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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第五章 エオロー連合国漫遊記
201/363

201 誘拐

(手慣れてるなぁ)

耳に届く足音からすると、何処かしらの森の中のようだ。

足元は悪いはずだけど、担がれた私に伝わる振動は少ない。

体が揺れている感じも少ないから、少なくとも私を担いでいる人物は相当体を鍛えている。

それに、聞こえる足音も森の中を歩いているにしてはかなり静かだ。

これらを合わせて考えると、恐らくこの人物は軍人、それもかなりの手練れだろう。

呼吸音も小さく規則的だし、周りに居る連中も同じ。

、、、そう、今現在、私の周りには少なくとも他に四人は人が居る。

例え視界を塞がれようと、私にとっては何ら障害にはならない。

とはいえ、これだけ鍛えられた連中となると、あまりやり過ぎると私が起きていると勘付かれる可能性もあるから深追いはしていない。

ただ、彼らがいつ合流したのかが分からない。

他の奴らも同じく軍人なのだろう、足音も気配も感じさせないから、気が付いたら居た、という感じだ。

それにそもそも、私がこうも簡単に拐われるというのが中々に驚きでもある。

勿論、気を抜いたつもりは無かったけど、朝市という初めての体験に少し浮ついていたのは確かだ。

それに、昨晩というか、もはや今日ではあるけど、あまりゆっくり休めていなかったのもある。

更に、朝市に居たヤーラーンの軍人、彼らに気を取られたのもある。

(、、、都合が良すぎない?)

ここまでの経緯を思い返してみると、何だか嫌な方に全てが合致するのは気のせいだろうか。

でも、だとすると、、、


周りの気配が少し騒つく。

私を拐った連中が足を止め、何かを探っているようだ。

その内、前の方から足音が一つ。

それは私達から少し離れた辺りで止まり、

「遅いぞ。予定より一分遅れている、急げ」

冷淡な口調がそう告げ、また離れていく。

だけど、周りの連中はそれを気にする様子もなく再び歩き出す。

今度は少し駆け足気味で、斜面を登っている。

(いえ、斜面?山を登ってる?)

最初にこの島に来た時にある程度は地形を観察したけど、確かに小さな山はあった。

だけど、そこは町から南に少し離れた位置にあったはず。

体感として、そんな長い時間歩いていたとは思えない。

何だか妙な感覚を抱きつつ、今はまだ成すがままに任せる。

コイツらが何者にせよ、向かう先に私を拐うように命じた誰かが、或いはそこに繋がる人物が居るはず。

こんな事をしたんだから、その報いはしっかりと受けてもらわないと。


目的地は山小屋らしき所か。

あれからもう少しだけ山を登り、その先で彼らはようやく足を止めた。

そこで私は別の誰かに引き渡され、ここまで運んできた連中はそのまま去っていった。

代わりに私を担いだ誰かは、仲間と思われる奴と一言二言言葉を交わした後、小屋の中へと入り、私を椅子に座らせる。

(一人だけ?)

中に居たのは、気配からすると一人。

私と向かい合う様にして椅子に座っているようだ。

「袋を取れ」

そいつが言葉を発し、私に被せられた袋に手が掛かる。

その瞬間、聖痕に魔力を流して風を巻き起こす。

「ぐあぁっ!」

袋を取ろうとしていた奴が声を上げて吹き飛び、向かいに居る奴も身を低くしている。

その隙に袋も、手足を縛る紐も切り裂く。

「バカな、、、眠っていたのではないのか!?」

「あの程度で私をどうにか出来ると思われてたなんて、随分舐められたものね」

床に這いつくばる男に歩み寄り、そのまま頭を踏みつける。

「がっ!?な、何をっ!?」

「私の質問にだけ答えなさい」

そのまま身体強化を掛け、力を込めていくと、男の頭が床板に軽く沈み、ミシミシと音を立てる。

「わっ、分かった!答える!」

男が手足をバタつかせながらそう怒鳴る。

少しだけ力を緩め、背後の様子を探ると、吹き飛んだ奴は扉をぶち抜いて外で倒れていた。

そのまま意識を向けながら、足元の男に問い掛ける。

「誰の指示?」

「て、帝国のとある貴族だ!お前を殿下から引き離す為だ!」

「へぇ。で、あわよくば私を手篭めにでもしてしまおうって魂胆?」

「そ、それは、、、」

「アンタもおこぼれに預かろうってとこでしょ?下心が見え見えなのよ!」

足に力を入れて男の頭を床にめり込ませる。

今は体勢的に見えないけどコイツ、股間を膨らませていたのだ。

私を運んできた連中と違ってコイツは普通だから、そういう気配も全部垂れ流している。

正直、もう少し穏便に進めるつもりだったけど、部屋に入った瞬間にそれを感じてしまったものだから、我慢できなかった。

ただ、コイツの話で一つだけ気になる事があったから、それだけは確認しないといけない。

「最後の質問よ。帝国の貴族って言ったけど、私がどういう立場かを知ってて拐った訳?」

「そ、それは、、、」

「もういいわ」

言い淀んだ男の頭を思い切り踏み、床板を砕きながらそのまま止めを刺す。

「まさかこうも直接手を出すなんて。ヤーラーンも中々荒れてそうね」

小屋を後にした、念の為まだ気絶している男にも魔法を放っておく。

そこで一息付きたい所だけど、恐らく町では私を探してリアメノが駆け回っているだろう。

結局、更に厄介な状況になってきて思わず頭を抱えたくなるけど、とにかく今は町に戻るのが先決だ。

軽く気合いを入れ直して、山を駆け降りていくのだった。

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