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チャンプルーファンタジー  作者: 新里胡差
琉球 按司代行編
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第87話 中二按司

 目を覚ますと、カンカンの太陽に照らされていてすごくまぶしかった。


 俺は寝ている間に首里城の家から移動させられており、浦添城うらそえぐすく正殿せいでん前で立派な椅子に座らされていた。

 すぐ目の前には、大勢の兵士や民が集まっていて一斉に声を上げ始める。


浦添城うらそえぐすくめんそーれー(ようこそ)!』


「これは……何が起こっているんだ?」


 混乱していると、ナビーがやってきた。


「新しい按司あじがどんな人か、みんな気になって見に来たわけよ。うり、何か声をかけてあげなさい」


「急に言われても困るんだけど! 寝起きで頭が回らないし、こんな時何を言えばいいんだよ?」


浦添按司うらそえあじとして、この地をどうしたいか言えばいいさー」


 考える時間もないままこの場に立たせたくせに、無茶を言うなと言いたい。


 しかし、浦添の民は期待に満ちたまなざしを俺に向けているので、何か言わなければ示しがつかないだろう。


「あっ、えー、今日から浦添の按司あじ代理となりました、柴引しばひき子守こもりと申します。えー、私は皆さんも知っているとは思いますが、この世界とは異なる世界から来ました。言わばよそ者です。そんなよそ者の私が按司あじになることに納得がいかない人もいるとは思いますが、代理ですので安心してください」


『……』


「えー、私は主に戦いの面で期待されていると思っていますが、按司あじになった以上は皆さんの生活に関わる事にも力を入れていきたいと思っています。えー、ですので、生活で何か不満がある事や気になる事、何でもいいので正殿の私の所まで申し出て下さい。私ができる事でしたら対応していきます」


『……』


「えー、最後に、私は軍の強化を最優先にと考えていますので、これから鍛えていきたいと思います。兵士の皆さん、一緒に強くなりましょう。これにて按司あじの言葉とさせていただきます」


 静かに聞いていた民は、一斉に拍手や指笛で盛り上がると、頭上に拳を突き出して恥ずかしいコールをし始めた。


『中二やみー()! 中二やみー()! 中二やみー()! 中二やみー()……』


「やめてくれーーーーーー!」


 隣で立っていたナビーと目が合うと、ニヤリと口をゆがませた。


「やっぱりナビーが仕込んだんだな! 恥ずかしいからやめさせろ!」


ぬーが(なんで)。中二、中二言われていいやんべー(うらやましい)なのにな?」


 ……そういえば、ナビーは中二病がカッコイイものって感覚の人間だったな。


 それからも、中二やみー()コールがやむ気配がなかったので、たまらず正殿の中に逃げこんた。


 落ち着かない立派な玉座に座り、一旦落ち着くと、大事なことを思い出した。


「そういえば、琉美と話している最中に寝てしまったんだった。琉美はここにいないみたいだけど、どこに行ったんだ?」


「琉美はカマドおばーに弟子入りして旅に行きよったさー。しばらくは戻ってこないから、あたまに入れておきなさいね」


「弟子入り? たしか、自分が足手まといだとかいって悩んでいるみたいだったな。まったくそんなことはないのに」


「琉美は私たちと肩を並べて戦いたいって言っていたさー。強くなりたいうむい(想い)を邪魔してはいけないから応援してあげようね」


 たしかに、強くなりたいと思っている人にそのままでいいという人は、無責任な邪魔者でしかない。

 俺自身もそんなこと言われたらムカつくかもしれないと思った。


 ……でも、あれだな。琉美が修行して帰ってきたら、本物のバケモノになっていそうで少し怖いな。



 その時、1人の兵士が大急ぎで正殿に入ってきた。


「中二按司(あじ)! 緊急報告です!」


「ちょい待て! なんだよ中二按司(あじ)って?」


「え? 昨日、ナビーさんがそう呼称するようにと指導されたのですが」


 ナビーがごまかすように声を上げた。


「そんなことより、早く報告しなさい!」


「はっ! 先程、牧港まきみなとの海岸に、大和やまとの船がやってきたと報告がありました」


 尚巴志しょうはしから託された牧港まきみなとの戦いが、浦添按司うらそえあじ最初の仕事になりそうだ。


「わかりました。先に片付けてくるので、軍を率いて追いかけてきてください」


わかやびたん(了解)!」



 俺とナビーは白虎に乗って一足先に牧港まきみなとに向かうと、あの時のように20人ほどのさむらいが列をなして立っていた。


 白虎から降りると、ナビーは持っていたヒヤー(火矢)を白虎に括り付けながら注意してきた。


「シバ。わかっていると思うけど、なるべく傷つけないで倒しなさいよ。ヒンガーセジ(汚れた霊力)を吸収するだけでいいからね」


「うん。俺も尚巴志しょうはし王みたいに、武器を持たないで戦ってみるつもりだったから、大丈夫だよ」


「無理はさんけーな(するなよ)


 俺とナビーは一斉に侍に突っ込んで行ったが、何かがおかしい。

 というか、おかしくなかった。


「待ってシバ! こいつらマジムン化していないさー!」


 一旦足を止め、落ち着いてよーく見てみると、確かにマジムン化していない普通の人間のようだ。


「良かった。為朝ためとも軍に襲われないで無事だったってことだろ? とりあえず、挨拶に行ったほうが良いよな?」


やさやー(そうだね)。それに、尚忠しょうちゅう王にも伝えないといけないねー」


 尚忠しょうちゅう王にはナビーがテレパシーで伝えると、丁重に迎え入れろと命が下った。


 戦わなくていいと分かり、警戒を解いて近づいていくと、一斉に囲まれてしまう。


 隊のリーダーなのか、あごひげの立派な男が刀を俺たちに向けて怒号を上げた。


「琉球の者よ。交易相手であるにもかかわらず、我ら大和の使いの者を何人殺してきた!?」


「落ち着いてください! 私たちは大和と争う気はありませんし、侍たちは無事に保護していますので安心してください」


「嘘をつくな! これまで300人ほど琉球に送ったんだぞ!? みんな無事なわけあるはずがないだろ!」


 ナビーが1歩前に出た。


「とりあえず刀を納めてください。見ての通り、私たちは武器を持っていないので、恐れる必要はありません。それに、数分後には私たちを追って軍がやってきます。今は落ち着いて、話し合うのがお互いの為でしょう」


 ……刀を持たないで良かったな。


 その時、白虎がものすごい勢いで走ってくる気配を感じたので、大声で制止させた。


「とまれ!」


 速すぎて止まれなかった白虎はジャンプをし、俺たちの頭上を越えて着地した。

 いきなり現れた大きなシーサーに驚いて、数人の侍は腰を抜かしている。


 安心させるために白虎には距離を取ってもらった。


「私たちを襲わないのでしたら何もしません。今はとりあえず、私たちの城まで足を運んでもらえるとありがたいです。保護している侍の方々も待っていることでしょうし」


 あごひげの侍は刀をさやに納めてくれた。


「皆、刀を納めろ。もし、この者らが言っていることが確かなら、逆らえば我らはただの悪者になってしまう。今は信じてゆくしかない」


「あなたが聡明そうめいな方で良かったです。私の名前はナビーで、このお方は何を隠そう浦添按司うらそえあじの柴引・中二・子守。人呼んで中二按司ちゅうにあじと申しますので以後お見知りおきを」


「ちょい待て! 勝手にミドルネーム足すんじゃねーよ! しかも中二ってダサすぎるだろーが!」


 あごひげの侍は地に膝をついて頭を下げてきた。


按司あじとは領主の意であったと記憶するが、あなたがそうでしたか。この立派な獅子を飼いならすほどの力の持ち主。中二按司とはさぞ、お強い方とお見受けする」


「白虎は飼っているのではなくて、仲間です。それに、言っておきますが、私よりそちらのナビーが強いので、気を付けたほうが良いですよ」


『……』


「はっはっは!」


 沈黙の後、誰かが笑った。

 多分、俺が冗談を言ったと思ったのだろう。


 しかし、その笑い声も直ぐに消えてしまった。

 後から追ってきた浦添軍100がぞろぞろとやってきたのである。


「あ、あなた方のお話は嘘ではないみたいですね……うちの部下が笑ってしまい、申し訳ございませんでした。あの時襲っていたらと思うと、今になって恐ろしく感じます」


 軍の事をハッタリだと心の内で思っていたのか、少しおびえて見えた。


「威嚇みたいになってすみません。あの軍はここに戦いに来たわけではないので大丈夫ですよ」


「いいえ。恐ろしいのは軍ではなく、あなた達2人の事です」


 ナビーがニコニコしながら言った。


「それも大丈夫さー! もし襲われたとしても、返り討ちで全員気絶させればいいだけだったからねー」


 ……この作り笑いの感じ、さっき笑われたの怒っているな。

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