表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第四章 ウルギス帝国狂乱譚
176/362

176 全ての果てに

力任せに城へと突入したのはいいけれど、流石にやり過ぎたかもしれない。

いや、その前に私とデカテーセリスが遠慮無しに魔力を巻き散らしたせいかもしれないけれど、城は呆気なく半壊してしまった。

一番高い尖塔は最早見る影も無いし、その余波で正面側はほぼ壁が崩れ去り、辛うじて半分位が残っている有様だ。

恐らくそこも、直に崩壊していくだろう。

そんな瓦礫の中から身を起こし、

「悪いわね、、、」

私の下、さっきまで死闘を演じていたデカテーセリスの亡骸に呟く。

零距離での魔法の五連射、最後の最後に与えた攻撃はさしもの彼女も耐えられる筈も無く。

体の半分が消し飛び、残っている上半身もほぼ炭化している。

だけど、感傷に浸る暇は無い。

「中々な見物であったぞ。俺の城を壊してくれるとは思わなかったがな」

頭上から声が響く。

見上げるまでも無く、そこに居るのが誰かは分かる。

この城、いや、帝国に残された最後の敵。

いまや崩壊の一途を辿る空飛ぶ帝都の主。

「ゼイオス、終わりの時よ」

「そうだな、最早城も街も民も消えた。貴様なんぞに手を出した末路よ」

ゆっくりと床に降り立ち、抱えていた何かを投げ捨てる。

それが何かを理解し、何をされていたのかも自ずと理解する。

「まさか、()()()()の為だけに私の人形をもう一体作ってたって訳?」

「俺は我慢するのが嫌いでな。人形だろうと、貴様の顔をした物を抱かねば抑えが効かなかったのだよ。まぁ、最後は思わず縊り殺してしまったがな」

そうは言っているけど、投げ捨てられたもう一体の私を模した魔導人形はかなり色々とされたようだ。

私自身ではないとはいえ、同じ顔をした奴がそんな目に遭っていたと想像するだけでも怖気が走るし、恐らく奴は私にもそれをしたいと思っているのだろう。

だからこそ、今この場でコレを見せつけている。

ここで負ければ、同じ末路を辿るのだ、と。

それに応える訳ではないけれど、どの道同じ事になっていただろう。

捨てられた人形に炎を放って燃やすと、そのままゼイオスに向けて雷を放つ。

それを同じ魔法で相殺し、ヤツが獰猛な笑みを浮かべる。

「そうだ!そう来なくてはなぁ!」

吠え猛り、額の聖痕を輝かせると同時に床を砕き散らせながら飛び出す。

黒炎から鎌を取り出し、それを迎え撃つ。

長きに渡った帝国での戦い、その最後の一戦が始まる。


ゼイオスはやや大振りの剣を片手で自在に振るう。

聖痕の力を全て身体強化に回しているようで、素早い動きに合わせて、柔軟に剣を振り回す。

それを鎌で弾きながら、四方から魔法を放つ。

コイツと長く遊ぶ気は無い、全ての聖痕を全開にして一切の遠慮も容赦も無く攻め立てる。

「右目の聖痕、、、フィルニスは死んだか」

「アイツのお望み通りにね」

「成程、奴の仮説は正しかったという訳か」

鎌と剣の間に火花が散り、互いに大きく飛び退る。

今の話が本当なら、フィルニスは魂だけでなく聖痕の本質にも迫っていた事になる。

いや、だからこそ、アイツは最後にあんな行動に出たのだろう。

聖痕も、魂も、私に捧げる為に。

だけど、それを語るゼイオスは、珍しく何処か憂いを帯びた眼差しで私を見る。

「やはり分からぬな。お前は一体何だ?」

問いと同時に炎が飛んでくる。

それを障壁で弾いて、お返しに氷の槍を飛ばす。

「私は私よ。お前が望むモノでも無いし、世界に弄ばれる人形でも無い」

その槍を素手で掴み取り、床に投げ捨てるゼイオス。

そこからはまた無言の攻防。

やはりと言うか、戦闘経験に関してはコイツの方が遥かに上手だ。

こっちは全部の聖痕を使って攻めているのに、奴はそれを簡単に捌いている。

一応掠ったりはするのだけど、それもどちらかと言うと薄皮一枚で致命傷を避けて、素早く反撃してくる為の布石になっている。

私が、かつての頃も含めて対峙した相手を圧倒して来たのは聖痕の恩恵なのだとつくづく痛感させられる。

そしてそれ以上に、コイツがどれだけの修羅場を潜ってきたのか、想像が付かない。


何度目かの鍔迫り合いから距離を取る。

既に、私は聖痕三つを身体強化に回し、残る三つで魔法を放っている。

どう足掻いても元の身体能力の差が覆せない以上、こうするしかまともに対抗出来なくなってきたのだ。

疲れこそ無いけれど、それでも多少の焦りも滲んでくる。

ゼイオスも未だ余裕の表情を見せている、けれど。

「このままでは埒が開かんな」

「ならさっさとくたばってくれる?」

「ハッ、それは聞けんな。ああそうだとも、やはり俺はお前が欲しいな。何を秘めようと、それごと飲み込んでこその俺よ!」

目を見開き、左手を額に翳す。

そして、

「ならば刮目せよ!フィルニスめが残した最後の成果、今こそ解き放つ時よ!」

聖痕が眩く輝き、次第にその輪郭がボヤけていく。

「まさか!?」

すぐに奴がしようとしている事に気付いて飛び掛かるけど、私の刃が届くよりも前に、

「うおおおおおおおおお!!!」

ゼイオスから莫大な魔力が解き放たれ、私諸共辺り一面が吹き飛ぶ。

着地して立ち昇る砂埃の先を睨む。

その中、爛々と輝く聖痕だけが五重に浮かんでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ