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新しい町で

作者: 西埜水彩
掲載日:2022/11/20

 ごちゃごちゃとしていた部屋が綺麗になって、気持ちもスッキリする。


 ようやく引っ越しの片付けが終わった。


 1LDK。小さなアパートの一室。ここが今日から私の住む家だ。


 人を好きになったことがない、というよりも人を好きになれない。そんな私には恋人が今いないし、これから出来る予定も無い。


 というわけで一人暮らしである。社会人になって、仕事にも慣れてきた。そこで思い切って自活して、一人で生活することにしたのだ。


「えっと片付けが終わったから、次は何しようか」


 そういえばこれから住むことになる、この町のことをあまり知らない。


 この町の名前は、恋結町。ロマンがあり、人口の少ないのどかな町だ。


 逆にそれ以外のことは知らない。これはマズいかもしれない。せめてスーパー、本屋、ドラッグストアがどこにあるかは知っとかないと。


 私は財布だけが入った鞄を持ち、家から出る。


 アパートの周りはお店が少ない。かなり静かな所だ。どっちの方向へ行こうか迷ったとき、神社が近くのあるのを見つけた。


 気になったので、入ってみる。


「がしゃん」


 そこには絵馬を壊す少年がいた。


 壊された絵馬の破片が地面に散らばり、私はそのなかの一つを拾う。


 一応人の願い事を神に届けるためにある尊いものではないかもしれないが、神に関わる大事なもののはず。それを壊すとは、一体どうしたんだろうか?


「落としましたよ」


 さっき拾った破片を少年に渡す。流石に私がこの絵馬を処分するのは違うような気がした。どういう理由があるのか分からないけど、本人が処分するべきだと思う。


「ありがとう。実はさ、失恋したんだ。この絵馬に恋が叶うように願ったけど、叶わなかったんだ。それで絵馬を壊したんだ」 


 聞いていないけど、絵馬を壊した理由を話してくれる少年。きっと絵馬を壊したことに対して、後ろめたく思っているんだな。そうじゃないとここまで話さないだろう。


「そうですか。この絵馬、もう使えませんから。御守りを納めるところに片付けた方が良いですよ」

 私はその少年から離れる。


 恋の悩みはどうしようもない。そこで神にどれだけ祈っても、必ず叶うわけでもない。


 だから仕方ないのかもしれない。


 壊れた絵馬のように、好きな気持ちも粉々になれば、あの少年も楽になれるのかな。


 そうだといいな。そう私はここの神に祈る。

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