一章五節
一章はこれで終わります。
*
その日の夕方。
やはり、ヘレナは幼馴染のヨセフと帰路に着いていた。
しかし朝に比べ会話量が少ない。
圧倒的に。
帰り道の半分位の所で、長時間の無言に痺れを切らしたヨセフがヘレナに声を掛けた。
「なあ、具合でも悪いの?それか、僕不味い事言って怒らせた?」
「……具合なんか悪くない。何も不味い事言ってない」
「じゃあ何?」
「……」
「黙ってちゃ分かんないよ。じゃあ、紙にでも書く?」
「それも嫌。言ったら、なんというか恥ずかしいというか、何と言うか……。」
「ん?……僕達、幼馴染だろ?何でも言える仲なんだから、はっきり言っていいよ」
「分かったわよ。……笑わないでね?」
「誓うよ」
ずっと地面を見ていたヘレナは、ヨセフの方を見て午前中言われた事をそのまま話した。
しかし、乙女心が分からないものかね?
ヨセフよ。
そんなんだから、ヘレナが困るんだ!
「あ、あはは、その話か……。僕も聞いたことがあるよ、うん……」
……これ、ヨセフ!
会話を続けろ!
二人はまた無言で、通学路を歩き続けた。
「あー、ヘレナさん?あのさ、三週間後の合同合宿だけどさ……」
「……」
また、道の途中で話しかけてきたヨセフは、気を使ってあまりヘレナの顔を見ないで話し始めた。
「行く前にさ、専門店巡りしないか?ほら、向こうで手に入らないかもしれない物も専門店なら売っているし。ヘレナも好きだろ?専門店巡り」
「……そうね」
ずっと黙っていたヘレナは急に足を速め、ヨセフの前で立ち止まった。
「ねえ、ヨセフ」
「なに?」
「やっぱり、幼馴染よね?私達」
ヨセフはそんな直球な言葉が出てくるとは思っていなかったらしく、驚いた顔をして押し黙った。
そして悩んだ挙句、口を開いた。
「そうだよ、うん……。あー。いや、やっぱり少し他の幼馴染同士とは違うかもな」
「そうよね……。私達は……、何だろう……」
「ヘレナ、今は分からないままにしておこう、今は。いつか分かるよ」
「そうね。……じゃあこの話はおしまい!私、もう悩まないわ」
「……そっか。あ、そうだ専門店巡りだけどさ、いつ行く?」
「そうねー、一週間前には行きたいわね!」
無事(?)話が終わって、少しずつだがいつものヘレナ達に戻って行った。
しかし、これで良いのか?
何か進展したのだろうか。
……いかんいかん、時間を管理する者は起こった事象に気を揉んではいけない。
さっき弟子に自分で言ったばっかりではないか。
さて、そろそろ別の記憶水晶でも見ていくか。
惚気すみません。