表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チャンプルーファンタジー  作者: 新里胡差
琉球 今帰仁城偵察編
67/148

第67話 按司集結

「ナビー対西平総賢(にしひらそうけん)。試合はじめっ!」


 仕切りの兵が手を振り下ろして開戦の合図をすると、ケンボーが低い体制のまま槍を構えて、一直線に走り出す。

 ナビーはそれに見向きもせずに、あらかじめ地面に突き刺していたヒヤー(火矢)セジ(霊力)めていた。


ティンサグヌハナ(ホウセンカの花)チミサチニスミティ(爪先に染めて)


 赤いオーラをまとい、大量のセジを消費して急激に戦闘力を上げるティンサグ(ホウセンカ)モードを初っ端から使ったナビーは、ヒヤー(火矢)を野球のバッターのように構えてケンボーを引き付けた。


「行くぞーーーー!」


 槍の先端にまとわせたセジの球がナビーの腹部に襲い掛かる。

 しかし、ナビーは横跳びでサッとかわすと、構えていたヒヤー(火矢)をケンボーの腹めがけてフルスイングした。


「グヘッ!」


 ケンボーは首里城の敷地外まで、アーチを描くように飛ばされてしまった。

 あまりのあっけなさに、観客は口を半開きにして固まっている。

 仕切りは呆然としながらも、勝ち名乗りをした。


「しょ……勝者、ナビー」


 ナビーはすぐにティンサグ(ホウセンカ)モードを解いて、満足げな顔をしながら俺たちの観戦場所に歩いてきた。


「城外ホームラン、気持ちよかったさー! 琉美、お願いしていたことお願いね」


「お願い? ああ、回復の事か。マブイ()が落ちて無ければいいけど……」


「大丈夫よ。私がヒヤー(火矢)すぐる(殴る)瞬間に、セジでお腹を強化していたからよ。まさか、そんなことができるようになっていたとは思わなかったさー」


 琉美は白虎にまたがり、ケンボーのとんでいった方向に急ぐ。

 死ぬかもしれないからと回復を琉美に頼んでいたのは、ナビー自身の為ではなく、ケンボーの為だったようだ。

 初めから全く負ける気はなく、本気で叩きのめす気満々でいたのだろう。


「強化できるってわからなかったのに、あんな攻撃をくらわせたのかよ……」


「何言ってる? ケンボーも私をたっぴらかす(叩きのめす)気まんまんだったさー。あの槍の先に触れたら私もただでは済まなかったから、これでいいわけよ」


 槍の先端に丸いセジを作ったのは、刃物である穂を覆うためではなく、さらに攻撃力を高めるためだったようだ。

 それなら、ひどいやられ方をしたケンボーも文句は言えないだろう。

 そもそも、何でもありのルールで始めていたのだった。


 尚巴志しょうはしが俺の隣にいる佐司笠さすかさに、耳打ちしているのが聞こえる。


佐司笠さすかさ。ナビーの奴、ワシよりちゅーばー(強者)になってないか? 全く勝てる気がしないのだが……」


やさや(そうだね)。ケンボーも単純な強さでは、按司あじたちと互角なのじゃが……」


 按司あじとは簡単に言えば領主や豪族の事で、護佐丸ごさまるがそれにあたる。

 異世界琉球では、民を導けるリーダーシップを持ちつつ、兵をまとめ上げられる強さを持った選ばれし者しかなれないそうだ。

 護佐丸ごさまるには負けるだろうが、他の按司あじたちと互角に戦えるケンボーは、思った以上に強い人みたいだ。

 尚巴志しょうはしがナビーに向き直り、腫れ物に触るように褒めたたえた。


「な、ナビー……うすまさちゅーばー(とても強く)なっとんな(なったね)……ちびらーさん(素晴らしいよ)


にふぇーでーびる(ありがとうございます)やしが(だけど)為朝ためとも舜天しゅんてん義本ぎほんを倒すことを考えたら、このままではまだまださー」


 その時、ケンボーを白虎にくわえさせ、琉美が戻ってきた。


「ねえ、ナビー。こいつ、気持ち悪いんだけど。どうにかしてよ!」


「何かされたのか? えー、ケンボー! 琉美にぬーそーが(何したのか)?」


 白虎に吐き出されて地面に転がったケンボーは、直ぐに立ち上がり琉美を見つめている。


「まだ何もしてないぞ。それより、なー(名前)は琉美というのですね。かーぎ()だけではなく、なー(名前)ちゅらさん(美しい)さー。ああ、まさに天女! うんじゅ(あなた)ゆみ()にできたら、あの察度さっとの父も嫉妬しっとするでしょう」


 察度さっととは、琉球が統一する前の中山王ちゅうざんおう浦添城うらそえぐすく按司あじ)で、その父は羽衣はごろも伝説の天女と所帯を持ったと言われている。


「えー、しにはごーさよ(とても気持ち悪い)! ケンボーは2度と琉美にちかよらんけー(近寄るな)


 琉美が困っているのを見た佐司笠さすかさは、警備兵にケンボーを連れて行くように命令して、城の外に追い出してくれた。


「回復してあげたら急に告白してきて、キモかったよ。ケンボーはナビーの事を好きだと思ったのに……」


かんちげーさんけ(勘違いするな)! ケンボーはいなぐ()の私に負けるのが悔しくて、突っかかってきているだけさー。どちらかといえば、私の事は嫌っているはずよ」


 幼いころから女の子に負け続ければ、その女の子の事を好きになれない気持ちはよくわかる。

 男のプライドを傷つけたナビーを好きになるはずがないのだ。


 話題を変えるために尚巴志しょうはしが咳払いをした。


「ゴホン! かしましい(うるさい)のがいなくなったので、てーしち(大切)な話をしようか。ナビー、シバ、琉美はワシが思っていた何倍もちゅーばー(強者)みたいさー。これからうんじゅなー(あなた達)には、戦略上てーしち(大切)な作戦に参加させることもあるだろう。その時は|ゆたしくうにげーさびら《よろしくお願いします》」


 ナビーは白虎を撫でながら、尚巴志しょうはしに指摘する。


「白虎のことわしんなよ(忘れないで)。今まで何度も活躍してきた、てーしち(大切)しんかやいびん(仲間ですから)


「もちろんさー。やさ(そうだ)! 白虎の能力を知るために、今からワシが乗って……」


 佐司笠さすかさが声を荒げながら尚巴志しょうはしの言葉を遮った。


「えー、危ない目にあったくせに、まだそんなこと言ってるのか!? これから、負傷した兵に何があったかを聞きに行く予定じゃっただろうが。ナビーたー()は戦い続きでくてーた(疲れた)じゃろ? しばらくはよーんなーしみそーれゆっくりしてちょうだい



 それから5日間は特に用事ができることもなく、心も体も十分に休めることができた。

 1つ気になることがあった。

 首里城内をナビーに案内してもらったり、食事の際に正殿に行くときなど、家から離れている時間はずっと監視されている気がして落ち着かなかった。

 誰だかめぼしはついていたが、関わると面倒くさそうだし何もする気配はなかったので、ナビーと琉美には気が付くまでは黙っておくことにする。

 いつものように、正殿1階で薄味のお昼ご飯を食べて家に戻ろうとした時、使いの者が2階から慌てて駆け下りてきて呼び止められた。


「お待ちください。ナビー一行を直ちに王座に連れてくるようにと、佐司笠さすかさ様から命を受けました。そのまま2階にお上がり下さいませ。按司あじのお方たちもお待ちしておりますので」


 ……按司あじのお方たちって、護佐丸さんもいるのかな?


 使いの者に案内されて2階に上がると、謁見えっけんの時に並んでいた人たちとは異なり、15人の勇ましい男性が王座の前に縦2列に並んで座していた。

 右列の前方に護佐丸ごさまるが見えたので、この人たちが按司あじなのだろう。


「ナビー一行をお連れしました」


 王の間にいる全員が一斉にこちらを向いた。

 ぐすくを治めているだけあって、按司あじたちからは威厳を感じ、鋭い視線に圧倒されそうになる。


「急に呼び出して済まないな。中央まで来てくれ」


 皆に見られながら、恐る恐る尚巴志しょうはしの言葉に従う。

 歩きながら護佐丸ごさまるをチラッと確認すると、微笑みながらうなずいてくれたので少し緊張が解けた。


「現在、各地のぐすくを治めている有力な按司あじたちを緊急招集して、大事な作戦会議を行っている。そこで、按司あじたちにうんじゅなー(あなた達)を紹介しながら、会議に加わってもらいたいと思って呼び出したのだ。まあ、あらかたワシと護佐丸ごさまるうんじゅなー(あなた達)の説明はしているので、本題から入ろうかのう」


 ナビーが返答しようとした時、1番若い20代前半くらいの按司あじの1人が、俺たちを見ながら鼻で笑ってきた。


「ふん。尚巴志しょうはし王、流石におたわむれが過ぎますぞ。護佐丸ごさまる殿も称賛するのでどんな奴かと思えば、いかにもよーばー(弱者)わかむん(若者)ではないですか。ナビーだけならまだしも、こんなしらんちゅ(知らない人)に大事な作戦を聞かせてもよろしいのですか? 僕は反対です」


「おう、カナー! ちゃーがんじゅー(いつも元気)だね」


尚巴志しょうはし王、いい加減幼名(ようみょう)で呼ぶのはやめてください。今は阿麻和利あまわりと名乗っておりますので。それに、わらばー(子供)扱いはよしてください」


わっさいびーん(ごめん)勝連かつれん麒麟児きりんじ阿麻和利あまわりの手腕にはいつも助かっている。わらばー(子供)扱いはよくなかったさー。やしが(しかし)……シバと琉美を馬鹿にすることはゆるさんぞ!」


 笑い交じりに話していた尚巴志しょうはしが、俺たちをかばうときだけ豹変ひょうへんして怒号を上げた。

 この場にいる皆、王の本気の怒りを感じ取り緊張が走った。


たーりー(父さん)、落ち着いてくれよ。みんなが委縮してしまうだろ」


「……ちゅうのいう通りだな。わっさいびーん(悪かった)。皆、緊張を解いてくれ」


 この場で唯一、ひるまずに口を開いたちゅうという男は、40代くらいで尚巴志の面影を感じる顔立ちをしており、飄々《ひょうひょう》としていた。

 佐司笠さすかさ尚巴志しょうはしの前に出てきてこの場を仕切り始める。


尚忠しょうちゅう王子、にふぇーでーびたんありがとうございました。王では話が進まないので、ここからはわん()が仕切ることにしようかのう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ