表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第四章 ウルギス帝国狂乱譚
149/362

149 望むもの

フィルニスの言葉に私は目を細める。

確かに、今さっき見せた力は聖痕一つだけの物だし、そういう意味で言えば私の力の全てではない。

だけど、この女の言葉にはまた別の意味が込められている様に聞こえる。


私だけが持つ複数の聖痕。

そしてそれを同時に扱ってみせる事。

この女はそれを知りたがっている。


じゃあ、()()()()()を見たいのか。


二つまでは何度となく人前で見せているから知られているのは当然だ。

だけど、フィルニスは明らかにそれ以上を望んでいる。

それはつまり、私が二つ以上の聖痕を持っている事を知っているという事で、、、

「、、、何が言いたいわけ?」

ここはあえて惚けてみる。

奴の思惑を図りたいのもあるけど、それ以上にこちらから秘密を明かす選択肢何て無い。

『ふーむ、これは一体どちら何ですかねぇ。本当に使えないのか、或いは、、、』

一度言葉を切った後、紙を捲る様な雑音が聞こえる。

『ああ、これこれ。イングズで最後に辛うじて観測できた魔力波形はですねぇ、セイジョサマ?』

「、、、」

『何と、あの場では合計六個の聖痕があったと示しているんですよ!おかしいですよねぇ~、あの場には二人の人物しか居なかったのに、その上希少な聖痕が六個ですよ、六個!』

フィルニスの言葉に、私は動揺と同時にまた新たに一つの事実を理解した。

「イングズで戦ったゼイオスは魔導人形ね?」

『あ~、流石に気付かれちゃいますかねぇ。ええ、その通り。なので、あの日貴女が見せた物はある程度は把握出来ているのです。だからこそ、最後の最後だけが解せないんですよ。観測できたのはほんの一瞬、それもあまりに不鮮明。最初は装置の故障を疑いはしましたけど、でもそれ以外は全てこちらに来てから観測した物と一致』

何かが琴線に触れたのか、段々と饒舌に語り始めるフィルニスだけど、何度か聞いたのとはどこか違う熱が籠っているように聞こえる。

それを証明する様に、私が口を挟む間すら与えずに更に語り続ける。

『正直ですね、陛下とは違って私は貴女には大した興味は無かったんですよ。聖痕持ちなら良い材料になるなぁ~、程度でしたよ。ですがね、あの日イングズで見せた謎の反応!それを見た瞬間、ビビッと来ちゃったんですよぅ!』

一息に捲し立てたせいか、何度か息を深く吸う音が聞こえる。

その異様な興奮に、私は何処か居心地の悪さの様な物を感じる。

いや、寧ろこの場にあの女が居ないのに、ネットリと絡みつく様な視線すら感じる。


そして、、、その予感は当たりだった。





『リターニア・グレイス、聖痕の聖女サマ、、、貴女、、、魔王ですかぁ?』






奴が得た事実から、何故その答えに至るのか。

転生する前の私は確かに四つの聖痕を以って世界に牙を向いた。

だけど、それを知る者など既に居ないし、今世に於いても精々フェオールの一部の連中だけで、あの場に限っては帝国も感知出来てはいない。

いや、更にそもそもを言うなら、()()()()()が魔王に繋がるなどあり得ない。

あれは最後の最後に私がグレイスから奪ったのだ。

そして、その事を知り得ているのは外法を用いて生き永らえていたアルジェンナだけ。

なら、この女は何故五つの聖痕と魔王を繋げられたのか。

「いよいよ気でも触れたの?魔王は倒されたってフェオールも公表してたでしょ?」

『そう!それなんですよ!』

私の反論に、まだ上があるのかという程に声を上ずらせるフィルニス。

『断言しましょう、魔王は倒されてなどいませんよ。私の観測に間違いはありません!寧ろ、時々同じような魔力の波動を拾ってるんです、イングズでもそうでした!分かりますか!?』

頻りに何かを叩く様な音を立てて、いよいよフィルニスの興奮は最高潮に至る。

逆に、私は身も心も冷え切っていく感覚を覚えている。

「お前は危険な存在ね、、、招いて正解だったわ」

『貴女の行く先々に魔王の反応が出るんです!その裏付けがイングズでの五つの聖痕の反応!()()()()()()()()()()()()()()()()()がすぐそこにある!その時から、私も陛下と同じ、いや!陛下以上に貴女に興味を抱いているのです!』

私の呟きはフィルニスの、まるで愛を囁く乙女の様な言葉に掻き消された。

いや、それよりも。

「かつて、、、?」

私が気になったのはその一言だ。

それではまるで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。

『いやぁ、この世界には神様は居ないって言いますけど、ここまで来ると何処かに隠れてるんじゃないかって思いますよぉホント!私がこの世界に居る事だってそうなんですから!』

何やら一人の世界に入り込んでしまったフィルニスを無視して、私は魔導具を操作して通信を終わらせる。

魔導車を降りて、またざわつき始めた夜の街を歩く。

情勢としては抵抗軍の撤退はほぼ終わっているようで、帝国軍側もそれなりの損害が出ているようではある。

それと、テーセリスは既に撤退しているのか、気配を感じない。

なら、私がここに留まる理由も無い。

フィルニスとのやり取りでも幾つか得られた事がある。

唯一人、私は心が浮き立つのを感じて堪え切れずに笑みを浮かべていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ