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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第四章 ウルギス帝国狂乱譚
162/362

162 混迷

あまりにも唐突だった。

油断したつもりは無いし、気を抜いてもいなかった。

だけど、そいつは音も無く忍び寄り、カイルを強化した直後の私に後ろから飛び掛かり、地面へと押し倒した。

一瞬にして両手を頭の上で固定され、足も膝で押さえ付けられている。

「ぐっ、いきなり何するのよ!って!?」

謎の襲撃者を睨みつけて、その姿に言葉が詰まる。


そいつは、まぁ何はともあれ男だった。

鍛え上げらた体に、顔立ちも悪くは無い。

ただし、その眼は血走り、焦点も明らかに合っていない。

半開きの口からは舌と唾液が垂れていて、特にその雫は私の顔に落ちてくるしで最悪だ。

だけど、そんな物が全部吹き飛んでしまうものが。

「オ、、、セイ、ジョ、、、オカ、、、」

だらしなく開いた口から呻き声が零れる。

それに呼応するように、()()姿()の男の、嫌でも視界に映りこんでくる局部のモノが膨れ上がる。

「ちょっ、何こんな時に盛ってるのよ!」

蹴り上げるなりしてやろうにも、手も足も押さえ付けらていて身動ぎしかできない。

というか、実物何て当然見た事は無いけれど、あんなに大きくなるのだろうか。

どう見ても私の腕よりも太く、、、

「って!いいからどきなさい!」

抑えられた手に魔力を集めて無理矢理魔法を放つ。

放たれた電撃で変態男の手が緩み、その隙に手を引き抜いて目の前の顔に翳す。

「失せろ!」

「グウウウウウウウ!」

小さな爆発を起こして奴の顔を吹き飛ばし、転げながら奴の下から抜け出す。

その音でようやく周りの連中も新たな闖入者に気付いて私に駆け寄る。

「大丈夫ですか!?」

「ええ、でもあの変態野郎、魔導人形よ。気を付けなさい」

私を護る様に数人が立ちはだかり、奴と対峙する。

そう、奴の目的が何であれ、魔導人形であるのは間違いない。

その証拠に、燃やした顔は既に再生し、

「オオオオオオ!セイジョオオオオオオオカカカカカスウウウウウウウウウ!!!!」

バラバラに蠢いていた目が私を捉え、咆哮と共に飛び出す。

それを迎え撃とうとした抵抗軍達が奴の振り回す腕に、まるで紙切れの様に吹き飛ばされていく。

奴の視界には、私しか映っていない。

その証拠に、次々立ちはだかる抵抗軍の連中など道端の石ころの如く蹴散らされ、ひたすら私へと向かって来ている。

「ああもう、フィルニスの奴!まだ隠し玉があるっての!?」

少し離れた所ではカイルが肉塊と化した母と死闘を繰り広げている。

そちらの援護もしたいけど、コイツからも目を離す訳にはいかない。

「アンタ達はカイルの援護に!コイツは私が狙いよ!」

とにかく、これ以上の混乱が起きない様に奴をここから引き離すべく、一気に駆け出して、奴諸共この場を離脱していく。


カイル達が戦っている地点から離れた場所、街からより遠ざかる形で全裸の魔導人形を誘導した私は頃合いを見計らって足を止め、振り返ると同時に黒炎から鎌を呼び出す。

「すぐに終わらせる!」

猛追してきた奴目掛けて斜めに振り下ろし、

「オアアアアアアア!!!」

その刃を、奴は左腕で受け止める。

刃は腕を貫通して、だけど半分にも至らない内に止まってしまう。

「コイツ!テーセリスと似た様な造りか!」

その左腕が、先ほどの倍以上にまで膨れ上がっていた。

筋肉が爆発的に膨れ上がり、刃を挟んでいるのだろう。

空中で動きの止まった私目掛けて右手を伸ばす奴より速く、その体を蹴り距離を離す。

同時に鎌を一度消して、着地と同時にもう一度呼び出す。

だけど、奴も奴で空振った右手を引き戻しながら駆け出し、距離を詰めてくる。

「ワタシワアアアアアア!!!オオオオオオガガガガガ!!!」

舌を振り回し、唾液を飛び散らせ続ける口からもはや人の言葉とは思えない叫びを上げながらも、あれだけ焦点の合っていなかった目は、今やハッキリと私を捉え続けている。

その視線に混じるのは、、、

「どうしてあのクソ皇帝の気配が混ざってるのかしらね!」

私を、色んな意味で求める皇帝ゼイオス。

奴のあのギラついた、欲望を隠そうともしない視線と、コイツのそれは余りにも似て感じる。

いや、寧ろその欲望だけを増幅した、より直接的な物すら遠慮なくぶつけてきている。

さっきからアイツが漏らす呻きがその証拠だ。

これは予測ではあるけれど、フィルニスの独断だろう。

ゼイオスが絡んでいるなら、恐らくはこんな風には作らない。

奴の欲望は私の全てを奪い支配する事。

であれば、魔導人形如きに私を犯させるなんて真似はしないだろう。

そういう意味では、奴は信用できる。

或いは、フィルニスすらも予測していなかった事が起きているのか、、、

どちらにしろ、早い所コイツを斃してカイル達の方に戻らないと。

それに、何よりも苛つくのは、

「その汚い物をしまえってのよ!」

猛々しくそそり立つ男の象徴。

当然、奴が動き回るたびに丸出しのそれも暴れ狂い、私に当たりそうになるのだ。

さっきから、そこを意の一番に切り落とそうとしているんだけど、本能が為せる技なのか、巧みに腰を捻って躱すのだ。

元の身体能力の高さと、恐らくは何処かしらの騎士だったのかもしれないその鍛え上げられた体と身のこなしが、全て私の不快感を煽る為に機能しているという、ふざけた状況を作り出していた。

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