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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第四章 ウルギス帝国狂乱譚
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153 魔導人形の誘い

魔導人形、エフタの案内で街の外へと向かった。

「まさか地下への入り口が街の外にあるなんて、考えた奴は馬鹿なの?」

呆れた様な私の言葉にもエフタは反応なし。

街の中からここまで、こうして嫌味をたっぷりと言い続けているのだけど、まぁやはりというか反応は無い。

見た目は本当にゼイオスと瓜二つだけど、本人とは違ってその表情は常に無のまま。

ある意味では助かるけど、どうにも変な感じもして落ち着かない。

何とも言えないモヤモヤを抱きつつ、それでもわざわざ迎えに来たという事は、いよいよ姿を現す気になったという事なのだろうか。

「、、、ま、あり得ないわね」

ようやく見え始めた小さな小屋に目を向け、その先に待ち受けるものに意識を向ける。


エフタに案内された先、街から少し離れた所に不自然に建てられた一つの小屋。

その中には、金網で囲われた檻の様な箱が置かれているだけだった。

「これに私を閉じ込めるつもり?」

「階層移動魔導具。転移魔導具とは異なり、この箱が物理的に上下する乗り物の様な物だ」

ようやく答えたと思ったら、ただ淡々と説明するだけで、そのまま先にその箱へと乗り込む。

言っている意味は分からないけれど、これもフィルニスの創り出した物なのだろう。

とりあえず、エフタが先に乗って私を待っている以上、危険は無い、、、と思って警戒だけは続ける。

私が箱に乗ると、慣れた手付きでエフタは入口部分の端に畳まれていた扉の様な物を締め、壁の魔導具らしきものを操作する。

すると、何か唸る様な音がしたと同時に乗り込んだ箱が揺れ、下へと下がり始めた。

「これは便利ね。世界中の城に付ければ有難がられるわよ?」

「博士はそういった物に興味が無い」

「なら何の為に魔導具やらアンタ達やらを造っている訳?」

どうやら私の問いは触れてはいけない部分だったようだ、ようやく会話が成立したかと思ったら、また黙り込んでしまった。


それからしばらくの間は沈黙が続き、ただ魔導具の唸る音だけが響いていた。

地下へと向かっているせいで周りはずっと壁が続き、体感ではかなりの時間下り続けている様に思えるけど、中々到着しない。

箱の中はそこそこの広さがあるし、エフタとはそれなりに距離を取って立っているけど、こうもやる事が無いとその無防備な背中に一撃を入れたくなってくる。

「それはやめた方が良い」

「人の考えを読まないでくれる?それとも聖痕もまともに制御できないの?」

聖痕があるとこういう事があるから面倒だ。

でもお陰で少し気も晴れた。

何て事をして遊んでいたら、ようやく視界が開け、

「、、、信じられない光景ね」

そこには、凡そ地下とは思えない光景が広がっていた。


まるで昼間の様な明るさに、豊かな緑。

立ち並ぶ建物は家主の性格や趣味が存分に現れているし、商業施設らしき大きな建物や、天井へと延びる円筒状の物は地上で見た物の根元部分だろう。

それに、ここから見ても分かる人々。

「もしかして、首都に居た人達?」

「その通り。博士曰く、ここはシェルターと呼ばれる物だ」

「シェルター?なんでわざわざ地下に?」

「詳しくは我らも知らぬ。だが、博士は何かを警戒されている。そしてそれは空からやってくる、とも」

「ここもそれに備えて?確か、地上の要塞にあった砲台も何故か空に向けられていたわね」

ここに至って、唐突に新たな謎が浮かび上がった。

私ですら知り得ない何かをフィルニスは知っているらしく、しかもそれに備えているらしい。

ただ、どう考えてもこれだけの物を数年で作れるとは思えない。

あの女は一体いつから生きているのか、、、前に聞いた言葉もあるし、あいつ自身にも大きな秘密があるのはこれで確定したようだ。

そして、今の話からすると、こここそがこの国の現在の中枢なのかもしれない。

なら、本当にフィルニスも、そしてゼイオスも待ち構えているかもしれない。

「先に言っておくが、、、」

「ああ、もういいわ。その反応で分かったから。なら、なんで私をここに連れて来たわけ?」

どうやらまだ私とは会いたくはないらしい。

では、こいつの目的は一体何なのだろうか。

「ついてこい。博士と陛下からの贈り物がある」

「はぁ?要らないわよそんなの」

私の抗議の声を無視して、エフタは到着した魔導具から降りて歩き出した。

「はぁ、何なのよ全く」

その背に肩を竦めてみせ、仕方なく後を追う。


この街の中心となる建物へと辿り着いた私を出迎えたのは、ズラリと並んだ人々、、、ではなく。

「これは、、、」

謎の装置と、その中に入っている人影だった。

「ここは魔導人形の生産工場。あくまでも量産品だがな」

「自分たちは違うと?」

「これらには疑似聖痕が無い。あれこそは博士が手ずからの調整で無いと造り出せぬ物だからな」

それはまぁそうだろう。

そう簡単に疑似聖痕が作れるならとっくにそうなっている。

そんな事を考えながら辺り一面、どころか壁や天井に至るまで設えられた魔導人形の入った装置を見回してみて、気付いてしまった。

「、、、フィルニス、これが贈り物ってワケ?いい度胸してるじゃない」

側にある装置に近づいて、その中身を指差しながらエフタ、そしてその眼の先で見ているであろうフィルニスに声を荒げる。

「装置の中身、全員()()じゃない!」

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