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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第五章 エオロー連合国漫遊記
196/362

196 次なる島へ

次の日。

昨日と同じく晴れ渡る空の下、私達は波を掻き分けて次の島を目指している。

各島を繋ぐ定期船は私達意外にも多くの人が乗っていて大盛況だ。

風を受けて海の上を走る船は多少揺れこそするものの、操船技術の高さ故かそれほど揺れを感じない。

お陰で、想像以上に穏やかな船旅だ。

甲板で感じる風は潮風らしく海の香りがするけど、纏わりつく様な感じはせず、寧ろ爽やかさも感じられる。

船の前方、静かに景色を眺める私とは対象的に、リアメノは前へ後ろへ、右に左にと駆け回っている。

一緒に乗船している子供達と元気にはしゃぎ回るその姿に相変わらず気が抜けるけど、島主になってからはあまり自身の島から出る事もなかったらしい。

まぁ、やるべき事も覚えないといけない事もたくさんあるだろうし、息抜きもしたいのだろう。

それに、船旅と呼べる程長い時間波に揺られる訳でもない。

なにせ、

「そろそろ到着するぞー!」

船員の怒鳴り声が響き、それに釣られて幾らかの人が前甲板に集まる。

当然の様にリアメノもそこに紛れて子供達とはしゃいでいるのは置いておくとして。


中央島から二時間も掛からず、次なる目的地である北東島へと私達は到着した。


他の乗客達が降りるのを待って、最後に私とリアメノが下船する。

渡り板の先、港には多くの人が居て騒々しさすら感じる喧騒に溢れていた。

その中に、周りから距離を取られている一団が居るのに気付く。

そこに見知った顔が一つ。

「ようこそ、我が島へ」

私が降り立つと同時にそう声が掛けられる。

「ええ、お世話になるわね、ドランド」

「よろしくねー!」

「全く、貴女がそちら側でどうするんです。私と共に特使様を案内するんですよ」

子猫でも掴むようにリアメノの首根っこを掴んで隣に立たせるドランド。

頬を膨らませるリアメノを無視して、私へと肩を竦めて見せる。

「中央では大変でしたでしょう。エオローの風土故か、未だに子供っぽくて。困ったものです」

「まぁ、楽しかったから大丈夫よ。それより、とりあえずまずはアレを見たいのだけど」

私の言葉に、ドランドが笑みを消して真剣な表情になる。

周りの護衛達も居住まいを正し、僅かな緊張感を滲ませる。

「ええ、無論です。どうぞこちらへ」

用意されていた馬車に乗り、港のある西から島を横断し、東へ。


馬車に揺られる事一時間程か。

船ではしゃぎ疲れたリアメノはまたしても眠りこけ、始めに幾つか確認した後、私とドランドも静かに窓の外を眺めている。

これから向かうのは二つの国を遮る巨大な壁。

この北東の島、東の海岸からだとその壁が一望出来るのだという。

ドランドが五人の島主の中で最も早く異変に気付いた理由がそれだ。

ただ、やはりというか途中の建設段階では全く姿が見えなかったという話で、彼も困惑したそうだ。

直に見て、何か得られる事があればいいけれど。


海岸の入り口で馬車を降り、砂浜を歩く。

波打ち際に立ち、彼方を見つめる。

その視線の先、海と空を別つようにそれは聳えていた。

「ここから見ても分かる程度には大きいわね」

「ええ、初めてこの目で見た時は暫し我を忘れましたよ。それでも、すぐさま他の四人と、ヤーラーンにも使いを出して調査を始めましたが」

何かを思い出したのか、疲れた様な表情を見せるドランド。

まぁ、あんなものがいきなり出てきた上に、その最初の報告者となれば色々と聞かれたり、有らぬ疑いを掛けられたりもしただろう。

寧ろ、彼だからこそ今の状態にまで持ってくる事が出来たのかもしれない。

万が一にでもリアメノが最初に見つけたとなれば、、、うん、やめておこう。

気を取り直して、目の前の事に意識を向ける。

「結局手掛かりは無し。唯一、殿下からの情報が頼りって所かしら」

「情け無い話ですがね。とは言え、悲嘆に暮れる暇も無し。出来る事をしましょう。まぁ、中央島では特に得られる物は無かったでしょうけど」

「ああ、例の参考人と接触したわよ」

「そうですか、、、今何と?」

横に居たドランドがずいっと顔を覗かせる。

中々に面白い表情をしているけど、笑う訳にもいかないから軽く目を逸らしつつ話を続ける。

「流石に口は堅かったから余り情報は無いけど、それなりな規模の組織が居そうね。それも、ヤーラーン国内に」

目を白黒、百面相とでも呼ぶべき勢いで表情を変えるドランド。

だけど、徐々に平静を取り戻して何やらブツブツと呟き始める。

壁を見据えたり、背後を振り返ったりと、思考と行動が連動しているのは癖か何かだろうか。


そうして一頻り考え込んだ後。

「むっ、申し訳ない。すっかり考え込んでしまいました」

私の視線に気付いたのか、気恥ずかしそうなしながら壁の方に目を向ける。

それから少しだけ間を置き、

「、、、貴女と接触した組織とやらに心当たりがあります」

声を潜めてそう口にした。

私が目線で先を促すと、彼は眼鏡を外して空を仰いだ。

「噂程度ですが、かつてエオローが独立する前に起きた内乱。その際の残党が今も残っているというのです」

またしても、予想外の事実が浮かび上がったのだった。

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