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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第四章 ウルギス帝国狂乱譚
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145 魔導人形・双千里のペンデ&エークシ 2

瓦礫を乗り越えながら魔導車が街の中心へと突き進む。

流石にその速さには付いて来れないのだろう、テーセリスの気配はかなり遠くに離れた。

だけど、ここは既に敵地な上に、奴らはここで確実に私を捕まえるつもりなのだろう。

なら、どの道時間は殆ど無い。

「で、アンタはここで何をしているの?」

魔導車を操作するカイルの隣に座り、軽く睨みながら問い掛ける。

そんな私に申し訳なさそうに苦笑いを浮かべてカイルは口を開いた。

「いえ、実はですね。貴女と別れて北へと向かい始めたのですが、そこである者から救援の要請が届いたのです」

「、、、もしかして、オーダスト?レーベイン王国の」

「なんと!よく分かりましたね」

私が先に言い当てた事に驚いているカイルだけど、私はしてやられたと顔を覆ってしまう。

「あの、どうかしましたか?」

私の態度に首を捻るその姿に苛立ちやら呆れやらを感じてしまうけど、そもそもがフィルニスの策だろうし、今度会ったらあのニヤケ面を気が済むまで殴る事にするとして今はとにかく。

「あのね、かなり言いづらいけど、オーダストは帝国側、それも魔導人形部隊の一人よ」

「、、、はっ?」

「ちょっ!危ないわよ!」

私の言葉に一瞬で固まってしまったせいか、魔導車が大きく蛇行する。

咄嗟に操舵輪を抑えて車体を安定させ、

「あ、すいません!」

「ホントよ!これぐらい想定出来るでしょ!」

何とか気を取り直したカイルが操縦に戻り、だけどやはりさっきの事がまだ頭に残っているのか、どこかぎこちなさも感じる。

「そ、それで、その、、、オーダストが魔導人形というのは一体、、、」

「当人がそう言ってるし、私も直接見てるからね。アンタを呼び寄せたのも、多分抵抗軍を一気に潰す為の作戦でしょうね、、、アイツとは知り合い?」

私の問いに、まだ理解が及ばないながらもなんとか平静を装い頷く。

「ええ、レーベイン王国は我が祖国と同盟を結んでいました。そうだ、、、あの、陛下は、、、」

ふと思い出したのか、唐突に聞いてきた彼に私は少しだけ考えた後、

「、、、ベルベインはオーダスト、魔導人形ペンデに殺されたわ、フェデルシュカもね」

「なんという、、、」

今度は取り乱しはしなかったけど、それでも受けたどれほどの衝撃を彼が受けているかは、その横顔から想像できる。

救いがあるとするなら、

「クィレルシュカがあの屋敷の何処かに囚われているはずよ、他のレーベインの連中と一緒にね」

「、、、分かりました、せめて彼女だけは救い出しましょう」

余りにも唐突に多くを失ったあのお姫様。

知らない仲ではないあの子ぐらいは助けておかないと、何というか落ち着かないような気がする。

まぁ、そんな事は流石に言えないのでカイルには勝手に動いてもらうとしよう。

実際、既に通信魔導具で指示を下しているから、とりあえずこれであの子の方は任せて問題ないだろう。


屋敷から離れ、街の中心部も通り過ぎた頃だった。

「、、、静かになった?」

ここまで、アチコチで起きていた戦闘の音が少なからず聞こえていたのだけど、それがいつの間にか消えていた。

カイルも気が付いたのか、魔導車を止めて周囲の様子を窺う。

車内に沈黙が落ち、同じ様に外も静寂に包まれている。

「、、、危ない!」

「うわぁ!?」

不意に、背筋に寒気が走り、咄嗟にカイルを抱き抱えて魔導車の窓を突き破って車外に飛び出す。

その直後、

「UGAAAAAAAAAA!!!!!」

咆哮と共に何処からか飛び降りてきたテーセリスが魔導車を圧し潰す。

「コイツは!」

「狙いは私よ!アンタは行って!」

「なっ、ですが!」

「傍に居られると邪魔なのよ!私はどうにでもなるから、アンタは自分のやるべき事をしなさい!」

私の怒声に怯んだカイルは数瞬だけ目を閉じると、

「分かりました、必ずまたお会いしましょう!」

そう言い残し、瓦礫を飛び越えて姿を消した。

それを最後まで見届ける事無く、私も駆け出す。

魔導車の残骸を吹き飛ばしながら私を追って動き出したテーセリスをまだ建物の残る方へと誘導しつつ、ペンデとエークシの気配を探る。

そう遠くない所に居るはずだけど、やはり気配は感じられない。

「GURUUUAAAAAAAAAA!!!!!」

「うるっさいっ!」

叫びを上げながら一息で飛び込んできたテーセリスに怒鳴り返しながら振り返り、瞬時に取り出した大剣を横薙ぎに振るう。

この街での初戦の時と同じようにテーセリスが無防備のまま吹き飛び、、、

「なっ!?」

その狙いは、まるで私の行動を予期していたかのように地面を蹴って飛び上がっていたテーセリスによっていっそ見事に回避されていた。

「GOAAAAAAAAAAA!!!」

落下の勢いと共に振り下ろされる拳を飛び退いて躱し、

「なら、これで!」

地面にめり込んだ腕を切り落とすつもりでもう一度剣を振ろうとして、それよりも早く襲い掛かってきた右足に蹴り飛ばされる。

何とか剣で受け止めは出来たけど、埋まった腕を軸にした強引な回し蹴りに大きく吹き飛ばされる。

「これは、、、」

何とか着地は出来たけど、状況はかなり悪い。

剣を構え、飛び出そうと体を沈めているテーセリスと睨み合う。

とにかく、今はここを凌がないとどうにもならない。

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