おはようございます…
俺は都内の美容院で働く見習い美容師である。
いつものように職場へ出社したのだが、この日はいつもとは違う日になった。
「 職場 」
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俺「おはようございます。」
従業員A「おはようございます。」
従業員B「おはようございます。」
チーフ「おはよう!」
先に来ていた仲間や先輩方に挨拶をし、そのまま客席の奥にある事務所へ向った。
事務所のドアを開け、事務所に入る。
いつもならそのまま荷物をロッカーに仕舞い仕事の準備を始めるのだが…
なにか変な違和感を感じる…。
俺は部屋を見渡してみた。
すると、一つの不自然な点に気づいた…。
「あれ…???」
いつもなら、そこにあるべきはずの物が無いのだ。
俺は事務所にある姿見鏡に近づいた。
毎日、客席に入る前に全身の身だしなみを最終確認している姿見鏡だ。
「えっ…? 無い… どゆこと…???」
本来ならば、そこにあるべきはずの俺の姿が全く映っていないのだ。
「???」
自分の姿が姿見鏡に映っていない事に理解できず、姿見鏡を手で触った。
本来、鏡に反射されるべき俺の手が反射される事なく事務所の中が映し出されていた。
俺は、透明人間になってしまったのだろうか?
それとも誰かが鏡を写真に替えたのだろうか?
今の状況が理解できず、呆然としていると鏡の奥から一人の男が走ってきた。
「えっ? これディスプレイなの?」
俺は一度後ろを振り向いたが、そこには誰も居なかった。
もう一度、鏡の方を向き直した瞬間
身体に変な感覚が走った。
別の世界へ来てしまったかのような変な感覚だった。
俺はもう一度、鏡を見た。
そこには、先ほどの男が鏡の前に立っていた。
その男を良く見ると、毎朝よく会う俺なのである。
鏡に映る俺のような男は、俺に向かって
「そこで待て」と言っているようなジェスチャーをした。
そして、その男は鏡の横へ歩いていき見えなくなってしまった。
ガタンッ!
客席の方から普段聞かない音がした。
閉めたはずの事務所のドアは、何故か開いている…
なにか嫌な予感がした次の瞬間
事務所のドアから全身黒づくめの特殊部隊のような服を着た見たことない奴らが機関銃のような物を手に持って入ってきた。
バンッ!
男らが撃った銃弾は俺の身体を貫通し、そのまま後ろにある"鏡のような物"に当たりバリンッと割れた。
俺が呆気に取られていると…
男らはそのまま勢いよく事務所の奥に入ってきた。
俺はゆっくりと撃たれたはずの腹部を触った…。
あれ…
空いてない…
お腹に穴が空いてない…
男らは辺りを見回している。
目の前に俺が居るのに、全く気づいていないような素振りだ。
えっ、気づいてない…の?
俺の足元には、先ほど割れた"鏡のような物"の破片が散らばっている。
下手に動いて音を立てたくないので、俺はその場でじっとする。
男らは事務所の隠れられそうな場所や事務所に唯一ある窓を開け隈なく調べている。
男A「何処に行った…?」
男B 首を傾げる。
男C「確かに、ここに入っていったのが見えたのだが…」
男D「窓から出ていったのか?」
男ら「わからん…」
しばらくすると男らは、事務所から出ていった。
まだ、客席の方にいるかも知れないので俺はその場でじっとし様子を見る。
しばらくしてから足元に落ちている鏡のような物の破片を踏まないように跨ぎ客席の方を慎重に見に行く。
客席には、既に男らは居なかった。
だが、客席は荒れ果て… 窓ガラスは割れ…
床には…
血溜まりのような物と無数の死体のような物が倒れていた…。
「う"ぇっ…」
俺は自分の口を手で塞ぎ、事務所へ戻る。
先ほど、割れた"鏡のような物"の前に行く。
鏡のような物は、殆どが割れ 床に落ちていた。
俺は“鏡のような物”があった場所に僅かに残っていた小さなカケラから鏡の中を覗きこむ。
そこには鏡に映る俺のような男が居て、手に文字が書かれた小さな紙を俺の方に向け見せていた。
その紙には、
『 鏡が小さくて戻れないから自宅の姿見鏡の前に来てくれ! 』
と書かれている…。
まったく理解が追い付かないが、自宅の姿見鏡の前に行くしかないという事だけは理解出来た…。
俺は手で"OKサイン"を送り 自宅へ向かう事にした…。