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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第四章 ウルギス帝国狂乱譚
150/362

150 新たな局面へ

撤退する抵抗軍とは街を出て少しした辺りで合流した。

負傷者が多いのと、後から合流したカイル率いる隊もそれなりの規模だった事もあり、なかなか行軍速度が上がらなかったようだ。

正直、私も色々と疲れてはいるからあまり力を使いたくはなかったのだけど、カイルが余りにもしつこく頼み込んでくるものだから、仕方無く回復魔法を掛けたりと、色々手伝いをさせられた。

まぁ、そのお陰か色々と気を利かせて貰ったりしたから良いのだけど。

あと、カイルは無駄に爽やかな笑みを私に向けていたけど、まだ諦めていないのだろうか。

ある意味、コイツのお陰で厄介事に巻き込まれた所もある気がするけど、、、


それで、結局の所、今回の作戦は失敗と見ていいだろう。

何せ、救出目標だった人物が敵に寝返っていた上に、それ以外にも潜り込んでいた奴によって抵抗軍の戦力の多くが今ここに集まってしまっている。

もしも追撃の手が掛かれば、そしてそこに魔導人形が含まれていたりすれば更なる打撃を受ける事になるのは必至だ。

私の魔法で今ここに居る連中はほぼ戦力になるまでは回復しているけれど、一人だけ、どうにもならなかった者が居る。

「クィレルシュカの状態は?」

「残念ですが、、、」

「そう、、、まぁ、無理も無いわよね」

カイルと二人、女中達に面倒を見られている彼女を天幕の入り口から見つめる。。

数時間前、姉を助けると意気込んでいた勇ましいお姫様、それが今や、感情を失い、虚ろな目で虚空を見つめる抜け殻と成り果ててしまっていた。

体に傷は無い、だけど、心の方は粉々に砕けてしまった。

父の首を見せつけられ、姉に完膚なきまでに裏切られ、その姉も死んでしまった。

唯一人残されたレーベインの王族は、事実上死を迎えたに等しい。

流石の私も、形の無い物をどうにかする事は出来ない。

或いは、奇跡でも起きて彼女が再起する可能性も無くはないけれど、果たしてどうなるかは誰にも分からない。

そっとその場を離れると、後を追う様にカイルも続いた。


その後も、何度か休憩を取りながら彼等はレーベイン王国が隠れていた森へと戻ってきた。

結局、私もカイルや他の人達からの頼みでここまで付いてきたのだけど、正直、特にやる事も無いから暇である。

いや、他の人達は色々と忙しなく動き回っているのだけれど、先の作戦に於ける私の功績はある程度知られているらしく、私も休む様にと気を使われてしまったのだ。

まぁ、それを言うなら合流した時のカイルのアレを止めて欲しかったのだけどもね、、、

とまぁ、そんなこんなで私は一人天幕で休んでいる。

しかも、有難い事に風呂にまで入らせてもらっている。

最初は何人か人を付ける話まで出ていたけど、流石にそれは遠慮、というか固辞させてもらった。

いい加減、一人でゆっくりしたいし、何よりも、色々と考えを纏めたい。


何はともあれ、これで魔導人形は三体倒れた。

これで残りはあと三体、、、少なくとも。

あの女の事だ、まだ姿を見せていない魔導人形が居てもおかしくない、というか、確実に居るだろう。

それに、フィルニスの目的もようやくハッキリとした。

これに関しては私の落ち度でもあるし、あの女の知識や技術が想像以上の物だった事もある。

そしてそれ以上に厄介な事も判明した。

理由や経緯はどうあれ、アイツは私を魔王だと断定している。

そして、その力を研究しようともしている。

今はまだ何とか誤魔化せている、、、と、思いたいけれど、どちらにしろ今まで以上に力を見せない様にしないといけないだろう。

或いは、逆に全力を出してさっさとフィルニスも皇帝も倒してしまうか、、、

「それは危険な気がする、、、どう考えてもそれが狙いだろうしね」

自分で自分の考えを否定する。

ゼイオスもそうだけど、奴以上にフィルニスの存在が異様過ぎる。

常に二手も三手も先を見ている様な動き。

結局、あの新興都市にも姿は無く、何処に潜んでいるのか依然として知れない。

にも拘わらず、私の動きだけでなく、抵抗軍の動向すら把握して弄んでいる節さえある。

攻めるにしても、奴の手の内を確実に知る必要がある。

その為にも奴の居所を早急に掴みたいのだけど、、、

「ああもう、堂々巡りね全く」

これ以上はのぼせてしまうと勢いよく浴槽から立ち上がり、身支度を整えて用意されている天幕に戻る。

次にどう動くにしても、まずは体を休めたい。

せっかく用意された寝床だ、今はまずそれを堪能するとしよう。


翌日、ようやく集落の中も落ち着きを取り戻し、私もしっかりと休みを取れたお陰で色々と気分が良い。

「おはようございます、リターニア様」

相変わらず疲れの色を見せないカイルが笑みを浮かべながら、まるで見計らったように声を掛けてきた。

「まだ居たのね。北の方は良いの?」

「ええ、レーベインは指導者を失ってしまいました。これを放置する訳にはいきませんからね」

困り顔も様になるカイルの背後では、彼が連れて来た部隊が荷物を纏めていた。

それはつまり、

「一人で残るのね。向こうは、、、ローダンが居るわね」

「ええ、既に連絡は入れています。それで、貴女はこの後どうされるので?」

何処か期待の籠った彼の視線に、私は薄っすらと笑み浮かべてあげた。

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