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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第五章 エオロー連合国漫遊記
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192 寄らば姦し

結局、話し合いは終わったけれどその流れで宴会が始まり、当然の様に私も巻き込まれてしまい。

男三人は何故かもう肩の荷が下りたかのようにはしゃいでいるし、フェイネルはまだ私に対して警戒感を持ってはいるけど、それでも依頼を引き受けた事にはしっかりと感謝を示した。

ただ、何故かリアメノが私に懐いてしまい、ずっと横に居る。

何なら腕にしがみついたり、せっせと食べ物や飲み物を取ってくれたりしている。

一度、あの子が席を外した隙にフェイネルに聞いてみたのだけど、どうやら彼女のご両親、健在ではあるものの例の第二王子の対応で精神的に参ってしまったらしく、それで自ら島主を受け継いだそうだ。

だからなのか、親しい友人達と疎遠になってしまい、時折寂しそうにしていたそうだ。

そこに、私が現れたものだから無意識に拠り所にしているのではないかとフェイネルが語ってくれた。

まぁ確かに、邪な感情は無さそうだし、それ以外の害意や敵意も感じ取れないから健気ないい子なのだろうけど、正直言うとこういう手合いは少し苦手だったりする。

少し前にも、こういう所謂小動物を彷彿とさせるのを相手にしたし、結局お節介を焼く羽目になってしまったし。


まぁ、そんなこんなで宴会もようやく終わろうかという頃合いだった。

「そうだ!」

ヴァネスの声が突然響き、私と横に居るリアメノをしげしげと見つめる。

その視線に嫌な予感がして、何か言われる前に遮ろうとしたのだけど。

「待ちなさ、、、」

「リアメノがそれだけ懐いてんだ、島主として案内しているって事にして一緒に行っちゃどうだ!」

「あ!それいい!私も行く行く!ね?」

この大男は何を言っているのだろうか。

そしてリアメノも、ね?なんて可愛らしく首を傾げてこっちを見ない。

「アンタね、さっき自分で言った事もう忘れたの?そのデカ頭ぶん殴って思い出させるわよ?」

「いやいや、忘れちゃいねぇさ!だがな、アンタが特使だって事は多分もう知れ渡ってる。そんな人が一人でフラついてちゃあ逆におかしいだろ?なら、相応の御付きがいねぇとマズかろう。で、リアメノならアンタと並んでても変じゃねぇし、逆にそれらしくなる。何だかんだ、ソイツもまだ若いからそれ程実績が無ぇからよ、特使の案内役として動き回るに不自然は無い!」

腕を組んで満足そうに頷くヴァネス。

何故かそれに嬉しそうにしているのはフェイネルで、他の二人もやたらと笑顔。

肝心のリアメノなんて、既に案内の算段を立て始めている始末。

とはいえ、今の提案には頷ける部分があるのも確かだし、正直有難くもある。

闇雲に動き回ればそれだけでも怪しいし、それが帝国の特使ともなれば件の人物やそれに連なる連中に警戒されてしまう。

隅々まではともかく、少なくとも各島の主要な町なら噂程度でも私の事は広まっているかもしれないし、ならいっその事、特使に各島を案内しているという形で堂々と動いた方がまだマシかもしれない。

要は、体の良い隠れ蓑だ。

「はぁ、確かに一理あるわ。なら、明日にでも準備を整えて明後日出発でいい?」

「うん!任せてね、これでも島主。案内なんてちょちょいって出来るんだから!」

胸を張るリアメノだけど、本来の目的は忘れないでいて欲しいかな、、、


翌日、中央島の島主であるヴァネスと、案内役のリアメノ以外の三人は特使を迎える為、という名目で一足先に自らの島に帰っていった。

ヴァネスも、まずは改めて自分の島を見てもらうと意気込んであれこれ指示を飛ばしている。

リアメノは御付きの者を何人か引き連れて買い出しに行ってしまい。

一人残された私は客人として豪勢な部屋に案内され、丸一日至れり尽くせりな贅沢を味わう事になったのだった。


更に翌日。

「じゃ、後は頼むぞ!流石に俺までくっ付いてちゃあアレだからな!」

ガハハと笑いながら去っていったヴァネス。

その背を見送ったリアメノがクルリと振り返り、私の手を掴む。

「じゃあじゃあ、行こっか!あっ!じゃなくて!行きましょうか、特使様!」

一応は体裁を取り繕ってはいるのだけど、その顔は隠そうともしない満面の笑み。

これじゃあ仲のいい友人同士が町に遊びに行くようにしか見えないだろうに。

一応、護衛の人も居るけれど、彼等は基本的に私達の視界には入らない。

要人警護の基本は仕込まれているようだし、不自然にならない程度には目立ち過ぎない動きをしている。

但し、彼等の本来の目的もまた重要参考人の確認、或いは捕縛だ。

私が彼等を利用する様に、彼等もまた私達を利用する。

今回は特に状況が状況だ。

見方を変えれば慎重に慎重を期すとも受け取れるし、問題は無いだろう。

「ささ、この辺はもう知ってるでしょ?なら、地元民お勧めの穴場へごあんなーい!」

そんな私を余所に、元気一杯のリアメノが手を高々と掲げて歩き出す。

半分引っ張られる形で私も歩き出し、少し前を行く彼女を見て誰にともなく肩を竦める。

まぁ、気にする事はあるけれど、たまにはこういう暢気な雰囲気もいいかもしれない。

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