第74話 新たな3将軍
「この声は、キジムナーなのか!?」
「オラだけど、お前ら戦いの最中じゃないのか?」
ナビーと白虎のヒーフチュンは強力ではあったが、レベルアップしたウフウニを倒すには至らなかったようで、体勢を整えて襲い掛かってきていた。
白虎に乗ったまま、イシ・ゲンノーをしたナビーが近づいてきたので、いったんキジムナーの事は置いといて、戦いに集中することにする。
「ウフイシ!」
「ヨーカブシ!」
俺とナビーが作り出した大岩を琉美が振り回しながらウフウニにぶつけたが、2匹のウフウニに持っていた金棒で打ち付けられ、粉々に砕かれてしまう。
しかし、衝撃に耐えられなかった2本の金棒が、上空に舞っているのを確認する。
その一瞬を俺とナビーはのがさなかった。
「秘める、セジオーラ、レベル9。クガニ一閃!」
「獅子突進」
俺と白虎の技で1匹ずつのウフウニを倒すことができた。
落ち着く暇もなく、強化したもう2匹のウフウニが襲い掛かってきたので、もう一度居合の構えをする。
「フィーヌ一閃!」
燃える刀は黒い不気味な金棒に止められてしまったが、俺は鞘の鯉口を敵の顔に向けて火のセジを一気に籠めた。これは護佐丸が為朝にやっていた技だ。
顔に火をかけられてひるんだウフウニに、至近距離からティーダボールを放つと、何とか倒すことができた。
すぐにもう1匹の方を見ると、ナビーたちがすでに倒していた。
「後は、ヒンガーホールを維持しているあの1匹だけだな」
最後のウフウニは仲間が全滅しても、ヒンガーホールから離れる気配はないようだ。
その時、再度キジムナーがテレパシーを送ってきた。
「まだヒンガーホールは残しておけよ。繋げられなくなるからな」
「忠さん、待ってください!」
最後の1匹を倒そうとしていた尚忠を、ナビーが止めに入る。
キジムナーの声が聞こえていない尚忠は、なぜ止めるのかわからずに困惑していたが、俺はキジムナーとの話を進めた。
「もしかして、ヒンガーホールでつながっている間はテレパシーがつながるってことか?」
「それだけではダメだ。ヒンガーホールをよく見てみろ。オラがガジュマルのひげを伸ばしたら、それがアンテナのようになってつなげられたんだ」
言われた通りにヒンガーホールを確認すると、ちょろっとひげが出ていた。
「そういえば、そっちの世界にマジムンがたくさん渡ったみたいだけど、大丈夫だったのか?」
「ヒンガーホールができて3日目だが、全然大丈夫だ。ちょうど、ミシゲーとウッシーを鍛えるいい機会だったぞ!」
調子に乗ったミシゲーとウッシーが、キジムナーにしごかれている画が頭に浮かんだ。
その時、琉美がキジムナーに謝った。
「キジムナー、私だけさよならできなくてごめんね」
「ナビーにバレないようにしたんだろ? 気にするな。そんなことより、渡し忘れていたオラからのはなむけがある。シバと琉美と白虎は、ガジュマルのひげに触れてくれ」
ナビーがウフウニを警戒しているのを確認して、キジムナーに言われた通りにひげに触れると、キジムナーのセジが体に流れ込んできた。
「これでお前らも、好きな時にテレパシーが使えるようになったぞ」
「キジムナーとナビーみたいに、こちらから話しかけることができるってことか。この世界ではスマホが使えないから、すごく助かるな」
琉美はキジムナーに、お礼とお願いをしてきた。
「これで、戦いの連携もとりやすくなるね。ありがとうキジムナー! 今ね、王子の尚忠さんっていう人と一緒に戦っているんだけど、同じのやってくれないかな?」
「悪いが、これはオラがちむぐくるから信頼している奴にしか与えられない。だけど、マーキングだけはしてあげられるぞ。護佐丸の時のようにな」
護佐丸の時のように、が何のことかわからなかったのできいてみると、為朝戦で俺とナビーとキジムナーが為朝から逃げた時、助けに入った護佐丸とすれ違いざまにマーキングしていたらしい。
……そういえばあの時、ナビーはいつの間にか護佐丸さんと話していたんだっけ。
1人取り残された尚忠を琉美が引っ張って、ヒンガーホールの前に連れて来た。
「ぬーそーがー!? ぬーそーがー!?」
「忠さん大丈夫ですから! キジムナーお願い!」
警戒している尚忠のおでこに、ガジュマルのひげがちょこんと触れた。
「後で説明しますので、今は気にしないでください」
不安ながらも琉美の言葉を受け止めてくれた。
すると、ウフウニを警戒していたナビーが焦りながら言った。
「そろそろ撤退しないと、城門前のグナァウニが来るかもしれないさー」
キジムナーと話ができたことに気を取られて、俺たちが敵地のど真ん中にいることを忘れていた。
「ごめんキジムナー。もっと話したいけど、ここから逃げないといけないから、ヒンガーホールを消滅させるぞ」
「ああ、わかった。この世界の事はオラが何とかするから、お前らはそっちで頑張れよ! 最後に、首里城は当分修復しそうにないみたいだぞ。じゃあ……」
ヒンガーホールから出ていたガジュマルのひげが引っ込むと、通信が途絶えた。
「最後に爆弾投下してきたな……まあ、最後のウフウニ倒して早く撤退しようか……」
ナビーが警戒を解き、尚忠に最後のとどめを任せた。
「接待を受けているみたいでちむいちゃさんが、厚意に甘えておくとするか」
尚忠の迷いのない一振りで最後のウフウニを倒し、ヒンガーホールを消滅させることに成功した。
「うんじゅなーがちゅーばーなのはわかっていたつもりだったが、まさか、あの数を全滅させるほどとはな。ちびらーさん! では、急いでひんぎるとするか」
俺以外は白虎に乗って、とりあえず山の隠れ家に全速力で向かおうとした時、城内中心側にある石垣の上に、グナァウニよりは一回り大きな、着物を着た小鬼が仁王立ちで立っていた。
「あーあ。これはひどくやられちゃったねぇ。為朝様に怒られちゃうかな?」
小鬼はそこからジャンプをして、俺たちの前に立ちふさがった。
俺はすぐに、会得したばかりのテレパシーでみんなに問いかけた。
「こいつは、ウフウニより小さいからって弱いわけではなさそうだぞ。戦わないで逃げたほうが良いかもしれないな」
「君の判断は正しいよ。だけど、逃がさないから」
仲間より先に、小鬼が俺の問いかけに答えてきた。
俺は間違って考えを口に出してしまったのだと思った時、今度はそれを小鬼が否定してきた。
「君は何も口に出していなかったから安心していいよ。それにしても、頭の中で会話できるなんて、便利だね。為朝様にとって脅威になるかもしれないから、死んでもらおうかな」
ナビーが白虎から降りてヒヤーを構えながら小鬼に問いかけようとしたが、被せるようにすぐに答え始めた。
「いゃーはたーやが……」
「僕は、新しい3将軍として為朝様によって誕生させてもらった。仲間からは天邪鬼と呼ばれているので以後よろしく。とは言っても、残り数分の命だけどね」
ただ者ではないとは思っていたが、まさか3将軍だとは思ってもみなかった。
それに、確実に心を読まれているので、そのまま戦っても負けてしまうことが簡単に想像できてしまう。
俺はナビーにテレパシーでどうするかを聞こうと頭に浮かべると、天邪鬼が細長い金棒をもって警戒してきた。
「ほう、お前たちが駿馬順熙先輩を倒したナビー一行だったのか。なめてかかるのは得策ではなさそうだね」
お互い武器を構えていつでも戦いが始まりそうな雰囲気の中、少し離れて白虎に乗ったままの尚忠が天邪鬼に対して啖呵を切った。
「いゃーはあの数のウニをたっぴらかしたわったーに、勝てると思っているのか?」
「もしかしてお前ら、大鬼を倒したくらいでいい気になってるのか? あれは、僕たち3将軍を作るときにできた、ただの失敗作なんだよ。威張られても困るよ」
「う、ウフウニが失敗作だと!? そんな馬鹿な……」
尚忠が絶望しているのを見て、馬鹿にしたように笑う天邪鬼。
その時、ナビーが大声で叫んだ。
「琉美、私とシバで時間を稼ぐから忠さんとひんぎれ!」
「わかった!」
「嘘はよくないよお姉さん」
わかったと言ったはずの琉美は、逃げずに天邪鬼に向かって龍のムチで攻撃していた。
しかし、やはり心を読まれていたのか攻撃を避けられてしまい、突っ込んできた天邪鬼の金棒が琉美の頭上に振りおろされようとしていた。




