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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第四章 ウルギス帝国狂乱譚
135/363

135 潜む者達

自分の方向感覚を頼りに木々の間を歩いていく。

普通の森なら、例え同じ様な状況下であろうと目印となる物が幾つかある。

空にある陽の動きや、木々の生え方一つも実は方角を知る事の出来る術があったりするのだ。

だけど、この森ではそれが見えない。

空は枝葉に覆われて木漏れ日一つ無く、木の生え方は規則性が無い。

正直、自分が真っ直ぐに進めているかも怪しく感じているし、何なら同じ所をグルグルと歩き続けている気すらしている。

しかも、

「、、、」

一度立ち止まり、周囲を見回す。

何なら、軽く殺気も視線に込めたりしてみる、、、当然反応は無いけれど。

何と言うかこう、気配の様な物が漂っているのだ。

様な物という表現なのは、本当にもう、そうとしか言いようが無いからしょうがない。

誰かが、何かが居る、そんな気がするんだけど、じゃあそれが何で、どこに居るのか、それがまるで分からない。

私自身の感覚が狂わされているのもあるんだろうけど、それ以外にも、この森を覆う結界を作り出している魔導具以外にも別の魔導具がある気がする。


踏み出す足は堂々巡りしているかもしれないけれど、思考だけは回し続ける。

少しづつではあるけど、この結界に関して把握出来てきた。

無理をすると頭痛がしてくるからゆっくりとだけど、内側に飛び込んだ甲斐はあったようで一安心している。

もしもそれすら出来なかったら、最後の手段として聖痕を最大開放して無理矢理吹き飛ばすしかなかっただろう。

そうなればどうなる事か、考えたくも無い。


ふと、一際強い気配が一瞬だけ私を射抜いた。

方角が分からないから正確に何処かは分からないけれど、進行方向から見て左手方向だろうか。

少しだけ悩み、気配のした方へと足を向ける。

私の動きに反応したのか、また気配が強まる。

今度はすぐに途切れる事無く、寧ろ動揺すら伝わって来ている。

多分だけど、気配の主は私に気付かれるとは思っていなかったのだろう。

意図は分からないけれど、最初の気配は何かしら行動をした際に私を見失わない様にした結果なのかもしれない。

今の状況を鑑みるに、相手は経験の浅い人物かも。

まぁ、遅かれ早かれ何処かには行き付いただろうから、手間が省けたと思っておこう。


歩き出して暫くすると、気配は隠れたけど辺りの雰囲気が変わってきた。

まぁ単純に言うと、殺気が濃くなってきた。

それも複数、かなりの数だ。

囲まれてはいないけど、少しづつ距離は縮まっているから、あちらも私に向かって移動しているようだ。

と、そこまできて唐突に視界が開ける。

明らかに人の手によって切り拓かれた空間が目の前に広がり、その中央に一人。

手に持った槍を構え、私を睨み付ける少女が居た。

「来たな、人形野郎め」

開口一番、私に向けてそう言い放った少女は有無を言わせずに飛び掛かってくる。

私はそれを軽く身を捻って躱すと、擦れ違いざまに槍を掴み、そのまま奪い取ってみせる。

少女は地面を何度か転がると、何が起きたのか分からないという顔で立ち上がり、武器の無くなった自分の手を見つめる。

その光景が何だか面白くて思わずクスッと笑みを零してしまった。

それに気付いた少女は顔を真っ赤にしながら薄っすらと目に涙を浮かべて私を指差した。

「なっ、お、お前!私の槍を!返せ!」

半泣きの少女は果敢にも私へと飛び掛かってくる。

それを躱しながら、周囲の様子を窺う。


最初に感じた強い気配はこの少女の物だろう。

その後の複数の殺気はこの広場を囲むようにして今もこちらを見ているようだ。

となると、彼等はこの森の住人で、少女は何かしらの試練でも課されているのだろうか。

手を出してこない辺り、そんな風に感じ取れるけれど、何とも言えない所でもある。

とりあえず、このままでは少女が何とも切ない事になってしまいそうなのでそろそろ状況を宇がしてあげるとしよう。

「はいはい、じゃこれは返してあげる」

距離が離れた所を見計らって槍を放り投げて返すと、少女は慌ててそれを受け取った。

そして、その隙に今度は私が距離を詰める。

少女の背後に回り込むと、そっと肩に手を置いて身動きを取れなくする。

ビクッと体を硬直させた少女を余所に、私は周囲に向けて軽く殺気を飛ばす。

「で、とりあえず話の出来る奴は居ないの?それとも、ここには客を持て成す風習はないのかしら?」

周りが微かに動揺を見せる中、目の前の少女が私の手を振り払って槍を構え直す。

「だ、黙れ!魔導人形が人の真似をするなぁ!」

「あー、そういう事かぁ」

今の一言でようやく色々と合点がいった。

つまり、この森は魔導人形部隊対策の仕掛けが施されていて、運悪く私にも効果が覿面に出てしまったという事なのだろう。

まぁ、これまで奴ら以外に聖痕を持つ者なんて居なかった訳だし、勘違いされるのも仕方がない。

「うん、取り敢えず貴方達も聞きなさい。私は魔導人形じゃないわ、ローダンとカイルの知り合いって言えば伝わるかしら?」

私の言葉に目の前の少女が、そして辺りの気配が変わる。

どうやら、正解を引いたようだ。

ここは、カイル達とは別の反乱組織の拠点だ。

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