1 プロローグ 〜かくて聖女は背を向けた〜
第一章のストーリー大枠が固まりました。ぜひ最後までお付き合い頂けますと幸いです。
どうぞお楽しみください!
大変申し訳御座いません、致命的なミスが発覚したので修正致しました。あくまで言葉の変更だけなのでご了承下さい!
高く青く澄み渡る空の下、簡素な祭壇が設置された広場に多くの人集りが出来ていた。誰もが期待の眼差しを祭壇の上に並び立った2人の人影に向け、同時に僅かながらの緊張感に広場は包まれていた。
その2人は全身を灰色のローブに包み、どのような背格好なのか、その性別すら分からない。唯一、並び立つ2人の身長差から、右手に立つのは男で、左手は女なのではと、詰めかけた人々が声を潜めつつも興奮気味な言葉を交わしている。
そうして、正午を告げる鐘の音が高らかに鳴り響くと、それとは反対に人々のざわめきが波を引くように収まっていく。
鐘の音が鳴り止み、広場が完全な静寂に包まれた。そこに、1人の老人が厳かに祭壇へと上がり、2人の前へと進み出ると、壇上の人影がこうべを垂れ、そのまま老人の言葉を待った。
『これより、聖痕の名の下に誓いの儀を執り行う』
老人が告げると、広場の空気がピンと張り詰める。
『汝、聖痕に選ばれし救世の徒よ』
その言葉を受け右手側、背の高い人影がローブを脱ぎ捨て、振り返る。その姿を見た人々からどよめきが上がる。
・・・太陽の光を浴びて燦然と輝く金の髪、自信に満ちた顔、儀式の為に誂えられた装備。その全てが、人々の視線を釘付けにした・・・
『この場に集う者達と、聖痕と、この世界に生ける全ての者に対し、使命を果たす事を誓うか』
老人が言葉を続け、そしてそれを受けた青年が僅かながらの笑みを浮かべた。
『必ずや、使命を果たす事を誓いましょう!』
その言葉に広場中、さらには周辺の家々から大きな歓声があがる。青年がそれを受けて右手を高らかに掲げて応える。
『汝、聖痕に選ばれし救世の徒よ』
老人が満足そうな表情を浮かべつつも声を上げると、再び広場が静寂に包まれる。そして、残されたもう1人の人影がゆっくりとローブを脱ぎ捨てと、その姿に先ほどとは違うどよめきが起こる。
・・・全てを包み込むかのような白銀の髪がフワリと腰の辺りまで落ち、それを翻すようにゆっくりとその人物が振り返る。僅かながらのあどけなさを残しつつも、可愛いよりも綺麗と讃えるべき容貌。背丈がやや低くはあるが、女性らしいシルエットの体付き、そしてその身に纏う式典用の法衣。その全てが女性の存在感を引き立て、人々の視線を奪い去る・・・
『この場に集う者達と、聖痕と、この世界に生ける全ての者に対し、使命を果たす事を誓うか』
老人が先程と同じ質問を女性へと向ける。人々が固唾を飲みながら視線をさらに熱くする。そうして、人々の視線とそこに乗せられた期待を一身に受け止めた彼女が薄らと笑みを浮かべ口を開く。
『イヤです』
世界が、凍りついたかのようだった。
老人も、女性と並び立った青年も、そして詰めかけた人々も、その目と、耳を、疑った。その沈黙を、彼女は破る。
『私、リターニア・グレイスは、使命を拒否いたします』
・・・かくして、聖痕に選ばれし聖女リターニアは、人々に、そして世界に背を向けたのだった。
色々設定が固まってきたので、男の方も今後出番がありそうです(笑)
設定変更に伴い年齢を修正してます。流石に初期は高くしすぎたので!