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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第四章 ウルギス帝国狂乱譚
127/362

127 灰燼と帰す

「、、、」

『ンフフー』

ここには居ないフィルニスを睨む。

まぁ、目の前に居る魔導人形とやらを睨んでいるのだけど、その眼の先にはあの女が居る。

私の視線に気付いているフィルニスが嬉しそうに笑みを零す。

だけど、言うまでも無く私が奴の言葉に応じる気は無い。

特に、聖痕に執着しているゼイオスや、それを何かしらに利用する気であるフィルニスに、私の真実を見せる訳にはいかない。


だけど、正直なところ、それでこの窮地を脱せるかと問われると難しいだろう。

人数もそうだし、あの怪物一人でも厄介なのに、他の連中がどんな力を持っているのか分からない現状では気を抜けない。

あのフィルニスが自慢げにしていたのだ、どいつも生半可な連中じゃないのは確かだろう。


そうこうしてる間に後ろから近付く足音や声が大きくなってくる。

彼等がここで魔導人形部隊と鉢合わせると色々と面倒になりそうな気がする。

特に、フィルニスがこの機を逃すとも思えない。

今日は見逃すとは言っていたけど、それは私が連中と行けばの話だし、恐らく私が頷いたとしてもこの場に反乱組織が来てしまえば奴は嬉々として皆殺しにするだろう。

表向きは協力関係を結ばないという話はしたけど、だからと言ってこの場を放っていくほど薄情でも無い。

、、、まぁ正直なところ、彼等には陽動として帝国軍を惹き付けて貰いたいというのが本音なのだけど。

そういう意味でも、彼等には生き残って貰わないと面倒なのである。


「仕方ないか、、、」

とにかく、この場を切り抜ける事に集中する。

フィルニスの口車に乗る訳じゃないけど、少しだけ本気を出す。

胸と左目の聖痕に魔力を籠め、右手を正面に翳し、、、






『 掛 か り ま し た ね ぇ ?』






「な、にがっ」

全身が強張り、膝から崩れ落ちそうになる。

何とか体を支え、俯き掛けた顔を上げて、

「これは、、、何の冗談よ、、、」

目の前の光景に頭痛までしてくる。


何せ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだから。

しかも、最初に居た男は()に。

隣の金髪の女は、あの怪物女と同じ()()に。

そして、その背後に居る二人も()()()()に聖痕が浮かび上がっていた。

「これは幻覚か何か?、、、でも、これは、、、」

『いーえいえいえいえいえ!これこそが私の研究の成果!貴女様に是非ともお見せしたかった我が英知の極致!恐れ多くも神の領域に挑み、あ、この世界には神様居ないんですっけ?とにかく!人知の及ばぬ力である聖痕、それを()()し、自在に与えられる玩具に貶めたのです!』

高らかに、謳う様に告げるフィルニス。

その言葉に私は耳を疑った。

聖痕を模造?

そんな事が果たして可能なのか?

頭の中で疑問が渦巻き、頭痛が酷くなる。

聖痕同士の共鳴が収まらない。

恐らく、同じ聖痕が複数あるという異常な状況に聖痕が過剰に反応しているのだろう。


 、、、本当にそれだけ?私の内にある何かが、私と正反対の声を上げているような、、、


遠退きかけた意識を無理矢理引き戻し、痛みの引き始めた頭を片手で抑えながら何とか真っ直ぐ立つ。

「ったく、随分と業の深い事をしたようね」

『お褒め頂いちゃいましたねぇ。スゴイでしょ?これでもう何でも出来る様になりましたよ!例えばぁ!』

フィルニスの声に呼応して、魔導人形達が一斉に聖痕の力を強める。

一気に魔力が膨れ上がり、辺りの空気が重くなる。

「何をするつもり!?」

『いえいえ、何やら邪魔が入りそうですので。それにそれに、交渉は決裂でしょう?ならぁ、ここはもう要りませんよねぇ?』

粘り付く様な声音のフィルニスに応じる様に、人形達の魔力がさらに勢いを増す。

「マズい、このままじゃ!」

私も聖痕を振り絞り、魔力を練り上げる。

何を仕掛けてくるかは分からないけれど、恐らくは広範囲に及ぶ強力な魔法だろう。

間に合うかは分からないけれど、こちらも最大出力の障壁を展開しないと相殺し切れないと判断。


目の前で魔力が膨れていき、それを追うように私の魔力も大きくなる。

「くっ、間に合え!」

少しの焦りと、暴走する様な聖痕の光に目を見開き、

『アハハハハハ、ドッカァーーーーン!!!』

フィルニスの狂笑と共に閃光が迸り、同時に爆音と衝撃が走り抜ける。

その直前、翳した両手から光が広がり障壁が展開。

奴らの放った魔法とぶつかり合い、その衝撃が辺りの瓦礫やまだ被害の無かった建物を吹き飛ばしていく。

魔力の量が多いせいか、衝撃が全然収まらない。

それでも、私もまた規格外。

この程度なら凌ぎ切れる。


衝撃が収まり、障壁に掛かっていた負荷も消えた。

辺りは巻き上げられた粉塵が舞い、視界はほぼ無い。

ただ、目の前にいた魔導人形達の気配は聖痕と共に消えているから、魔法の発動と同時に転移したのは間違いないだろう。

息を整えつつ体から力を抜いて後ろを振り返る。

私を起点に、放射上に何とか形を保つ建物が残る一方、障壁の範囲から外になってしまった街は惨憺たる有様だった。

ほぼ全ての建物が消し飛び、地面が抉れ、、、


街としての形を失っていた。

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