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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

パンジーを仕舞い込む

作者: 伊織

「いい? 私たちは同じ人を好きになった。だけどそれは『ファン』として。『ガチ恋ファン』としてだよ。あっちにはもう相手いるし、私たちはただ遠くから見守るだけ。でも、もし、万が一、彼が私たちのどちらかを選ぶことがあれば、その時は恨みっこなしだからね」


 そう言っていた親友の隣にいるのは、私たちが好きになった彼だった。


 彼女にふられて落ち込んでいる彼を二人で励ましたのがきっかけだった。以前よりも彼との距離が近づいたように思っていたが、彼が選んだのは親友だった。


 最初のうちは私に遠慮していた親友も、今となっては私の前で仲良く笑い合う姿を見せている。

 大したことはない。ただ少し寂しいだけだ。いいな、と思っていた人が私の親友と付き合って、いつでもそばにいた親友が少し遠くへ行ってしまった。ただ、それだけのこと。




 昼休み、中庭のベンチでお弁当を食べている二人を見かけた。彼と昼食を取ることが多くなった親友がどこにいるのか気になっていた。あの場所は、親友と初めて出会った大切な思い出の場所。


「あの子の隣は私なのに」


 ようやく自分の気持ちに気づいた今、どうにもできない感情が涙となって押し寄せた。




「話ってなぁに?」

「あのね……」

「うん」

「私、ずっと前から……」


 言えない。この気持ちは言葉にしてはいけない。親友を困らせることなんて絶対にしたくない。


「……言いたかったんだけど、構ってくれなくなって寂しかったの。彼氏できて嬉しいかもしれないけど、たまには私と遊んでよ」

「あぁ……私としたことが親友を蔑ろにするなんて……ごめんね、親友。明日はお昼、一緒に食べよう! 放課後もカラオケ行こう! 大好きだよ、親友!」


「うん。私も大好き……」


 この気持ちに名前をつけてしまう前に、鍵を掛けて心の奥底へ仕舞い込む。悲しまないために。今という幸せを守るために。あなたを守るために。

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