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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第四章 ウルギス帝国狂乱譚
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117 たとえ離れても

体が浮遊する様な感覚が抜けていき、意識がハッキリとしてくる。

次いで視界が戻り、周囲の状況を把握した直後、私は体に纏わせていた黒炎を右手に集める。

炎の中から手先から肘までを覆う腕甲が現れ、

「フッ!」

気合と共に短く息を吐き出し、床を殴りつける。

端から見れば大して力の籠っていない様に見えるその一撃は、しかし床全体に及ぶまで放射状の罅が走り、更にその罅から青白い光が放たれた。


破壊された部屋から出て、隣の部屋に入る。

まずはとにかく着る物を探さないと始まらない。

たまたま入ったそこは、幾らか埃は被ってはいたけど少し前までは誰かが居室として使っていたらしく、住人の荷物などが残されていた。

それでもほとんど放置されていたのか、或いは物置にでもされていたのか所々乱雑に積み重ねられた箱などもあり、その箱を漁ってみると幸運にも着れそうな服が見つかった。


と、思って広げてみると、

「、、、なんでドレスがあるのよ」

雑に丸められていたのは落ち着いた色合いと装飾の付いたドレスだった。

それ以外も、ほぼ全部がドレスで普通の服がなかなか見つからない。

半ば遠い目になりつつもう暫く探していると、ようやくまともな服が出てくる。

なんだけど、それも何と言うか、高貴な身分の人がお忍びで着ていくような、こう、庶民からは何処かズレた小洒落た服だった。

これ以上は時間の無駄だと諦めて、その服を着る。

一応、下着も見つけられたからそれも有難く頂いていく。

しかしまぁ、何と言うか、この下着にしても、とにかく高級感がある服がこうもあるのに違和感を感じるし、落ち着いて部屋を見てみると調度品やらも見た目からして高価な物が揃えられているのに気付く。

そこはかとない怖気を感じつつも、長居は無用と部屋を後にする。


服を着た事でようやく転移してきたこの場所を探索できる。

私が最初に来た部屋は私が即座に破壊した。

理由は単純で、私が転移してきたという事は、アイツらも転移をしたらここに来るという事でもある。

その到着地点を破壊してしまえば奴らは転移でこちらに来る事は出来ない、、、はず。

断定できないのは、そもそも転移魔導具に関する事を正確に把握し切れていないから。


あちらの施設にあった転移魔導具は持ち運びする様な物ではなく、一つの部屋を使った転移室とでも言うべき物だった。

私がどうやってその転移室を使ってこちらに来たのかというと、魔力を走らせてまずはそこの機能を掌握。

あとは移動の際に少しづつ魔力を送り込んで転移室を起動させ、いざという時に備えていた。

で、じゃあその転移室に居なかったのに何で転移出来たかと言うと、そこはもう聖痕を頼った。

結局の所、魔力を利用したものである以上、聖痕の干渉には勝てない。

転移をする、というのは極端な話、人を一時的に魔力に変換して対になる転移魔導具に送り込み、そこで再び人に戻す、という過程を経ている、らしい。

流石にあの短時間では詳細を調べる事は出来なかったし、これが正しいとも判断できない。

それでも、何もしないよりはと、念の為にこちら側の転移室を破壊しておいた。

もし私の知らない機能があったりしたらすぐにでも追手が来るだろうけど、、、


破壊した部屋を眺めながら少しだけ頭を整理する。

そうして次の部屋を調べようと歩き出したその時だった。

「何の音?」

廊下の何処かから微かに音がする。

一定の間隔で、何かを知らせるような音が聞こえてきて私はその音のする方へと足を向ける。

不気味な程に静まり返る建物の中、音のする場所はすぐに見つかった。

その部屋に入ると、私が転移してきた部屋と似たような、謎の設備が詰め込まれた光景が広がっていた。

その設備の一つ、謎の音を発するそれの一部が赤い光を点滅させていた。

私は警戒しながら近付き、その光の下にある装置に触れる。


『あー!やっと気づいてくれましたねー!』

部屋中に響くフィルニスの声に思わず顔を顰める。

それを知ってか知らずか、奴が楽し気に話し続ける。

『いやいや、まさか転送装置をあんな風に使うなんて。最後の最後に聖痕の底力を見せつけられましたよぉ!お陰でこちらは大騒ぎ!あ、しかも聖女様、貴女そっちの装置ぶっ壊してくれましたね!お陰で今から一月近く掛けて帝都に戻らないと何ですからね!』

一頻り言い終えたのか、フィルニスがようやく黙る。

と思ったら、

『貴様は本当に俺の思い通りにならんな』

聞きたくも無い声が響く。

『イングズの意趣返しか?』

「お気に召したかしら?」

『フハハ!ああ、やはり是が非でも貴様は俺の物にする。最後に見せた勝ち誇った顔、それを快楽で歪ませ、力で屈服させ、雌犬の如く躾けてやろう。だが』

笑みを含んだ声音が、微かな苛立ちに変わる。

『こうも手を焼かされては流石にな。躾ける前に、少々立場を分からせねばならん。故に』

衝撃音と共に部屋が、いや、恐らくは建物全体が揺れる。

『我が帝国が誇る魔導人形部隊を差し向けた。せいぜい死なぬ様に抗って見せろ、リターニア・グレイスよ』

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