第一章 始まりのまた始まり
ヘレナちゃんの登校シーンから始まります。
この物語の最重要人物であるヘレナは、いつもの通学路を幼馴染であり、タッグを組む仲であるヨセフと仲良く歩いていた。
若い学生らしい話をしながら。
この時は、いたって平穏な日々だった。
春の季節である。
若々しい葉や新しい命がそこかしこで生まれて行く。
人、精霊、魔物。
それぞれが、自分達の生活を守り、生きていく。
来たる冬まで。
彼等の話は、「昨日マンドラゴラで作る薬の調合を間違えちゃって、毒薬になるはずの薬が凄く効く治療薬になっちゃた」とか、「言い忘れていたけど、一昨日、同じ科の三銃士に憧れている奴が誤射したマスケット弾の流れ弾と、アサシン科の忍者希望の対戦相手が投げた手裏剣が鎧に当たって欠けたんだ」など、この世界ではいかにも普通な会話だ。
君達が住んでいる世界とは全く違う世界の話だ。
この話はつまり異世界。
異なる考えが存在している。
が、たいしてそちら側と変わらないかもな……。
二人はそんな他愛もない会話をしながら、沢山蔦が絡まった古びた校門を潜っていた。
ヘレナが潜る直前、ふと見上げた門にはこう文字が彫られてあった。
「エイフラハム国 王立 剣魔術養成校 ミンフィア」
この話、意外と大きい大陸が舞台です。