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チャンプルーファンタジー  作者: 新里胡差
琉球 按司代行編
83/148

第83話 不器用な男

 その日の内で、2代目琉球国王が正式に尚忠しょうちゅう王に決まった。


 悲しんでいる暇はないようで、明日の国葬こくそうの事やこれからの琉球王国の体制を決めるための会議が開かれるようだ。


 日が落ちてきたにもかかわらず、訃報ふほうを受けた各地の按司あじたちが、ぞろぞろと首里城正殿にやってくる。


 主要人物が集まっているこの首里城が攻め込まれてしまえば、簡単に琉球王国は滅んでしまうと考え、俺たちは会議に参加しないで独自に城外で見張りをしていた。


「ここは俺と琉美が見張っているから、ナビーは会議に行けばいいのに」


「この状況だと、見張りの方が重要だから気にさんけー(するな)。内容は後でいくらでも聞けるから大丈夫さー」


 尚巴志しょうはしが亡くなって間もないからか、ナビーは無理をしているように感じる。

 琉美も気になっていたようで、ナビーの気を紛らわそうとしていた。


「本当はかたっ苦しい会議が嫌なんでしょ? ナビーってアニメとかゲームしているとき以外は落ち着きないからね」


「えー! アニメとかゲームのことを思い出してしまったやっしー! 最近、やっと忘れたところなんだからな!」


「怒るとこそこなの? 落ち着きないって言われるのはどうでもいいのね」


 俺もオタクなのだが、この世界に来てからは初めてのことだらけで、アニメやゲームの事をすっかり忘れていた。

 元々この世界で暮らしていたナビーは、俺とは逆で忘れることが大変だったようだ。

 ナビーの顔色がよくなった気がしたので、俺はさらに追い打ちをかけることにする。


「もう1年たっているからなー。ナビーが好きなゲームの新作が出たり、アニメの続きが始まっているかもよ」


「えー、シバはこっち側じゃないわけ? ドSなこと言わんけー。琉美ふーじー(みたい)さー」


「ナビー! シバに言いつつ、私に仕返ししないでよ!」


「ニヤリ」


 ナビーの不敵な笑みにつられて、俺と琉美は吹き出してしまった。



 俺たちの緊張感が少しほぐれた時、カマドおばーとケンボーがやってきた。


わったー(私たち)が見張りを変わるから、あんたがたはゆくいみそーれ(ひと休みしてきなさい)


「ですが、いつ敵が襲って来るかわかりませんので……」


「だからゆくっとけ(休んどけ)って言ってるわけよ! いざ、戦うときにくてーて(疲れて)いたら意味ないだろうが」


 ナビーに意見を求めようとした時、俺を見てうなずいていた。


「カマドおばーが変わってくれるなら大丈夫さー。私たちはご厚意に甘えて、休ませてもらおうねー」


 ケンボーが琉美を見て、まかちょーけー(任せとけ)と言わんばかりにニコッと笑みをとばしていたが、琉美は真顔で軽く会釈えしゃくをして白虎を連れて家に帰って行った。


「なんと凛々しく美しい!」


 俺とナビーも行こうとした時、カマドおばーが俺だけを捕まえた。


「あい! そういえば、あんたは『昼夜逆転』とかいう能力を持っていたよね? あんたは一緒に残りなさい」


「よ、よく覚えていましたね……わかりました。俺は残ります」


 もともと覚悟はしていたのだが、眠れると思ってからの見張り継続は精神的にキツイ。


「じゃあ、わん()ゆくって(休んで)こーねー」


 カマドおばーはケンボーを残し、ナビーと行ってしまった。


 ……自由すぎる。それに、ケンボーと2人はでーじ(とても)気まずい。


 ケンボーも疲れていると思い、休んで来るように言った。


「あのー。ケンボーさんも朝から疲れているのではないですか? 俺は大丈夫なんで、休んできてもいいですよ」


 俺に顔を向けたケンボーは睨んでくる。


「おい。今帰仁なきじんの戦いの時に、わん()が言ったこと覚えているか?」


 そういえば、ケンボーをかついで天邪鬼あまのじゃくから逃げた時に言われた「わん()は、ナビーが認めたいゃー(お前)と戦いたいと思っている」を思い出した。

 あの時は、ケンボーが俺に突っかかっていると勘違いしたナビーが、跳び蹴りをしたのでうやむやになっていたのだ。


「はい、覚えてます」


 ケンボーは持っている槍を俺に向けて、更に強い眼光を向けてくる。


おーいんどー(戦うぞ)!」


 今やるべきではないことは明らかだ。

 しかし、面倒を見てもらっていた尚巴志しょうはしが亡くなったばかりで心の整理がついていないのか、なんとも言い難い表情をしているので、簡単に断ってはいけないと思ってしまった。


 ……今のケンボーにはさ晴らしが必要かもしれないな。


「わかった。皆にバレたら怒られると思うから、向こうでやりましょう」



 近くにいた警備兵に外の警戒を任せて、俺とケンボーは人気がない場所に移動した。


わん()とナビーがやった、セジ(霊力)も使った何でもありでいく。いいな?」


「わかった」


 ケンボーは石を拾って上空に放り投げ、槍を構えた。


 ナビーのように全速の一撃で決めてもいいが、加減を間違えれば後の戦いに響くので、違う戦い方のほうが良いだろう。

 刀では槍の間合いに入って攻撃するのは難しいと考え、いなす用に一番短い北谷ちゃたん菜切ナーチリーを準備した。


 ポトッ!


 石が落ちた瞬間、ケンボーは穂先にセジをまとわせて突っ込んできた。


ティーダ(太陽)ボール! ヒンプンシールド・イチチ(5つ)! ティーダ(太陽)ボール・ミーチ(3つ)!」


 1発目のティーダ(太陽)ボールがあたる瞬間に、技ごとヒンプンの箱で閉じ込めた。

 そして、正面のヒンプンを壊したケンボーに向かって、あらかじめ放っていた3つのティーダ(太陽)ボールが全て当たった。


「1歩も動かずにここまでやるばー! もっと本気でやらないとダメみたいやっさー(だな)


 ケンボーは足を止めて槍を地面に突き刺した。


 ナビーと同じようにティンサグ(ホウセンカ)モードを発動した。


 ……カマドおばーの孫だから当然か。こっちも覚悟を決めないとな。


 全力でぶつかってくるケンボーに手を向くのは失礼だと思い、後の事を考えずに本気で戦うことを決心した。


「セジオーラ・レベル9。セジ刀・千代金丸ちよがねまる


 ケンボーは後方に20メートルほど下がり、更に槍にセジをめると、助走をつけて投げてきた。


「ぐあああああ!」


 俺は居合の構えでさやに風のセジ(霊力)めて、高速で飛んでくる槍に突っ込んだ。


クガニ(黄金)一閃・カジ()!」


 今までのクガニ(黄金)一閃に風の力をくわえて、さらに速くなった居合で槍を真っ二つに斬った。

 そのままの勢いでケンボーの間合いに入り、刀を首元で寸止めした。


「これが、今の俺の全力です」


「まだ終わってないぞ!」


 腰に差していた脇差わきざしを抜くのが見えたが、一応警戒していたので、左手で握っていたさやに火のセジをめて、顔に噴射させた。

 驚いたケンボーは尻もちをついて、脇差を放り投げて両手を上げている。


「降参! わん()の完敗さー!」


 負けを認めて立ち上がったケンボーは、清々しい顔で握手を求めてきた。


「本気で戦ってくれて、にふぇーでーびる(ありがとう)。とりあえず、見張りに戻ろうねー」


 見張りを再開して、2人で並んで座った。


「やっぱりシバはちゅーばー(強い)やっさー! わん()のとっておきの技を斬るし、不意打ちも通用しないからよ」


「あー、はい……」


 初めてケンボーと会った時からの、威嚇いかくをするような表情はすっかりなくなり、ニコニコ、ウキウキしながら話しかけてくる。

 あまりの変貌ぶりに頭がついて行かない。


「これで、わったー(俺たち)どぅし(友達)……だよな?」


どぅし(友達)?」


 その時、カマドおばーがやってきてケンボーにグスイ()をかけた。


「シバには傷がないってことは、ケンボーの完敗だったみたいだねー」


「カマドおばー? もしかして、こうなる事がわかっていたのですか?」


「ケンボーはな、わらばー(子供)の時から周りに同年代のいきが()がいなかったから、シバとどぅし(友達)になりたかったわけよ」


「そうだったんですか。ん? でも、いつも怖い顔で睨まれていたし、何で戦うことになるんですか?」


「緊張したケンボーは、表情が硬くなって口調が強くなるからねー。それに、ケンボーがわん()どぅし(友達)の作り方を聞いてきたときに、全力でぶつかりあえばなれるさーって言ったわけよ」


「そのせいで友達ができなかったんじゃ……」


 回復を終えたケンボーは、立ち上がってもう一度手を差し伸べた。


「シバ。これからはどぅし(友達)として、ゆたしく(よろしく)うにげーさびら(お願いします)!」


「ゆ、ゆたしく(よろしく)うにげーさびら(お願いします)


 カマドおばーは俺とケンボーの背中を強めに叩いた。


「じゃあ、引き続きゆたしくな(よろしく)!」


 今度は本当に休みに行ったようだ。

 改めてケンボーと2人で座っていると、友達になる前より気まずく感じる。


「シバ。また戦ってちょうだいよ!」


「う、うん」


「シバ。今度、一緒に修行したいさー」


「たまにはいいかもね」


「シバ。一緒に酒も飲もうな。あっ、やしが(だけど)、20歳までは飲まないって言っていたっけ? それまではお預けやっさー」


「う、うん」


「あ! そういえば、琉美さんの事だけど……」


 ……為朝ためとも軍、早く来てくれ!


 友達ができたことが余程嬉しかったのか、ナビーたちが戻ってくる朝方まで、ずっと話かけられ続けた。

 キジムナーと友達になった時とは違う怖さを感じた。

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