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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第四章 ウルギス帝国狂乱譚
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146 魔導人形・双千里のペンデ&エークシ 3

何度か打ち合って気付いた事がある。

まるで私の行動を予見しているかのような回避と反撃。

屋敷でペンデとエークシを相手にしていた時の、あの二人の連携の感じにどことなく似ている様に思える。

勿論、今はテーセリスしかいない。

けれど、私が動くよりも先に、いや、私が動いた時には既にテーセリスは回避をほぼ済ませていると言ってもいい程に私の動きが読まれている。

これがもし、ペンデとエークシを相手にしている状況なら私も気付けずにいただろうし、連中もそう踏んでいるのだろう。

だけど、テーセリスとも既に何度も戦ってきている。

その動きも大体把握出来ているし、彼女が持つ聖痕をどう使っているかも粗方見抜いている。


そう、テーセリスは今、()()()使()()()()()()

これまで戦ってきた時は必ず彼女は自身の聖痕を使っていた。

それは単純に魔力を増強させる為の物で、聖痕本来の力など微塵も使ってきてはいなかった。

それでも彼女の魔導人形としての能力に大いに作用していたから、私でも手を焼く程に暴れていたのだ。

勿論、それは今でも変わりはしない。

だけど、この状況においてそこは重要じゃない。

実はテーセリスが聖痕の力を使いこなせる、なんて事があればまだしも、そもそも疑似聖痕にはそこまでの能力は無い。

では、彼女の異常なまでの先見は何故か。

答えは簡単。

「さぁ、これならどうする!」

テーセリスと交錯し、背後に抜けると同時に空へと一つの魔法を放つ。

それは漆黒の夜空へと舞い上がり、次の瞬間、強烈な閃光を撒き散らした。

その光を防ぐことが出来たのは私だけ。

目の前のテーセリスですら流石に目を覆い、苦悶の声を上げている。

その無防備な体に駆け寄り、頭目掛けて大剣を振り下ろし、

「GUUUUUGAAAAAAAA!!!」

それは咆哮と同時に突き出された左手に阻まれた。

それも、テーセリスはまだ右手で目を覆ったままで。

「やっぱりね」

だけど、それに驚きはしないし、寧ろ予想通りの展開ですらある。

掴まれた大剣を消失させると、突然手応えが消えて戸惑いを見せるテーセリスを無視してある場所目掛けて走り出す。

「ようやく見つけたわよ」

見据えた視線の先、そこに潜みこちらを盗み見ているであろう奴へ向けて呟き、笑みを浮かべてみせる。


テーセリスと交戦した地点から南へと進んだ先。

辿り着いたのはまさかというか、予想通りというか、フェデルシュカの住んでいた屋敷だった。

そもそも、私がここへと来た理由はさっきの一連の行動で一つの確信を得たからである。

まず、テーセリスの先読みに関してだけど、あれは言うまでも無くペンデかエークシの能力によるものだろう。

正直、この能力はかなり聖痕が持つ力に近い。

いや、ついさっき疑似聖痕に本来の力は無いと言っておきながら何を、と自分でも思うけれど、聖痕()()の力はそもそも人の手が届く領域の物ではない。

そういう意味では、何人たりとて聖痕を模倣するなど出来ない。

疑似聖痕に関しても、特に今も戦ってたテーセリスや、その前に倒したディオも聖痕の表面上の力すら使わずにいた。

それもあって私も今の今まで疑似聖痕には魔力を増幅させる力しかないと思い込んでいた。

だけど、さっきの戦闘でそれは間違いだと気付いた。

いや、少なくともテーセリスとディオに関しては私の考えは合っているだろう。

だけど、ペンデとエークシは違う。

それこそもっと早くに気付くべきだったのに、今の状況に至るまで失念していたのは正直痛い所ではある。


つまり、あの二人は聖痕の、表面上とはいえそれが持つ本来の特性を引き出せている。

私の左目と対を成す遠見の聖痕。

如何なる物理的、魔術的障害を無視し全てを見通す魔の眼。

ペンデもエークシも、私の見立て通り諜報を担ってはいた。

但し、それは聖痕の力を利用したものだった。

だから、あの二人の気配は無いのに視線だけは感じていた。

それも、相当な距離が離れていたせいで聖痕の力を感じ取れなかった、、、いや、そこには多分まだ何かしらの絡繰りがあるだろう。

ともあれ、ペンデとエークシはそうして私の動きを遠くから観察し、それをテーセリスに伝達していたのだろう。

加えて、私の操る魔力の流れをも捉え、どう動くかまでもかなりの精度で予見をしているのだと思う。

それがテーセリスの行動の真実。

そしてそれがある限り、恐らくテーセリスには一撃すら当てられない。

なら、まずは目を潰してしてしまえばいい。

さっきの閃光の様にではなく、二度と動けない様にする。

寧ろ、あの光は奴らの居場所を炙り出す為の物で、だからこそここへと舞い戻ってきた。

種が分かれば対処など幾らでも出来る。


屋敷の門を潜り、前庭を抜けて玄関を抜ける。

クィレルシュカ達は既に救出されているのか、二つの気配以外誰も居ない。

静寂の中、階段を登り、広間を無視して更に上階へと向かう。

恐らく奴らは最上階、それも屋上に居る。

そして、そこで一つの決着がつく事になる。

膨れ上がる魔力を全身で感じながら、私もそれに応じる様に魔力を高める。

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