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チャンプルーファンタジー  作者: 新里胡差
琉球 今帰仁城偵察編
73/148

第73話 難しい選択

 急いでナビーの元に向かい、見つめている方向を確認した。

 グナァウニ(小鬼)マジムンが集まっている中心に、子供が入れるくらいの黒い穴ができている。


「何でヒンガーホールがあるんだよ!? 向こうの世界の今帰仁城なきじんじょうセジ(霊力)は、使い切ったから当分は大丈夫って話じゃなかったか?」


「そうだと思っていたけどねー……あれ見てごらん。ウフウニ(大鬼)が10匹でヒンガーホールを作っているみたいさー」


 1000以上のグナァウニ(小鬼)マジムンを作り出せるウフウニ(大鬼)マジムンが、10匹がかりでヒンガーホールに向かってヒンガーセジをめていた。

 そして、グナァウニ(小鬼)が1匹ずつ中に入って行くのを確認した。


「やばい! 向こうの世界にグナァウニ(小鬼)を送っているのか!? すぐにやめさせないと!」


 俺は考えなしに飛び出しそうになったが、ナビーが同じく焦りながらもとめてくれた。


「待て! 気持ちはわかるけど、今は偵察ていさつ中ってことも忘れるなよ! やしが(だけど)ちゃーすがやー(どうしよう)


 とりあえず、ナビーのテレパシーで琉美に状況を伝えた。


「2人とも落ち着いて。向こうにはキジムナー達がいるから、グナァウニ(小鬼)くらいなら問題ないんじゃない? でも、このままってわけにもいかないから、いったん戻ってちゅうさんも含めて話し合おうよ」


「でも、監視しておかないと何するかわからないぞ。ナビー、ちゅうさんもテレパシーに加われないのか?」


「これはキジムナーの特技を使わせてもらっているだけで、キジムナーがマーキングした人にしかできないわけよ」


 そういえば、キジムナーと初めて会った日の去り際に、頭にセジを流し込まれたのを思い出した。


 ……あれがマーキングだったのか。


 しょうがないので、一旦冷静になるために琉美の言う通りに一時撤退して、2人と安全な場所で合流することにした。

 尚忠しょうちゅうに見たままの状況を伝えると、難しい顔をしている。


じゅんになー(本当に)!? ちゃーすがやー(どうしよう)……」


「俺は、ヒンガーホールだけでも消滅させたいです。あんな数のグナァウニ(小鬼)が送り込まれたら、いくらキジムナーが強くてもいずれ限界が来る。そしたら、向こうの世界は大変なことになりますので」


 みんな難しい顔をして考え込んでいると、ナビーが口を開いた。


「今回の偵察ていさつは琉球王国にとって、今後の戦況を左右するてーしち(大切)な作戦さーね? やしが(だけど)、偵察のためにこれを無視して、この数のグナァウニ(小鬼)をあっちの世界に送り込まれたら、でーじ(大変)なことになる。ここは、どっちかをあきらめる選択をしないといけないみたいだね……ちゅうさんの考えをきかせてください」


わん()は、次期王として、琉球の利益を第一に考えてしまう……」


 その言葉を聞いたとき、俺は尚忠しょうちゅうを振り切ってでもヒンガーホールを消滅させる決意をかためた。


 ……立場的にしょうがないのだろうけど、こっちも自分の世界がかかっているんだ。


 その時、左手で顔を抑えて黙り込んだ尚忠しょうちゅうは、不気味に笑って顔を上げた。


「ナビー、シバ、琉美! うんじゅなー(あなた達)がやりたいようにやりなさい……と、たーりー()ならおっしゃるだろう。あんくとぅ(だから)、王子であるわん()が、尚巴志しょうはし王に代わって命令を出す。ヒンガーホールを消滅させて、共に首里までひんぎる(逃げる)ぞ!」


 俺たちはガッツポーズやハイタッチで喜び、尚忠しょうちゅうに向かって深いお辞儀をした。


「ありがとうございます!」


「礼はしむさ(いらない)。一緒に旅をしてきて、琉球にはうんじゅなー(あなた達)の力が必要だと感じた。ここで、わん()が選択を間違えれば、うんじゅなー(あなた達)に見限られるかもしれない。琉球の利益をかんげーれば(考えれば)、そんな選択をするわけにはいかなかっただけさー。きにさんけー(気にするな)


 俺は、これからはできるだけ尚忠しょうちゅう王子の力になりたいと思った。

 こんな気持ちにさせた要因が戦略だとしても、心を動かされたのでしょうがない。


「でも、どうやって攻めればいいのかな? ヒンガーホールを消滅させるには、それを作っている10匹のウフウニ(大鬼)を倒さないといけないんでしょ? それも、数千のグナァウニ(小鬼)がいる中でさぁ」


 浮足立っていた俺は、琉美の冷静な声と質問で少し落ち着くことができた。


「そうだな、まずはヒンガーホールの周りにいるグナァウニ(小鬼)奇襲きしゅうで大幅に倒して、戦場スペースを作ったほうが動きやすいかな? それとも、直接ウフウニ(大鬼)に奇襲が良いか……ナビーはどう思う?」


「どっちも大事だねー。ちゅうさんと私とシバの3人でウフウニ(大鬼)に奇襲をかけて、できるだけ数を減らす。琉美は白虎と一緒に、ヒンガーホール周辺のグナァウニ(小鬼)を一掃する。それからは、私たち3人の戦いを邪魔しそうな奴だけ倒してちょうだい」


 黙って作戦を聞いた尚忠しょうちゅうはうなずいた。


「あの数だから、セジを節約しながら戦うってことか。それに、ひんぎる(逃げる)事までかんげーんと(考えないと)いけないからな」


「そうですね。私も、ティンサグ(ホウセンカ)モードはできるだけ使わないで、ひんぎる(逃げる)ときに取っておこうと思っています」


 ……俺もセジオーラは極力使わないようにしないといけないな。


「じゃあ、俺とナビーはアースン(合わせ技)をうまく使って、強力な技を効率よく使って行こう」



Lv.65 


HP 775/775  SP 590/655


攻撃力 712 守備力 946 セジ攻撃力 507 セジ守備力 830 素早さ 719


特殊能力  中二病  マージグクル(土心)  昼夜逆転  


      身代わり  ティーアンダー(手油) 

 

特技 テダコ(太陽の子)ボール Lv.10    ティーダ(太陽)ボール Lv.8


   イシ・ゲンノー(石ハンマー) Lv.8    セジ刀 Lv.10


   ヒンプンシールド Lv.10  セジオーラ Lv.9      


   カジマチ(つむじ風) Lv.4



 各々の役目を頭に叩き込み、再び城壁のふちまで登ってスタンバイをする。


アースン(合わせ技)、ヒンプンロード!」


 俺とナビーのヒンプンで、ヒンガーホールの真上まで道を作って一斉に駆けて行く。

 ヒンガーホールにセジをめているウフウニ(大鬼)マジムンを確認したとき、尚忠しょうちゅうがその一匹に斬りかかっていった。

 少し遅れて俺とナビーは息を合わせて攻撃をする。


アースン(合わせ技)火災旋風かさいせんぷうターチ(2つ)!」


 炎の竜巻で周りのグナァウニ(小鬼)を10匹程度は倒せたが、流石のウフウニ(大鬼)マジムンはひるみはしたが耐えていた。


咆哮波ほうこうは!」


 上空から咆哮波でグナァウニ(小鬼)を吹き飛ばした琉美と白虎は、そこに着地をして辺りを警戒してくれている。

 それを見て安心した俺は自分の敵を見据えたが、7匹のウフウニ(大鬼)は攻撃を受けたにもかかわらず、ヒンガーホールを維持することだけに集中していた。


 ……1人1匹で対処するように命令されているのかもしれないな。それなら何とかなりそうだ。


 俺は千代金丸ちよがねまるを腰に差し、1匹目のウフウニ(大鬼)に構えた。

 そのさやをナビーが握り、風のセジを籠めたので、一緒に火のセジを籠めて抜刀した。


アースン(合わせ技)火風斬かふうざん!」


 飛ぶ斬撃が燃えながらウフウニ(大鬼)を襲うと、胴体を横一線に焼き切った。

 尚忠しょうちゅうはがらにもなく、声を裏返りながら驚いている。


「一発!? ウフウニ(大鬼)を1発ってきいたことがないさー」


 すると、ヒンガーホールにセジを籠めている7匹のうち2匹が戦いに加わって、俺とナビーに対して3匹で固まって襲い掛かってきた。

 残り1匹は、尚忠しょうちゅうと戦い始めている。


 ナビーが懐から石を取り出しアイコンタクトをしてきた。


「ヒンプンシールド・ユーチ(4つ)!」


 俺はヒンプンシールドでウフウニ(大鬼)3匹を閉じ込めて、思いっきりジャンプをする。

 俺が飛んだタイミングに合わせて、ナビーはイシ・ゲンノー(石ハンマー)をしたまま近づいてきたのでそれに手をそえてセジをめた。


アースン(合わせ技)ウフイシ・ゲンノー(岩ハンマー)!」


 閉じ込められたウフウニ(大鬼)の頭上に大きな岩を振り落とした時、琉美の声が響いた。


「それもらうよ!」


 龍のムチが岩に噛みついて一体化すると、琉美はそれを振り回してグナァウニ(小鬼)を蹴散らし始めた。


「やべえなあの技。これって、3人でアースン(合わせ技)したってことか?」


やんやー(そうだね)。技名はヨーカブシ(モーニングスター)にしようかねー。そんなことより、まだウフウニ(大鬼)が残っているさー」


 ウフイシ・ゲンノー(岩ハンマー)だけでは倒せていなかったウフウニ(大鬼)を、直接斬りかかって倒した。

 その時、ようやく1匹を倒した尚忠しょうちゅうが疲れた様子で近づいてきた。


「はあ、くーてんぐゎー(少し)くらってしまったさー。ナビー回復をうえええー!」


ムチグスイ(鞭薬)!」


 琉美は戦況を把握していたので、すぐに尚忠しょうちゅうを回復していたが、尚忠は初めてムチグスイ(鞭薬)を受けたので、何か勘違いをしていた。


「琉美は戦いの最中にも人を叩きたくなるのか!? わん()は叩かれんちゅ()あらんどー(違うよ)


「なわけないでしょー! これは回復の技です。回復は私がするから、戦いに集中してください!」


 俺とナビーは、吹き出しそうになったが必死にこらえて、次のウフウニ(大鬼)を見定めた。

 その時、ヒンガーホールを維持していた残りの4匹は、辺りにたくさんいるグナァウニ(小鬼)からヒンガーセジを吸収し始めると、金棒をもって臨戦態勢に入った。

 1匹だけは小さな穴を何とか維持している。


「あの数のグナァウニ(小鬼)を4匹で全部吸収したってことは、相当強くなっているかもな。雰囲気が全然違う」


 尚忠しょうちゅうは目を丸くして固まっている。


「こんなの見たことがない。もしかして、今までわったー(私たち)が倒してきたウフウニ(大鬼)は、ただの出涸でがらしの様なものだったのかもしれないな。わん()の強さでは、良くて相打ちといったところか……」


「大丈夫ですよ忠さん! グナァウニ(小鬼)がいないってことは、琉美と白虎も戦いに加われるさー。急いでたっぴらかして(叩きのめして)けーゆんどー(帰るよ)!」


 その時、琉美が白虎から降りて俺とナビーにお願いした。


「さっきの技、手ごたえあったからもう1回やってもいい?」


ヨーカブシ(モーニングスター)な? やしが(だけど)、白虎に乗らないで大丈夫ね?」


「なんか、白虎も戦いたいみたいで、そわそわしていたんだよね」


 すると、白虎は自分でヤンバルスパイクを出して、端にいるウフウニ(大鬼)めがけて獅子突進ししとっしんをした。

 ウフウニ(大鬼)咄嗟とっさにもう1匹が加わり、2匹がかりで金棒を使い受け止めてしまう。


「今の攻撃に対応するって相当強くなっているな。白虎だけでは少し無理をさせそうだけど、どうするナビー?」


「私が白虎に乗ってアースン(合わせ技)してみようかね」


 そういったナビーはノリノリで白虎にまたがり、ヒヤー(火矢)を構えて走らせた。

 先程のウフウニ(大鬼)2匹に近づいたとき、ナビーはヒヤー(火矢)の先端を白虎の口の前に構えてティーダ(太陽)ボールを作り、白虎はそれに咆哮波ほうこうはを放った。


ヒーフチュン(火吹き)!」


 白虎の口から出たように見えるすさまじい火炎放射が、2匹のウフウニ(大鬼)を襲う。

 そして、俺と琉美の頭の中にナビーの声がきこえた。


「シバ、琉美、ヨーカブシ(モーニングスター)行くよ!」


『オッケー!』


 ナビーに返事をしたとき、聞き覚えのあるどぅし(友達)の声が頭に響いてきた。


「お前ら楽しそうだな! 無事にやっているようで安心したぞ!」

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