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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第五章 エオロー連合国漫遊記
204/363

204 束の間の平穏

坑道を抜けて町を目指す。

予想通り、出口は町のすぐ傍の森の中にひっそりと口を開けていて、かなりの距離を短縮させていた。

町に入ると、中は最初に見た時と変わらず賑やかで、特に騒ぎになっている様子は無かった。

あとはリアメノと合流できればとりあえずは一段落なのだけど。

「、、、手を打つって、そういう事ね」

暫く歩きながら彼女の姿を探していたら、何故か人集りに埋もれているリアメノ。

御付きの人達も一緒に群衆に揉まれていて、周りの状況なんて見えて無さそうだ。

そんな中、困った様な笑みを浮かべながら対応していたリアメノと目が合い、

「あっ!リタちゃーん!助けてー!」

大きく手を振りながらそう叫ぶのだった。


あっという間に解散となった群衆を呆れたながら眺めた後、リアメノと改めて朝市を回り始める。

「うぅー、急に皆集まって来てお話しようってなってねー。びっくりしちゃったよー」

どうやら、私が拐われた少し後から急に町の人達に囲まれて身動きが取れなくなったらしい。

その話の中で、あれからまだ一時間も経っていない事も分かった。

(相当手慣れてるわね。いえ、それよりも双血の楔とやら、どういう連中なの?)

誘拐犯はともかく、ただの地下組織があれだけの人数を動かせるのも相当脅威だ。

今回はそれに救われたけど、迂闊に敵に回せばあれが襲い掛かってくるという事にもなる。

そう考えると、今も周りを歩く人々に感じる印象もかなり変わってくる。

散々平和だの友好だのと付いた説明を聞いたししてきたけど、こうして関わっていくとそれが仮初のものだと気付かされる。

(ヤーラーンもエオローも、表立って事を荒立てるつもりはない。けれど、その分色々と蓄積されているって感じね)

未だ、全容が見えない二つの国の複雑な関係。

そこに加えてエオローには謎の地下組織、ヤーラーンでは双子の王子による次期皇帝争い。

例の謎の壁に、私を狙うという貴族。

今こうしてリアメノと並んで楽しんでいらるのも、恐らくは束の間の平穏だろう。

いよいよ当事者になり始めた以上、この先何が起きてもおかしくは無い。

(まぁ、せめてこの子が巻き込まれないようにはしてあげないとね)

少し前を楽しそうに歩くリアメノ、偶然にも付いて来る事になった彼女に害が及ばない様にはしないと。


朝市で朝食を済ませた後、リアメノの案内で彼女の島を見て回った。

と言っても、ほとんど普通に観光していただけだし、結局朝の誘拐以降、何か起きてもいない。

強いて言えば、やっぱり視線を感じた位か。

そのまま一日が終わり、今はリアメノが用意した最高級の宿で休んでいる。

本当は自分の館に招待するつもりだったらしいけど、昨夜の宴会の片付けが終わっていない上、曲がりなりにも島主である彼女の本来の仕事もあるとかで、今日は久々に一人でゆっくりとしている。

とはいえ、考える事はたくさんある。

まずはエオローの地下組織、双血の楔。

数百年前から存在していると言われる、ヤーラーンに反旗を翻す連中で、だけど上に居るのはヤーラーンの貴族らしき人物。

資金力は高いしある程度の統率が取れているけど、それ以上に脅威なのはエオローの国民にも影響力がある事だろう。

ヤーラーン側には、双子の王子による後継者争い。

どうやら、ヤーラーンは古くから双子の王子が生まれる事があり、その度に何かしらの騒動が起きているらしい。

この辺りはその内殿下から直接聞く事にした方がいいだろう。

ただ、その辺の事情を丸ごと話さなかった彼だ、そう簡単には行かないだろう。

そして、今日明らかになった聖痕の聖女を狙う奴ら。

あの男の言う事が本当なら、朝の様な事は今後も起こり得るだろう。

ただ、これについては気になる事がある。

そもそもとして、私はエオローに来てからずっと素性を隠していた。

唯一、聖痕を持つ殿下のみが偶然に気付いただけ、のはずだった。

にも拘らず、聞いた話が正しければかなり早い段階で私の事はバレていた事になる。

これこそが最大の謎だ。

ここからは完全に私の想像だけど、二国を隔てる壁には聖痕を持つ者が関わっている。

そして、そいつは私の事にも気付いていて情報を流している可能性がある。

ただ、それはそれで私がまるで気付かないのもおかしい。


そう、初めて殿下と会った時に彼は聖痕の共鳴で私に気付いたと言っていた。

それ自体は事実だろう。

だけど、一つだけ腑に落ちない事がある。

「、、、私が気付かない訳が無い」

言葉にしてみて、その異様な状況を再認識する。

本来、聖痕を隠し通せる事はかなり難しい。

それこそ、誰よりも聖痕に精通する私だからこそ出来る事で、その場合、私が相手に気付く事はあってもその逆は有り得ない。

「、、、」

既に色々な事が起きているし、いろんな人に出会ったけど、未だに最も警戒すべき人物は私の中では変わらない。

「あの笑みに気を許すワケにはいかない」

この仕事が終われば必ずもう一度会う事になる。

その時、色々と糺さないといけないだろう。

或いは、最も最悪な展開も覚悟しておく必要もあるだろうか。

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