表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生聖女の逃亡放浪記〈総合評価520&110000PV感謝!〉  作者: 宮本高嶺
第三章 イングズ共和国動乱記
103/362

103 仮面の下

ハルヴィル、メイルと共に議場へと向かう。

本来なら多くの人が行き交い、議論などを交わしているはずの建物の中も今は人気が失せている。

唯一、奥の方から幾つかの気配を感じ取れるだけ。

そこに囚われている議員達と、あの仮面が居るはず。

「囚われているのは15人。中には私の養父もおりますがそれはお気になさらず」

「アグルも恐らくそこに。とは言え、ここまで全く姿を見せていませんのでどのような状態か」

二人からそれぞれ状況の説明が入る。

議員についてはともかく、アグルについての情報が無いのは少し厄介ではある。

まぁ、ほぼ確実に操られているだろうし、最悪の事も想定してはいるけど、果たしてどうなる事やら。

なんて考えている内に議場へと辿り着いた。

中へと通じる扉は開かれており、いっそ清々しいほどに誘われている。

なら堂々と乗り込んでやるだけ。

特に身構えもせずに中へと足を踏み入れる。

中央に向かって低くなっていく、所謂すり鉢状の議場。

その中央、床に座らされている人達と、それを見張る様に虚ろな瞳で立っているアグル、そして。

「やはり来たか!まぁ聖痕を持つのだ、あの程度の傷など造作も無く癒やせるだろうとも!」

机に座り、さら片足もそこに乗せた気の抜けた、その実一切の隙を見せていないあの仮面の人物。

私を先頭に、二人も後ろに並んでその中心へと降りていく。

囚われている議員達は憔悴しているがそれでも特に怪我などもなさそうだ。

その彼らを挟んで私と仮面の人物が向かい合う。

「それで、この騒ぎがアンタの狙いだった、なんてつまらない話じゃないんでしょ」

「期待を裏切るが、これこそが目的だよ。つまり、俺の目論見は全て上手くいったという訳だ」

愉快そうに笑いながら語る奴が机から飛び降り、人形の様に佇むアグルの肩に腕を乗せる。

「コイツを見ろ。そして思い出せ。お前は傀儡魔導具の力を良く知っているだろう?この男に付けさせたのは改良型でな、一定期間付けさせていると精神を変容させて魔導具無しでも操れるようになる」

アグルの首の辺りを指差しながら自慢げに語るその言葉に、私は自分の想像が当たってしまったのを悟る。

何故なら、今現在アグルの首には魔導具は付けられていない。

それはつまり、あの仮面が言う通り既に彼の精神は完全に支配されてしまっているという事に他ならない。

「面白くない話ね。アンタを殺しても解除されないってワケでしょ、それ」

「無論だ。そんな生半可な物など求めてはいないからな。それで?どうする、コイツを殺すか?」

相も変わらず愉快そうに話す仮面に苛立つけど、何とか冷静を保つ。

奴の言う事は恐らくその通りなのだろうが、まだ可能性が無い訳ではない。

この身には尋常ならざる力がある。

聖痕なら変容したという精神を元通りにする事も可能かもしれない。

流石に精神の回復何て事は試した事は無いけれど、この仮面野郎の思惑通りにするのも癪に障る。

ただし、その為には目の前の黒幕を排除する必要がある。

「ほう、良い目だ。さすがは聖痕の聖女。遍く救いの手を差し伸べるか?」

「私を聖女と呼ぶな。お前の思い通りにさせたくないだけよ。顔すら見せられない奴のね」

私の挑発に、仮面がいよいよ肩を震わせる。

「フハハハハ!俺に顔を晒せと来たか!やはり面白い女だ、ますます欲しくなった。どうだ?俺の下に来れば最高峰の贅沢と快楽をくれてやるぞ!」

何が面白いのか、それに奴の言った事も何一つ面白くない。

そうして私が不快感に顔を顰めていると、ヤツが徐に手を仮面に翳す。

すると、カチンという金属音が響き、奴の頭を覆っていた兜の一部が勝手に動き面の部分に収まっていく。

瞬く間に兜が仮面一枚になると、その仮面を顔から外す。

露わになったその素顔、非常に整った顔立ちに炎の様な真紅の髪。

そして、何よりも印象深いのがその目。

強い意志と、燃えるような野心を宿した紅蓮の瞳が、私を射抜いていた。

「ここには俺を知る者も居るだろう?だが、敢えて名乗ってやる。伏して拝するがいい」

その瞬間、議場全体が強力な圧に包まれる。

後ろでハルヴィルとメイルが崩れる様に膝を突き、議員達も苦しそうに体を丸めている。

その光景を意識して無視し、私はその圧を聖痕で弾く。

「フハハハハハ!お前は平伏さぬか、良かろう。では改めて」

優雅に、それでいて力強く礼を執る。

「我こそは世界を統べる選ばれし至高の存在。気高き一族の血を引く者。そして、世界の真実を解き明かす先駆者。ウルギス帝国皇帝、ゼイオス・ゲルン・ウルギスである!」

高らかなその宣告に、誰もが息を呑んだ。

無論、私もその名乗りに驚きを隠せない。

これまで散々暗躍していた帝国、その首魁である皇帝が今目の前に居ると言うのだ。

そして、そんな私達を尻目にゼイオスはさらに見せつける。

「刮目するがいい、愚衆共。我こそが選ばれし存在である証明、聖痕を!」

眩い輝きと共に、ゼイオスの額に聖痕が浮かび上がる。

額の聖痕、即ち、この世で最も頂に至りし至高の頭脳を持つ者の証。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ