもっと上手くやりなさい」

口にする事なくテーブルに戻す。

何処か落ち着きの無かった使用人達が、途端に全身を強張らせて私を見つめる。

まぁ、正直こうなる可能性は考えていなかった訳でも無いけれど、こうも安直だと流石に毒気を抜かれてしまう。

「それで?フェイネルは何処に居るの?」

一番近くに居た使用人に問い掛ける。

私より少し歳上そうな女が、顔を真っ青をさせながら震える口を開き、

「あ、あの、、、」

「ダメよ!」

隣の女がそれを制止する。

他の三人と少し造りの違う服を着ているから、恐らくは使用人を取り纏める立場なのだろうか。

その彼女が他の三人を庇う様に前に出てくる。

「貴女には関わりの無い事です。すぐにお引き取りを!」

「あのね、今の私はヤーラーンの特使なの。ここに来たのも視察の為、分かってるでしょ?」

「だ、だとしてもです。これはエオロー()()で解決致します!」

だけ、の部分を強調している辺り、彼女達もあの双血の楔とやらに被れているのだろうか。

まぁ、個人の思想なんてどうでもいいし、好きにすればいいと思う。

けど、今の状況を本当に理解しているのだろうか。

「なら好きにしなさい。でもね、フェイネルがどういう状態か分からない現状でそれはどうなの?それとも、彼女の行方が分かってるの?」

私の問いに四人とも俯いてしまう。

まぁ、もしもそうだったとしたらキネレイもああまで焦ってはいないだろう。

そもそも、フェイネルが何故居なくなったのかも分からないのだ。

少なくとも、昨日リアメノと会った時は今日を楽しみにしていたと言う話だし、それなら自発的に居なくなる事は無いだろう、、、

「、、、まさか」

そこまで考えて、その可能性に今更至る。

確実とは言えないけれど、もしかすると。

「リアメノが先行したのを見て行き先を突き止めた?彼女の後を付けて、それでフェイネルを?」

リアメノが狙われなかったのは恐らくずっとフェイネルと居たからか。

買い物をしたと言ってたし、人の多い所にしか行かなかったはず。

だから、代わりに一人になったフェイネルを狙ったのだろうか。

もしもそうだとしたら、フェイネルは私を誘き出す為に誘拐された可能性がある。

つい先日、私自身がそんな目に遭っているのだから。

そして、下手人達は私の手で始末された。

なら、次は直接私を狙うのではなく、より確実に上手くいく誰かを狙うだろう。

もしもそうだとしたら、、、

いきなり立ち上がった私に腰を抜かす四人を無視して館を出ていく。

思った通りなら、こうすれば動きがあるはず。

そうして私は人気の無い方へと向かって歩いていく。

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