第86話 琉美の旅立ち
私は異世界琉球に来てからの1年間、シバとナビーの2人と肩を並べて戦えていない気がしていた。
もちろん、大量のセジのおかげで役に立っているということは理解している。
だけど、強敵になると私は危険なので、白虎に乗って逃げてもらっていることが多かった。
これでは、ただのお荷物なんじゃないかと考えるようになっていた。
私も2人と肩を並べて戦いたい。
そのための修行をナビーにつけてもらおうと考えていたのに、シバが浦添按司代理になったのでナビーも忙しくなる。
他に頼めそうな人がいないか考えていると、カマドおばーの戦いぶりを思い出した。
今の戦いでも、おばーとは思えないほど俊敏に動いていたし、セジの扱いが上手だということは知っていたので頼んでみることにした。
戦が終わってまだ時間がたっていないにもかかわらず、弟子のチヨと一緒に旅立とうとしていたカマドおばーを急いで呼び止めた。
「カマドおばー、待ってください! 話を聞いてもらえませんか?」
「あい、なんねー?」
「私にカマドおばー流の戦い方を教えてもらえませんか?」
「わんの戦い方を習いたいわけ? 急に何でか?」
「私って、敵が強いと全く役に立っていないように思えて……シバとナビーの隣で肩を並べて戦えるようになりたいんです!」
「琉美はいなぐだから戦う必要ないのだがな。ノロとしての仕事はでーじじょーとーだからよ。ナビーとわんのような変人の真似をしなくてもいいんだよ」
……自分の事を変人だと認識していたのか!
笑うのを我慢していると、隣で立っていたチヨも吹き出す寸前の顔をしていた。
「こらえるな。今のは笑うところだよ! それはいいとして、わんは初めて琉美を見た時から弟子にしたかったから大歓迎さー。やしが、2人には気持ちを伝えてからにしなさいね」
「わかりました、すぐに行ってきます!」
嬉しい気持ちのまま走り出したが、家に近づくにつれてなんて言えばいいのかわからなくなってくる。
家の前で立ち止まって話の始め方を考えていると、尚泰久が家から出てきて会釈をしてきたのでこちらも返した。
立ち止まっていると変に思われるかもしれないので、そのまま家に入った。
「ただいま。今のって泰久さんだよね?」
「うん。按司就任の激励に来てくれたんだ。護佐丸さんも来てたよ。琉美にゆたしくって」
「そうだったんだね……」
……どうしよう。まだ、話す内容まとまってないのに。
「琉美? 顔色悪いけど、カマドおばーのところで何かあったのか?」
……とりあえず、私の戦い方について聞こうかな。
「ねえシバ……私の事どう思っている?」
シバがもじもじし始めた。
やっぱり、私に良いイメージを持っていないのかもしれない。
「どうって、なんて答えればいいのかわからない……」
「私ってさ、セジの多さからすごいってよく言われるけど、それが戦いに生かされた気がしなくてさ。足手まといとはいかないまでも、シバとナビーの役に立っている気がしないと思わない?」
「なんだ、そういうことか」
もじもじしていたシバが胸をなでおろしている。
……あれ? もしかして私、変な聞き方しちゃってた!? あれでは、ただのめんどくさい女じゃない!
平常心を保って聞き返すことにした。
「何のことだと思ったの?」
「べ、別に。そんなことより、琉美は十分役に立っていると思うけど?」
……よし! これでうやむやにできたかな?
「さっきの戦いで白虎がすごかったじゃない? まあ、今までもだけど。それなのに、強敵が相手だと私を守るために白虎は戦いに加わらないでしょ? そのせいで足を引っ張っているんじゃないかって思ってたの……」
「そんなことないと……思う……」
シバが話し中に眠り始めた。
「シバ! シバ! ああそうか。昼夜逆転の効果で、ちょうどいま睡魔がきたんだ」
とりあえず、布団を敷いてシバを寝かせることにする。
「あいやー。シバは寝ちゃったか」
ちょうどナビーが帰ってきたので、一緒に運んでもらった。
「ナビー、大事な話があるの。私ね、カマドおばーに弟子入りして、修行を付けてもらうことにしたの。もうカマドおばーには許可をもらっている」
ナビーの表情が急に暗くなった。
「私のせいだね……」
「ナビーのせいじゃないよ! 何でそう思ったの?」
「強くなりたい気持ちの琉美を見て見ぬふりをして、わざと修行を付けなかったわけよ。強くなれば強い敵とも戦わないといけなくなるさーね? そしたら、危険が増えると思って……」
「そうだったんだ。でも、やっぱりさ、私も2人と肩を並べて戦いたいんだよ。本当はナビーに直接修行してもらいたかったけど、これからはシバのサポートが忙しくなるでしょ? だからカマドおばーに頼むことにしたんだ」
ナビーは私の手を取って謝ってきた。
「わっさいびーん……シバは私が面倒みておくから、しわさんけー。カマドおばーとの修行、思う存分やってきなさい。琉美にとっては、私よりも良い師匠になるはずさー」
私は手を引き寄せてナビーに抱き着いた。
「今まで私を守ってくれてありがとうね。ちゅーばーになって戻ってくるから楽しみにしていてちょうだい!」
「何言ってる。私の方こそ、この世界に来てくれてありがとうだよ」
「カマドおばーたち、すぐに出発するみたいだからもう行くね」
「シバには私から言っておくさー。それと、何かあったらテレパシー送りなさいね」
「うん。ナビーたちもだよ。すぐに飛んでいくから」
そして、静かにおすわりしていた白虎を思いっきり撫でた。
「白虎、今まで思いっきり戦わせてあげられなくてごめんね。あー、しばらく白虎に乗れないのが寂しいなー」
「クーン……」
最後に、ナビーと一緒にヒヌカンに旅立つことの報告と安全祈願をしてから家を出た。
「行ってきます!」
「んじめんそーれー!」




