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転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第三章 イングズ共和国動乱記
108/364

108 終幕、そして

どれ程の時間が過ぎたのか。

互いに一進一退の攻防が続き、決め手に欠け、攻めあぐねながら決定的な一撃を放つべく隙を伺い続ける。

(ホント、まるで攻め入る隙が無いわねコイツ!)

内心で毒を吐きながらひたすら剣を振るい続ける。

そんな内心が表情に出ていたのか、ゼイオスがニヤリと笑み浮かべる。

「どうした?俺と踊るのに飽きて来たか?」

「うるさい!ならさっさとやられてくれる!?」

「フハハハハ!それは聞けない相談だな。だが」

ニヤケ面のまま私を舐める様に見回し、

「いい加減、このままというのも面白みに欠けるな。必要な物は手に入れた、後は」

「っ!?」

突然鍔迫り合い状態から弾き飛ばされ、何事かとゼイオスを睨みつける。

そんな私の様子に、初めて笑みを消し鋭い視線で私を射抜く。

「何故()()を出さん。よもや俺を侮っている訳ではあるまいな」

(本気、、、)

確かに、今の私は本気とは言えない。

何せ、聖痕は二つしか使っていないのだから。

それは既にバレている事だし、寧ろこの男相手には二つでようやく拮抗出来る状態にしかならない。

でも、そもそも極々一部の人以外に私が五つの聖痕がある事は知られていない、はずだ。

私が三つ以上を同時に使わない様にしているのもあるし、使うとしても人前では避けている。

例外はフェオールでの時くらいだ。

ならば何故、コイツは本気を出せと言ったのか。

ギラギラとした奴の目を睨むように見返し、その真意を探る。

ゼイオスは何かするでもなく、さりとて油断も隙も無く私を見つめている。

(、、、恐らくはただの揺さぶり。私が何かを隠しているのは感じててもそれが何かは分からない、だから私がボロを出す様に仕掛けている、、、)

誘いを掛けられてるのは面白くないけれど、それならそれで逆に好機でもある。

「はぁ」

ワザとらしく溜め息を吐き、両手の剣を一度消し去る。

「むっ?」

それを見たゼイオスが軽く腰を落として剣を構える。

そして、それを見た私は狙い通りとほくそ笑み、

「はい、さよなら」

全力の身体強化を掛け、全速力で後ろに走り出す。

「なにぃ!?」

遠くからゼイオスの驚愕に染まった声が微かに聞こえ、直後に奴の気配が動き出す。

身体強化も掛けているようだけど、今の私は聖痕二つを強化に回しているからどう足掻いても追いつけはしない。


町を抜け、少し離れた林の中へと駆け込んだ私は、ある程度奥地まで進んだところで足を止める。

そこで背後を振り返り、遠くからこちらに迫る影を見据える。

間を置かず追いついてきたゼイオスが呆れたように私を睨む。

「何をするかと思えばいきなりこのような場所まで逃げ込むとはな。いやはや、これには流石の俺も驚きを禁じえんぞ」

「ご期待に添えたようでなによりよ」

「して、ここまで来て何をするつもりだ。よもや、逃げて終わりでは無かろう」

走り出した直後は面食らっていたゼイオスも、ここに来て余裕を取り戻している。

その様子に一人満足して、右手に鎌を呼び出す。

その切っ先をゼイオスに向け、

「お望み通り、本気を見せてあげる」

私の言葉にゼイオスが身構える、それよりも前に。

「なんと、、、まるで捉えられぬとは、、、」

私は既にゼイオスの目前、刃を振り抜いた態勢でその呟きを聞いていた。

何をしたか、と問われれば特別な事はしていない。

ただ、瞬間的に()()()()()を使って限界を遥かに超えた身体強化を掛けて一撃を喰らわせただけなのだ。

そして、流石のゼイオスもそれには反応すら出来なかった。

例えどんな聖痕であろうと、その力を五つも重ねた私には勝てない。

鎌を手放し、立ったまま絶命しているゼイオスを見やる。

「流石は皇帝、死してなお地には伏せないのね。ご立派だこと」

それを最後に私は彼から興味を無くす。

散々引っ掻き回されたけど、幕切れは何とも呆気ないもの。

なんて、感傷に浸りながら林を後にする。


首都に戻ると、何やら騒がしい。

多くの人が忙しなく駆け回っていて、アチコチから幾つもの声が響く。

でも、内容を聞いてみるとどうやらこっちもこっちで色々と片が付いたみたい。

中には、アグルが正気に戻った何て声も聞こえる。

まだ自分の目で確かめてないから分からないけれど、町全体の雰囲気からするとどうも一先ずの解決を見たと判断して良さそうだ。

とりあえず議事堂に向けて足を進めていると、向かいから見知った集団がこちらに来るのが見えた。

「どうやら、本当に終わったようね」

そこにはハルヴィル、ランデルに支えられているアグルの姿があった。

その後ろにはメイルと、いつの間にか戻っていたメラン達の姿まである。

彼等も私に気付いたのか、手を振ったりしていてそれに応えようと私も右手を掲げ、、、




   「転移開始」




ハルヴィル達が何事か声を荒げるのと、私の背後から微かな声が聞こえたのは同時だった。

振り返そうと上げかけた右腕が握りしめられ、直後。


私の視界は闇に包まれた。



最後の瞬間、私が辛うじて捉えたのは。




胴を袈裟に切り裂かれ、虚ろな瞳で虚空を睨む者。





()()()()だった。


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