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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第四章 ウルギス帝国狂乱譚
170/362

170 激情

この魔導人形は良く覚えている。

なにせ、初対面から怖い程の殺気を私に向けているのだ。

勿論、今もそれは継続中な訳で。

「、、、本当に反吐が出る女ね」

「いきなりご挨拶ね。まともに躾けられてないようね」

見た目はどこぞの国のお姫様と言われてもおかしくない程に美人なのに、今やその顔は、、、なんかよく分からないけど激しい感情で恐ろしい形相になっているし、その口から吐き出される言葉なんて私への、、、いや、本当にこの感情は何なんだろうか。

思わず言い返してしまったけど、彼女が私に向けてくる感情が本当に理解出来ない。

だけど、向こうは私の事などお構い無しらしく、剣を構え直すと再び飛び掛かってきた。

「死ね死ね死ね!この淫売女め!」

「ちょっ!何なのよ本当に!」

ともかく、応戦しない事にはどうにもならないのだけど、それはそれとして最早言っている事が意味不明だ。

猛烈な勢いで振るわれる剣を捌いているけど、これまでの魔導人形共とは違って、そこに特別な何かを感じない。

その代わりとでも言うように、感情のままに言葉をぶつけてくる。

「お前が!お前さえ居なければ!私は!今も!」

私からすると、支離滅裂にしか聞こえない何かをひたすら叫びながらも、少しづつ剣の鋭さが増してくる。

どうやら、心の内はともかく少しは冷静さを取り戻しつつあるようだ。

まぁ、それを大人しく受け入れるつもりは、もちろん無いけれど。

「男に捨てられでもした?それで私に八つ当たりしてるんじゃないわよね?」

魔導人形の表情が凍りつき、ピタリと動きが止まる。

どうやら図星、、、いや、これは触れちゃダメな所を直撃してしまったようだ。

固まった顔がみるみるうちに真っ赤になり、目が鋭くなる。

「、、、殺す」

唸るような呟きと共に額に擬似聖痕が浮かび上がる。

魔力が渦巻いて彼女の周りに集まっていき、その身を浮かび上がらせる。

いよいよ以って、全力で私を殺しに掛かるらしい。

それを迎え撃つべく、私も魔力を集束させる。

ただし、こちらは全て右手に。

「死ねえええええええ!」

叫び声が地下に反響し、同時に響く爆音と共に猛烈な勢いでこちらへと突っ込んでくる。

それを真っ直ぐ見据え、魔力を纏わせた鎌を構える。

瞬く間に互いの距離は縮まり、そして。


決着は呆気なかった。

奴の攻撃を私は鎌の刃で受け流し、すれ違い様に柄の刃でガラ空きになった体を貫いた。

飛び込んできた勢いのまま床に叩きつけられた奴の体は、手足は明らかに骨が折れているし、切り裂いた体からは大量の血が流れ出ている。

それでも、流石は魔導人形だけあって、まだ微かに息がある。

それどころか、そんな状態にも拘らずまだ、私に向かってこようとすらしている。

止めを刺そうと彼女の方へと歩み寄り、

「クッ、、、バカめ」

掠れた呻きのようなものが聞こえ、それを聞き返そうと足を一歩踏み出し、、、

「っ!?」

唐突に、背筋に寒気が走り、咄嗟に床を蹴って横に飛び退く。

ほぼ同時に、今まさに立っていた場所に何かが飛び込んできて、床に亀裂が走る。

「グルルルルル」

獣の唸り声を漏らしながらその何かが立ち上がり、ようやくその姿をハッキリと確認できた。

「お前が私をここに引き摺り込んだ奴ね」

最初に私に奇襲を仕掛け、地下へと落とした謎の襲撃者。

ここでようやくその姿を見る事が出来た。

やはり、あの時フィルニスの傍に居た魔導人形の一体だ。

同時に、あの子から受け継いだ記憶からコイツらの素性にも思い当たる。

「お前達がエンシアとデカね」

私の言葉に倒れたままの魔導人形、エンシアが更に顔を歪ませ、獣の気配を纏う魔導人形、デカはまるで無視してエンシアの下に素早く駆け寄る。


この魔導人形達は姉弟だ。

姉であるエンシアと、弟のデカ。

魔導人形オフトという女から生まれた、胎児の時から改造を施された存在。

二人が共に整った顔立ちなのは、そのオフトが元々どこぞの国のお姫様だったからだ。

彼女は敗戦国の王族として帝国に連れ去られ、魔導人形にされた。

しかも、始めから魔導人形を生み出す為の母体として。

後にエンシアを産み落とし、次のデカは、、、魔物と交わらされた果てに産まれた。

その結果、母体であるオフトは精神が崩壊し、最後は実験体として切り刻まれた。

姉のエンシアは後に皇帝の近衛として仕え、弟のデカは、、、外見は普通の人の様ではあるけれど、中身は獣そのものである為、普段はどこぞに隔離され、必要に応じて出される。

但し、デカはさらに問題があるらしく、、、

「オ、、、ネエ、チャ」

「大丈夫よ、、、だから、、、お願い」

互いに依存し合っている。

しかも、弟に至っては姉にしか制御出来ないらしく、二人は必ず組で使われる。

そして、それは別の意味で姉の方にも当て嵌まる。

「ガアアアアアア!」

「あっ、、、あああああああああ!」

デカが、エンシアの傷口に顔を突っ込む。

苦悶とも、嬌声とも聞こえる声を上げるエンシアだけど、その表情は恍惚に染まり。

「噓でしょ、、、」

極め付けは、デカが口を付けた傷口が、見る見るうちに塞がっていったのだ。

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