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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第四章 ウルギス帝国狂乱譚
175/362

175 天上の戦い

炎に氷、雷。

その他にも、多彩な魔法が空を切り裂く。

何重にも重なり合いながらそれらが乱れ飛び、その合間を私と奴は飛び抜けて行く。

やはりというか何というか、魔法の使い方も身のこなしも私と瓜二つ、どころか全く同じだから動きは読み易い。

但し、それは向こうも同じのようで、私の攻撃も悉く躱される。

或いは、端から見ている分には面白いのかもしれないけれど、こっちとしては全く面倒な事この上ない。

鏡に向かって威嚇する動物じゃあるまいし、無駄な事をする暇は無いのだけれど。

「ったく、面倒な事をしてくれたわね!」

誰にともなく毒づきながら、あちらの様子を観察する。

産まれたばかりだというのに、その動きに無駄も違和感も無い。

滑らかに宙を舞い、流れる様に魔法を放つ。

魔力の使い方も澱みが無いし、、、いや。

「そういう事ね」

ここに至って、私と奴の、恐らくは唯一の違いに気付く。

確かに、冷静になれば気付ける事だけど、流石に自分を真似た存在を目の当たりにすれば仕方がないだろう。

気を取り直して、この無駄な戦いに終止符を打つとしよう。


デカテーセリスが魔力を高めていき、それを右手に集束させる。

対する私は、身を翻して一気に空を下る。

「逃げる気!?」

奴の言葉を無視して城下町に入り、建物の間を縫う様に蛇行していく。

頭上から強力な魔法の気配を感じるけど、確かに私が向こう側なら遠慮なく町ごと吹き飛ばすだろう。

もちろん、私もそんな事など気にしないし、そもそも、既に崩壊を始めているのだから、今更な話だ。

そんな事を考えているうちに、頭上から強烈な雷が幾つも降り注いでくる。

それを危なげなく躱して、変わりに砕けていく建物の残骸を盾にしながらその時を待つ。


私が気付いた奴の弱点。

皮肉にも、フィルニスの肝入りであろう擬似聖痕の多重化、それこそが仇となっている。

私の場合、六つの聖痕はそれぞれが独立している。

つまり、いまや私は六つの魔法を同時に操る事が出来る。

対して、デカテーセリスはあくまで二つの聖痕をそれぞれ多重に連鎖させている。

それがどう違うかというと、あくまで向こうは多重化した聖痕によって扱える魔力量は増えただけで、同時に放てるのは二つに過ぎないのだ。

豊富な魔力に任せて連続で魔法を放っているから分かり難いけど、別の魔法を放つ際にほんの僅かだけど隙が生じる。

常人からすれば隙にもならない僅かな瞬間だけど、

「、、、そろそろね」

これが自分の事となるなら手に取る様に分かる。

建物の影を逃げ回る奴を炙り出すにはどうするか、答えは。

「チッ、それなら!」

デカテーセリスが業を煮やし、二つの聖痕のうち片方の魔法を切り替える。

雷はそのままに、同時に大量の水を大気中から搔き集め始める。

雷に水、単純だからこそ効果は絶大。

だからこそ、

「今!」

全ての聖痕で身体強化を施し、一気に飛び出す。

最早人の耐えられる速度なんて超えているから、骨や内臓、その他、外も中も全てを補強する。

一筋の光と化して空を切り裂き、

「っ!?」

「捕まえた!」

魔法を放とうとしていた、その無防備な状態の奴の頭を両手で挟み込む。

身体強化を聖痕一つに切り替え、五つの聖痕で魔法を象る。

炎、氷、雷、風、土。

五つの属性の魔法、それに極限まで魔力を注ぎ込み、事象から具象へと昇華させる。

「こんな事が、、、」

「これが聖痕の力。私とお前の違いよ」

五つの魔法がそれぞれ、意志持つ生物の如く姿を取る。

正直、これも黒炎のドレスと同じく魔王時代に多用していた魔法である。

本音を言えば使いたくはなかったけど、相手が相手だ、贅沢は言ってられない。

頭を掴む手に力を入れ、真っすぐにその眼を睨む。

デカテーセリスも最後の抵抗とばかりにその手を掴み、引き離そうとするけど、既に遅い。

氷の蛇が奴の胴に喰らい付き、そのまま飛んでいく。

そこに、雷の鳥が飛び掛かりそのまま飲み込み、そこに風の馬が渦となって身動きの取れない奴を地面へと諸共激突する。

轟音と砂煙が巻き起こり、その中から土の猪が現れると同時にデカテーセリスを礫と共に再び空へと打ち上げる。

そして、その先に待ち構えるのは炎の巨人。

態勢を整えようと藻掻くデカテーセリスだけど、それをも飲み込む炎の手が奴を掴み、握り締めて爆発する。

だけど、それで終わりではない。

役目を終えた魔法の生物達が私の下に集い、元の魔法へ戻っていく。

それを体に纏わせ、

「これで終わりよ!」

デカテーセリスが動くよりも先にもう一度空を駆け、奴へと肉薄する。

その勢いのままにボロボロのデカテーセリスの顔を掴み、更に加速して空へと舞い上がる。

「ぐっ、、、」

最後の足掻きを見せるその姿に、僅かに憐れみを覚える。

もっと違う形で、違う状況でなら当然結末も違っただろう。

だけど、こうなった以上、為すべき事を為さねばならない。

「ぐっ、ああああああああ!」

「はああああああああああ!」

互いの咆哮が響き、強大な魔力が溢れ出していく。

そしてそのまま、私達は城の屋根を突き破り、中へと落ちて行った。

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