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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価530&120000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第四章 ウルギス帝国狂乱譚

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155 聖痕の謎、己の謎

その光景に、そして自分の身に起きた事に理解が追いつかず立ち尽くす。

「私がやった、、、のよね」

自分の体に残る魔法を行使した手応えを確かめて、それでもそれを信じる事が出来ない。

確かに、あの光景に怒りを覚えはした。

だけど、ここまでする気なんて、、、

「あれ、、、?そうだっけ、、、?」

どうにも、西大陸に来てから自分の考えが纏まらない事がある。

今もこうして、何だか分からないままぼんやりと大穴を見つめていて。

「違う、、、幾ら何でもおかしい、、、」

薄らいでいく思考を無理矢理引き戻して、意識を自身の内に向ける。

(一体何が起きているの?まるで私の中に私じゃない何かが居るみたいな、、、)

そんな有り得ない考えまでが浮かび、だけど、ふとある事を思い出す。

「、、、まさか、そんな事があり得るの?でも、彼女なら不可能じゃない?」


人の体には必ず一つの魂が存在する。

いえ、人に限らず生きとし生けるもの全てがそうだ。

例外など存在しない、、、普通なら。

だけど、私は残念ながら普通ではない。

特に過去、魔王として暴れていた頃はやりたい放題だった。

そして、その時代で最後の最後にした事は何だったか。


「、、、まさか、まだ私の中で存在しているの、、、グレイス・ユールーン」


そう、かつて魔王の私と対峙した英雄一行。

その中で、聖女と呼ばれ、最後は私に操られた挙句魂ごと聖痕を奪われた彼女。

そう、本来ならあり得ないはずである、魂の移動。

フィルニスの魔導人形が魂にまで手を伸ばしているかは定かじゃない。

だけど、私は確実にグレイスの魂を喰らった。

彼女の魂と聖痕は完全に融合していた。

元よりどちらも奪うつもりではあったけれど、結論としてはどうにもならない状態だったのも確か。


とっくに消え失せたと思っていたけど、もしも彼女が未だに私の中で存在しているとしたら。

時々意識が飛んだり、自分の物とは思えない考えが浮かんだりするのも、こうして意識して考えてみると、まさに別の誰かが居るみたいだ。

「そう、、、まぁ、許してもらえるとは思って無いし、そんな気も無いわ。でも、流石に主導権までくれてやる気はないわよ」

かつては彼女の物だった、背中の聖痕に語り掛ける様に魔力を流す。

どんな経緯があろうと、今は私の物。

歯向かう事なんて許すわけにはいかない。

改めて聖痕が馴染んでいく感覚が広がり、心が落ち着いていく。

「、、、ふぅ」

一頻りそうした後、もう一度大穴を見つめる。

「、、、うん、もう大丈夫」

その惨状を見ても、もう動揺は無い。

理由はどうあれ、彼等は人としての在り方を捨てた。

なら、こんな結末を迎える事も覚悟の上だろう。

或いは、フィルニスの非道によりそうなってしまったのだとしたら、ある意味これも救済ではある。

そう結論付けて、今度こそ向かうべき場所へと歩き出す。


フィルニスは帝都に居る。

エフタを通じて私とやり取りしていた彼女は勘付けなかった様だけど、今回ようやく魔力の流れを捉えられた。

どうにも、地下都市でのアレコレから聖痕の力がより一層深化したように感じる。

力が漲るというか、魔力の流れがより鮮明に捉えられるようになった気がする。

気が付くと身体強化も掛かっているし、足取りも軽やかに、景色が飛ぶように後方へと流れていく。

いや、本当にいつ魔法を使ったのか自分でも分からない。

ほぼ無意識での出来事に戸惑いつつも、透明な思考に気分が高揚する。

(これが聖痕の本来の使い方?なんか違うわね、、、)

そんな中で、どうしても拭えない疑問も出てくる。

これでも、世界の誰よりも聖痕との付き合いは長い。

一人例外は居たけど、既にこの世には居ないしあれもまた特殊な事例だから、無視するとして。

それでも、こうして未だにその力は計り知れない。

或いは、私が知ったつもりでいる事もほんの表層に過ぎないのかもしれない。

グレイスの魂が今も私の、聖痕の中にあるのも、その真の力の一端なのだろうか。

もしそうなのだとしたら、彼女は私よりも聖痕を理解し、使いこなしていた事になる。

「それはなんか悔しいわね」

別に負けず嫌いなんて言わないけど、あんな最後を迎えた彼女が私より上何て言うのは少々、、、いや、かなり気に食わない。

「それでも、こうして転生出来ている分、私の方がもう上よ。貴女はそこで悔しがってなさい」

子供染みた負け惜しみを吐き棄てて、更に足を速める。


遠く、帝都の影が霞んで見え始めた頃。

南の要塞都市から半日と掛からずにここまで来たことに自分でも驚き半分呆れ半分な気持ちになりつつ、いい加減少し休もうと速度を緩める。

「まるで疲れてない。本当にどうなっているのかしらね」

息一つ切れてない自身を見回す。

走り続けた足もまだまだ行けそうだし、

「GAAAAAAAAAAAA!!!!!」

「アンタとの決着ももういい加減着けたいわね」

頭上から、右手を振り下ろしながら飛来してきたテーセリスを左手で受け止める。

信じられない光景にテーセリスすら驚きの顔になっている。

恐らくは、その先で見ているであろうフィルニスも。

そして、それを証明する様に何処からか奴の声が鳴り響く。

『四号!とにかく時間を稼ぎなさい!総員、準備は出来てる!?』

テーセリスが飛び退って態勢を整えると同時に、その背後に霞む帝都が鳴動する。

『全システム、リンク!魔導具起動、発進シークエンスは省略、インペラトリア緊急離陸!』

焦りと期待の籠った声が響き渡り、大地が揺れる。

再び交錯する私とテーセリスの遥か先、天高く聳える帝都の街並みがゆっくりと()()()()()()()()

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