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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第四章 ウルギス帝国狂乱譚
122/362

122 最果ての都市

今更ではあるんだけど、この世界について少しおさらいしようと思う。

いや、特に深い意味がある訳ではないんだけど、実は今向かってる街は通称、最果ての都市なんて呼ばれているらしい。

加えて、ゼイオスがこの世界の真相に迫ろうとしているのも分かった。

それで、ふとこの世界がどんな物なのかを思い返してみようと思っただけなんだけど。


それで、私達が住むこの世界。

()()()があるのだ。

どういう事かというと、今から五十年ほど前、とある探検家が世界一周の旅に出た。

彼は南の島国であるエオロー連合国から南下する形で船旅へと繰り出したのだけど、彼の旅は三か月程度で終わった。

何て事は無い、彼が目指した先に海は無かった。

いや、それどころか陸地も、そもそも()()()()()()

そう、彼が見たのは世界の果て。

海が途切れ、彼方に広がる空だけがただ虚しかった、と。

後に彼はそう語り、失意のまま亡くなった。


それから時が経ち、多くの人が世界の形を解き明かす為に旅に出た。

残念ながら、北は荒れた海を越えられず。

東は島国のオセリエ伝統皇国がある時を境に探索の許可を出さなくなり。

そして西もまた、当時既に西大陸の制覇に乗り出していた帝国の妨害により進展が無く。

幸いというか、その頃はまだ残っていた幾つかの国がその探索に協力していたお陰で、多少大回りではあるけど西の大海に進む事が出来ていた。

ところが、今度は別の問題が浮上する。

西の海の果てを目指した旅人達。

その多くが、戻る事が無かった。

一年近くの旅の果てに、死に体で戻った唯一人の旅人が死の間際に残したのは、終わりの無い海、その一言だった。

後に帝国の支配が西大陸全土に及び、結局西の海の探索はその時点で打ち切られた。


で、話を戻すけれど。

なんでこんな話を始めたかというと、今向かっている、帝都から北西に位置する街。

ここがこの世界にある街の中で、最も西にあるからだ。

だから、最果ての都市。

帝国に支配される前は、西の果てを目指す旅立ちの地として栄えていたそうだけど、恐らく、今ではその面影も残ってすらいないだろう。


また少し脱線するけど、ゼイオスが語った世界の真実とは、西の海の果てを目指すという事だろう。

普通に進めば、最低でも片道一年は掛かると目されているけど、彼はそれを覆す手段を手にしたのだろうか。


「まぁ、何をしたところで結果は同じなんだけどね、、、」


代わり映えの無い景色にも飽き、ボンヤリと世界について考える。

何て言うと偉く壮大な感じがするけど、正直こんな鳥籠の事を考えても仕方がない。

何となれば、いよいよ目的の街が見えてきた。

暫くはゆっくりと進んでいたけど、結局追撃も無く、随分と平和な道程になってしまった。

気を取り直して、身体強化で一気に街へと駆けていく。


街の入り口である門が近付いてくる。

それにつれて、出入りする人も見掛ける様になったのだけど、何と言うか、出て行く人の数が多い気がする。

それも、遠出する感じではなく、着の身着のままで、とりあえず飛び出してきたかの様な風体の人が多い。

特に騒がしい感じはしないし、襲撃とか、そういった感じではなさそうだけど、何処となく不穏な空気が漂っている気はする。

いつの間にか空も曇り始めているし、何だか嫌な感じがする。


警戒しながら街へと入ったけど、意外というか、特に何かある訳も無くすんなりと進む事が出来た。

街の規模は結構大きく、見て回るなら数日は掛かりそうではある。

町並みは綺麗だし、多分西の方に行けば海も見えそうだ。

だけど。

「、、、何なの。この雰囲気」

道行く人の表情は皆一様に暗いし、町のそこかしこには武装した兵隊が立って睨みを利かせている。

別段、理不尽な行為が行われている様子は無いし、兵士達も監視をしているだけ。

ただ、とにかく今の空模様と同じく重苦しい空気が町を覆っている。

とりあえず、余所者に向けられる視線を無視して宿を探す。

大きな街だけあって宿自体は幾つも見当たるし、今は手持ちにも余裕があるからそれなりの宿にも泊まれる。


という訳で、結局色々と見て回り、街の中心部に程近いちょっとお高めの宿に泊まる事にした。

食事も摂り、贅沢なお風呂にもゆっくりと浸かり、今は自室で明日からの行動について考えている最中である。

豪勢なベッドに横たわりながら、窓から夜景を眺める。

こうしてみると、穏やかな良い街でしかないのだけど、どうにも裏で何かが起きているようだ。

それが私絡みなのか、或いは別の何かなのか。

どちらにしろ、明日も町を見て回って、様子を探った方が良さそうだ。

それ以上に、そもそもここに来たのはこの大陸の状況を知る為でもあるしね。


いつの間にかぐっすりと眠っていたようで、窓から差し込む朝日で目を覚ます。

適当な服に着替えて朝食でも食べようとドアへと向かい、足元に一通の手紙が落ちているのに気が付いた。

表には何も書かれておらず、手に取って裏返してみても同じ。

特に何かが仕掛けれている事も無く、中身を見てみると。

「まぁ、代官様からのお誘いですって、、、なんで?」

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