少女の未来は「運命」で決まっている
このページを見つけてくださったあなた、初めまして。作者のYouknowです。英語が煩わしい方はゆーのうと呼んでください。
このお話は、バッドエンドになるかもしれませんし、グッドエンドになるかもしれません。ただ、楽しい話と鬱々とした話を交互に書こうと思っている事は先に述べておきます。
また、現時点でこの作品は未完です。勿論、最後はどうなるかはイメージしていますが、途中で気が変わるかもしれません。
戦場跡に、持ち主が消えた様々な剣や杖が力尽きたようにその場に横たわっていた。
一面焼け焦げ、空は散っていった戦士や魔法使いの血で染まっていた。
その最も血の跡が激しい中央部に唯一、敵の攻撃から身を守った少女が自分の守護天使の加護で立ち上がった。
しかし、彼女は傷だらけでこれから最後の時を迎える状態ではなかった。
彼女の戦闘服は敵の攻撃でずたずたに切り裂かれ、彼女の皮膚もまた同じような状況だった。
彼女の守護天使の加護も通常時に比べ、微々たる炎しか彼女を包まなかった。
彼女は「皆、みんな死んでしまった……」と呟き、潰えた戦友の血で踊り狂っている魔神に向かって怒鳴った。
「よくも皆を殺してくれたわね!このくそ魔神!!今こそ皆の弔いを!!」
留めることを知らない涙は、血塗れた大地を微かに浄化した。
魔神は踊るのをやめ、目を細めながら彼女を睨みつけた。
「おやおや、最大級の攻撃をしたのに生き残っていましたか。素晴らしい才能だ。……その才能を見込んで私と一緒に世界を統べませんか?あーほら、よくある詐欺じゃありませんよ。ですが、あなたがお断りするのならこちらには考えがあります」
笑いながら彼女に歩み寄っていく。
歩み寄ってくる魔神の体から溢れるその禍々しい魔力の渦は、そこに在るはずがない不気味なオーラを放っていた。
その力は近づいた獲物を決して逃さない蜘蛛のような力だった。
しかしヘレナは屈せず、力の限り声を上げる。
「そんなの絶対いや!そして魔神なんかもう二度とあいつらに蘇らせない様にするわ!」
魔神はくっくっと笑いこう告げた。
「そうですか、残念ですね。こちら側に来れば少なくとも私が無情に殺すことが無いのに。はっ、本当に残念ですねぇ。……じゃあ、無様に死んでもらいましょうか!」
魔神の表情がまるで歪んだ獣の様に変わった。
そして、獣化に合わせて伸びたその鋭い爪で彼女に切りかかった。
「くっ!」
どうにか彼女は横飛びに避け、他の大地に比べ滑らかな地面に手を添え、呪文を唱える。
「エコエコアザラク、エコエコザメラク。自然よ、我に力を!」
枯れかかった近くの木から僅かな魔力を受け取り、重ねて召喚呪文を行った。
「エリ、エリ、サバクタニ。我は汝を恋求める。我の願いを聞き入れ、我の眼の前に巣食う邪を払え!地獄の怒れる処刑人・エズラエル!」
その言葉は彼女を中心にラテン語で書かれた魔法陣に変わっていく。
そして彼女のそばに寄り添うように出現したその天使は、彼女にこう囁いた。
「遅くなってすみません、ヘレナ様。こちらから出てこようとしたのですが、自然の力が足りず、微々たる加護と魔力の増幅しか出来ませんでした」
「いいのよ、こんな状況だし。それと今までずっと『様』なんて言ってくれなかったくせに、何よ」
「いいじゃないですか、こんな状況なのですから。最後の時くらい、私に下僕らしい事をさせてください」
「あっそ……。まあ、いてくれるだけ嬉しいわ」
「そう言っていただけると嬉しいです」
二人とも照れるようにそう答え、魔神の方へ向き直る。
それに合わせ、後ろで炎に包まれた天使の翼がザワッと開いた。
「もういいだろう。さあ、宴を始めよう」
魔神は血走った眼をぎょろりと動かし、魔力の具現化を始めた。
「そうはさせないわよ!これで終わりにしましょう!」
彼女は軽やかに、水の黒魔術の印を空に描く。
「あんたには、一番強い魔法を食らわせてあげるわ!‘‘激流の回転木馬’’!!」
「こちらも行くぞ!穢れた愚者の神!」
攻撃の出だしは順調だった。
しかし……。
「ははっ!同族が俺を殺しに来るか!このままお前の放った黒魔術が俺の魔力具現区域に触れたららどうなるかその頭で考えるが良い!」
「は?それはどういう意味っ……」
「遅いんだよ!ぎゃははは!」
‘‘激流の回転木馬’’が相手の魔力が支配している区域に入った瞬間、彼女の攻撃がそのままそっくりヘレナ自身に帰って来た。
勿論、彼女の放った魔法は魔力のほとんどを詰め込んだ、最後の一撃だった。
その魔法を打ち込んだことで、彼女は避けきれなかった。
結果、彼女はその渦巻く激流に飲み込まれた。
「ふはは!後は俺の力を流し込めば、完成だ。魔族の裏切り者が真の魔の神に……」
彼女をわが物とすべく力を出し続けていた、獣と化した魔神が彼女の元に走りよった。
その時、渦巻く激流の中から弾けるようにヘレナが出てきた。
「裏切り者?あたしが?一体何を言っているの?……あたしは裏切っていない。ただあの時生きていたかったの。お母さんと、お父さんと一緒に……」
「どうして、貴様出てこれた。しっかり閉じ込めたのに」
体が元の姿を保っていないせいか、思考が退化してきた魔神はどうにか疑問の言葉を口に出す。
「愚かね、本当に。私は人間ではないの。そう、貴方が言うように。だけど貴方が跳ね返した激流の回転木馬、それじゃ人間だった私も、魔族の血と前世と、記憶を受け入れた私にも効かないわ」
そう薄く笑って、最早力が尽きたただの獣を握り潰した。
そうして彼女は魔神を殺したことにより、全ての恨み、罪、罰、闇、絶望から離れらくなった。
「我が主、どうして……」
魔神に対し、何も出来なかった天使は変わってしまった彼女を見て、もう手遅れだと分かっていても彼女に語り掛けた。
「どうしてかしらね……。もっと早く貴方に助けてって言えば良かったのに……。だけどね、もうあたしはあなたといられない。分かると思うけどこの姿を見てよ……」
彼女は薄く笑って自分自身の力で黒い禍々しい鷲の翼を生やし、天高く、そして力強く飛び去ってしまった。
天使はその言葉を聞き、そのまま石の様になった。
石そのものになる前、天使の脳裏に浮かんだのは彼女と過ごした、柔らかく、穏やかな笑いがある日常だった。
天使が石になった直後大地が崩れ去り、世が平和な事で封じ込められていた古の怒りと暗闇の霊が封印を破り、蠢き始めた。
そしてその邪悪なる悪霊達が急速に時を速めたのか、二千年の月日と魔の力が流れていった。
~地下奥深くにある、とある二人しか知らない世界の記録木から~
この物語は、彼女を育て、見て、感じた人々の記憶。
彼らが見た彼女は力強い気力と、その時折見せる愛嬌が可愛らしい少女だったが、彼らは彼女の本当の気持ちを知らない。
彼女が普段人を助ける時、この戦場に来た時、真の正義の心で行動していたのか、はたまた憎しみの衝動で動いていたのか最早藪の中。
この、ワールドエンドは全て彼女の望んだ結末だったかもしれない。
ふと我は思った。
少々面倒だが、取りあえず我が記録していた再生水晶で回想していけば何か分かるかもしれない。
さあ、再生の準備が整ったので我と観ていこう。
その混沌の始まりを……。
実はこの作品は、最初にプロットなんちゃらを書き始めて四年も時間が経っています。
私はどうしてこんなに温めてしまったのでしょう。謎です。今投稿前に見直しましたが、若干恥ずかしいです。中二病真っ盛りじゃないですか…。でもやっぱり世界観や登場人物達を愛しています。私は彼らの産みの親です、彼らの事はいつまでも忘れません。
四年間、この卵をひっそりと抱いていた時期の事は思い出せませんが、今孵化させる気になったのは、何だか消えてしまいそうな気持ちになったので、何とかこの世に爪痕を残そうともう一度筆を執りました。
では、最後に。読んでくれる人がいるからこそ、アマチュア小説家の私は存在しているのです。この出会いに感謝を込めて。Youknow