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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第四章 ウルギス帝国狂乱譚
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152 鋼の要塞

城塞都市の周囲こそ物々しい雰囲気だったけど、意外というか、中にはあっさりと入る事が出来た。

門には人影一つ無くどうしたものかと思っていたけど、近付いてみると勝手に開いて私を中へと迎え入れた。

私の背丈の倍以上の大きさの門が、音も無く開いていく様は何処か獲物に喰らい付く獣の様にも思えて身構えたけど、その先にはただ道が伸びているだけでやはり待ち構える者すら居なかった。

一応は敵地だし、恐らくはフィルニスの策も張られているだろうから警戒は緩めない。

現に、こうして街の中へと足を踏み入れたにも拘らず、私を取り囲む奴らが現れ、、、

「ていうか、誰も居ないじゃない」

どころか、予想に反して出迎えの帝国兵も、街の住人も居ない。

更に言うと、立ち並ぶ建物も家とか店とか、そういった生活感のある物が何一つ無い。

全てが同じような形のした、例えるならお店に並ぶ大量生産品のような印象を覚える光景だ。

それが何を意味するのかはまだ分からない。

けれど、これまでの事を考えれば間違いなく良いものではないだろう。

不気味を通り越して、いっそ清々しくすら思える程の静寂に警戒をしつつ建物の隙間を縫うような道を進み始めた。


それから暫くの間街の中を探索したのだけど、結果としては本当に誰も居ない。

そして、風景もまるで変わり映えがしない。

どこまでも続く全く同じ形の建物に、極僅かなズレも許さないかのように張り巡らされた道。

普通、どんな街でも住宅地区や商業地区、後は土地毎の特色を表すような物があるのに、この街はとにかくそういった物が排除されている。

そう、排除されている、という表現が相応しい程に、生活感どころか、人が生きる為の物全てを排した構造なのだ。

街の規模としては新興都市と同じ位で、それなら当然そこと同じだけの人が住んでいるはずだし、そもそもこの街を作る為にも人手は居るはず。

「住人が居なくなった?それも全員?」

建物の上から周囲を見回しながら呟いてみるけど、すぐにあり得ないと自分で否定する。

確かに、帝都も人が居なくなっていたけれど、あそこはちゃんと人の痕跡が残っていたし、街の構造も至って普通だった。

それと比べると、とにかくこの街の異質さが際立つ。


結局、陽が沈むまで街を見て回ったけど、収穫はなし。

これ以上は時間の無駄だと判断して、とりあえず手近な建物の中で夜を明かす事にした。

無機質ではあるけど、一応は人が住む事を想定しては居るのか、ちゃんと中に入れるし、最低限の設備も整ってはいた、、、使われた形跡はやっぱりないけれど。

適当に食事と、あとは水も使える事が分かったから体も拭いておく。

流石に一日中歩き回って汗も搔いてるしね。

そうして一通り身支度も整えて、体を横にする。

残念ながら布団は無かったから、固い床の上での雑魚寝だけど、そこまでの贅沢は言えない。

幸いと言うか、何故か室内は暖かいから風邪をひく事は無いだろうけども、、、

「、、、なんでこんなに暖かい?」

ふと、自分の考えに違和感を覚える。

寝そべったまま、床に手を触れさせる。

その手が、何故かじんわりと温まってくる。

「、、、地下?」

昼間、街を見て回った時は特に地下への入り口は見当たらなかった。

だけど、この異常な暖かさは地下から齎されていると考えるのが自然な気がする。


家を飛び出た私は夜闇の中、街をまた歩き回っている。

こうして陽射しの暖かさが無くなったから確かに感じる、足下から伝わる熱がある。

しかも、少なくともどこを歩いても同じ位にはその熱を感じる。

間違いなく、これは人工的な物だ。

なら、必ず何処かに入り口がある。

或いは、この無数にある建物の中にそれがある可能性も、、、

「、、、流石に全部吹き飛ばすのはね、、、何があるかも分からないし」

一瞬だけ浮かんだ考えを即座に否定して、面倒ではあるけれど建物を一つづつ調べる事にする。

一応、左目の聖痕に軽く魔力を流して視てみるけど、対策でもされているのかほぼ分からず仕舞い。

無理矢理でなら何とかなるだろうけど、その場合別の厄介事が飛んでくるのは目に見えている。

悠長に探す暇は無いけれど、慌てて墓穴も掘りたくはない。

フィルニスのニヤケ顔を想像の中でぶん殴りつつ、地下の入り口を探して建物を調べ始めた。


「入口なんてないじゃない!どうなってるのよ!」

で、この様だ。

手当たり次第に建物の中を見て回ったけど、本当に変わり映えが無い。

どの建物の中も全く同じ構造で、隠し扉すらも無い。

試しに一軒の壁や床を壊してみたけど、残念ながら何も無かった、、、イラついたから壊した訳ではないわよ。

そうしてまた街の中心へと戻り、いよいよ手当たり次第に壊して回るか、と考え始めてしまった時だった。

「、、、お迎えって事かしら」

「探し出すのに苦労したぞ、聖女よ」

私の背後に人の気配。

魔力の揺らぎを感じたから魔導具による転移だろう、そして現れたのは。

「、、、ゼイオス、、、じゃあ無いわね?」

「無論だ、俺は魔導人形エフタ。博士の命によりお前を迎えに来た」

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