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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第四章 ウルギス帝国狂乱譚
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120 触れてはならぬもの

微かな物音が聞こえ、僅かな静寂が場に落ちる。

互いに姿が見えないのに、得体の知れない緊張が走る。

そして、

『二度目にしてアレを撃退してみせるとはな。この目で見れなかったのが悔やまれる』

フィルニスとはまた違う趣の、愉快そうな声が聞こえてくる。

目の前に居ないにもかかわらず、思わず目を細めてしまった。

「アンタの目的は何?魔導人形何て悪趣味な物まで生み出して、一体何がしたいワケ?」

『知れた事だ。この世界の真実を解き明かし、その全てを我が手に収める。ただそれだけの事』

当然の権利と言わんばかりに、当たり前のようにそう言い放つゼイオス。

だけど、世界の真実とは。

そこでふと、思い出した。

そうだ、確かに、イングズでも似たような事を言ってたような気がするんだけど、、、


いや、まさかとは思うけども、彼は()()()()とでも?

そう思い至った直後、何処からとも無く何かが浮かび上がり、そして、、、



「フフ、いやいや、まさかねぇ」




ポツリと呟いた私の一言に、魔導具の向こうから僅かな戸惑いが伝わる。

『、、、何だ?まさか、とはどう言う意味だ?いいや、それよりもだ、()()()()()


「私が誰かと問うたか、愚かな劣等種風情が」


私の口から、私じゃない言葉が零れ落ちる。

いや、これは私、、、そうだ、()()()()()()


崩れ落ちそうな何かを無理矢理押し留めて、私は言葉を紡ぐ。


「まぁ、貴様の慧眼に免じて此度は許そう。世の理を解き明かすなど不遜ではあるが、触れてはならないものに手を伸ばす、その愚かしさこそ人間たら覚める証。存分に励み、()()()()()()()。その時こそ、貴様の望みは果たされよう」

『、、、リターニアはどうした。アレに何かしたのか!』

珍しく声に怒りを込めたゼイオスに、何故か愛おしさすら抱いてしまう。

()()()なら、ある意味当然でもあるけれども。

だけど、

「あぁ、もう時間切れね。とりあえず、魔導人形とやらは中々気に入ったわ。他のも早く見せて頂戴ね」

『待て!』

続きを待つこと無く、私は目の前の装置を破壊する。

それと同時に、瞬間的に意識が遠のく。


目を開くと、目の前の装置は原型を留めない程に破壊され、火花を散らしていた。

軽く首を捻り、

「あ、そっか」

一人納得して、それきりそれへの興味は失せた。

あの皇帝がつまらない事を言うものだから、仕方がない。

「まだ早いもの。たった四つしか満たされてないんだし、もう少し籠の中で飼われててくれないとね」


、、、よく分からないけど、そうなのだろう。


あまりはしゃぎ過ぎるようなら、予定通り消してしまおう。

ああ、でも、彼の聖痕は悪くない。

もう少し育てれば、()()()だろう。


ふと意識が戻る。

どうやら、またぼんやりしていたみたいだ。

流石に疲れているらしい。

ここまでほぼ休み無しだったし、仕方ない。

いい加減、一休みをしようと部屋を出て、そこで改めて違和感に気付く。

「これだけの騒ぎなのに、誰も来ない?」

不気味な程の静寂の中、廊下を進み、外へと通じる扉のあった場所へと戻る。

圧倒的な暴力で歪んだ、扉のあった場所をしばし睨み、人の気配が無い事を改めて確認する。

そして、ゆっくりと出口を潜り、少しだけ外の明るさに目を細める。


すぐに明るさに目が慣れ、周囲の様子を眺める。

高く聳える建物が幾つも乱立し、地面は石畳とは違う、でも石と似たような材質の何かが敷かれている。

フェオールとも、アンスリンテスとも、当然イングズともまるで違う光景。

だけど、、、


建物の隙間を風が吹き抜ける。

落ちていた紙がそれに巻き上げられて彼方へと消える。

そして、静寂。

幾ら耳を澄ませても、物音すら聞こえない。

いや、それだけではない。

そもそも、人の気配が無い。

たまたま近くに人が居ない、何て物ではない。

どれだけ魔力を広げて探知しても、誰も、何も動いていないのだ。


少し歩いて、後ろを振り返る。

半壊した建物、そこがフィルニスが所長を務めると言う異能特務研究所なのだろう。

でも、その破壊の痕跡はあの怪物によるものだけではないようにも見える。

視線を前に戻し、道を進む。

そして直ぐに気付く。

研究所周辺はまだマシな方だったようで、大きな道が交差する場所に出ると、ようやく把握出来た。

つまり、

「これは、、、」


フェオールの王城に匹敵する高さの建物、それが幾つもあった、のだろう。

だけど、そのどれもが半ばより崩れ落ち、その瓦礫が低い建物を押し潰し、被害を拡大させたのだろう。

そのような事があちこちで起こり、それ以外にも焼け落ちた建物、地面ごと崩落した建物、意味が分からないけれど何かで切り裂かれたような状態の建物、、、

単一の災害などではない力によってここは破壊の限りを尽くされていた。


そんな光景が続く道をひたすら進み、広場の様な場所へと出る。

その先、一段と高く、禍々しく聳える城が、この町の正体を教えてくれた。

これまでのどの国よりも発展しているはずの都。

なのに、誰も居ない伽藍洞の空間。


、、、ここは、ウルギス帝国の帝都だ。

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