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チャンプルーファンタジー  作者: 新里胡差
首里城炎上編
52/148

第52話 ユイマール

 門をくぐると、石垣の壁に囲まれた広場を思いっきり使って、激しい戦いが繰り広げられていた。

 とは言っても、護佐丸ごさまるの防戦一方は変わっていない。

 何もできないので、勉強のためにしっかりと観戦していると、攻撃に押された護佐丸が俺の横に飛ばされてきた。


「先程は助かったさー。うんじゅ(あなた)は、あの化け物を見て逃げるどころか、追ってくるとは大したものだねー!」


護佐丸ごさまるさんの戦いを見て勉強して来いと、ナビーたちに背中を押されてきたんです。だから、絶対に逃げることなんてできませんよ」


「そうだったのか。やしが(だけど)わん()はお手本になるような戦いができてないねー。それに、もう体力もセジもうっぴなーしかねーん(少ししかない)


 護佐丸は納刀して居合の構えで為朝ためともを見据えながら話している。

 為朝は、護佐丸がかもし出す異様な雰囲気を警戒しているのか、距離をとって出方をうかがっていた。


うんじゅ(あなた)、名前はなんていうのか?」


柴引子守しばひきこもりです。シバって呼んでください」


「シバ、うんじゅ(あなた)いじゃー(勇気ある者)みたいだから頼みたいことがある。わん()ユイマール(助け合い)してくれないか?」


「何でもしますけど、ユイマール(助け合い)ってなんですか?」


わん()とシバの体力とセジ(霊力)を合わせた後に半分ずつ分ける技だ。回復役のノロが戦場にいない時にやる技なのだが、引き受けてくれないかね?」


 回復の技は女性がしかできないので、男性しかいない前線の戦場でつくられた技なのだろう。

 俺のHPとSPをあげることで戦況が変わるなら何も迷うことはなかった。


「わかりました。お願いします!」


 護佐丸ごさまるが俺の前に立ち、両手を握り合って腕で輪をつくる。

 その時、石垣の壁の上から聞き覚えのある叫び声が聞こえた。


「キャーーー! なになになに。最高じゃないの! ゴサ×シバ……いや、シバ×ゴサも捨てがたいか……」


 そのままの状態で声のする方を見ると、白虎に乗った琉美が興奮状態で俺たちを見下ろしていた。

 何か、すごく嫌な勘違いをしているみたいだ。

 しかし、俺は琉美がきたことは好都合だと思った。

 このユイマール(助け合い)に琉美を混ぜれば、大量のセジを分けることができると頭に浮かんだので、護佐丸に提案してみる。


「このユイマール(助け合い)は複数人でも出来ますか? 琉美も加えたいのですが?」


「人数は関係ないが、お互いの状況を知らないと不利になったりもするさー」


 琉美のステータスを確認してみる。


「今、琉美のステータスどうなっている?」


「HPは満タンだけど、SPがまだ半分しか回復してないよ。ハアハア……」


「十分だな。琉美もここにきて手をつないでくれ!」


 琉美が堂々と言い切る。


「いやだ! 2人の関係を邪魔する女ポジションになりたくないの!」


「何の話をしているんだよ!」


 その時、白虎が飛び降りてきて俺と護佐丸の前に琉美を無造作に降ろすと、為朝を警戒してくれている。


「ナイス白虎!」


 すぐに琉美の手を取って、護佐丸と3人で輪をつくった。


ユイマール(助け合い)!」


 輪の中心が激しく発光した時、身体のセジが騒ぎだしてすぐに落ち着いた。

 護佐丸は、予想を超えるセジが回復できたようで、驚きを隠せないでいる。


「なんだ、このセジの量は? わん()の最大量を超えてるさー!」


 その時、空から舜天しゅんてんが飛ばされてきて、為朝の近くの石垣に打ち付けられていた。

 そのあと、ナビーとキジムナーも石垣を超えて城内に入ってくる。


「護佐丸さん、シバ! あれは為朝なのか? あんなバケモノ相手に、よく2人とも無事だったね」


「シバのおかげで何とか生き残れたさー。ここからが本番。シバの教えになる戦いをしないとだねー!」


 興奮が落ち着いた琉美が、思い出したように白虎の背中にくくり付けているものを取り出した。


「花香ねーねーから受けとったヒヤー(火矢)を渡すの忘れてたよ! 一緒に舜馬しゅんばの刀も持ってきたけど、良かったのかな?」


 琉美がヒヤーと治金丸じがねまるをナビーに渡すと、ナビーは治金丸じがねまるの方を護佐丸に差し出した。


「これは舜馬順熙しゅんばじゅんきが使っていた治金丸じがねまるです。護佐丸さんに渡しておきましょうね」


「戦利品か。やしが(だけど)、シバは刀を持ってないようだが、必要ではないのか?」


 俺は千代金丸ちよがねまるのキーホルダーを握り、セジを籠めて刀を出した。


「俺はセジの刀で戦っているので大丈夫です」


「なぜ、そんな消費の大きい戦い方を……まあいい。では、先程もやったフィーヌハー(火の刃)を教えようか」


 護佐丸は治金丸じがねまるを腰に差し、左手でさやを握った。


「ナビーに教えてもらっているということは、火系統の技はできるよね? その火系統の技を、納刀した状態で鞘の中に充満させる」


 その時、ヒンガーセジ(汚れた霊力)で舜天の回復を終えた為朝が、激しく怒鳴ってきた。


「クソがーーーー! その刀で戦おうとは、どれだけ我を怒らせれば気が済むんだ!」


「シバはわん()と一緒に。ナビーたちは引き続き舜天をうにげー(お願い)な」


 そう言った護佐丸は燃える刀を抜くと、襲いかかってきそうな為朝に自分から切りかかっていった。


ティンサグヌハナ(ホウセンカの花)チミサチニスミティ(爪先に染める)


 ナビーはヒヤー(火矢)をホウセンカに変えて、花びらに手を突っ込んで爪先を真っ赤に染めると同時に、全身に赤いオーラをまとわせた。

 この技は、キジムナーと戦った時にやっていたが、急激に強くはなるけどあまり時間はかけられないので、一気に決着をつける気なのだろう。


 俺は護佐丸ごさまるについていきながら、さやの中にティーダ(太陽)ボールを充満させるイメージをして、セジをめながら走った。

 護佐丸が大声で叫びながら、激しく燃える刀を為朝にガンガン打ち込んでいる。


「出し惜しみさんけーよ(するなよ)! 全力でいくぞ!」


「セジオーラ、レベル8!」


 全力の言葉に対応すべくセジオーラを全開にして、居合の構えで為朝のスキを待つ。

 護佐丸はユイマール(助け合い)で回復したからか、先程までとは動きのキレが段違いによくなっていて、防戦一方ではなくなっていた。

 打ち合いの最中、護佐丸は左手でさやを握って鯉口こいぐちを為朝の顔に向けると、為朝が手を顔の前にかざした。


 ……今だ!


「居合、フィーヌ(火の)一閃!」


 抜刀された刀は火柱のように燃えたぎっていて、為朝の横っ腹めがけて振りぬいた。

 しかし、鎧を装着したボロボロの舜天が割って入ってきて、軌道を上にずらされた。


「うぐっ。為朝様、いったん距離をとって回復を……」


 為朝は舜天を鷲づかみにすると、石垣の向こう側、城の最奥に引いていった。

 キジムナーはヘトヘトに見えるが、ナビーと協力して舜天を追い詰めていたようだ。


「シバ、なまぬ(今の)技はじょーとーだったさー(良かったよ)! 今度はカジヌハー(風の刃)でいこうね!」


「すみません、まだ、風の技を覚えてないんです」


「そうか……それなら、わん()がシバの鞘にかじぬ(風の)セジを籠めるから、シバが攻撃してくれ。その方が感覚をつかみやすいだろう」


 奥へと続く門をくぐると、広場の真ん中にヒンガーホールがあって、その向こう側で舜天が回復をしていた。

 ナビーとキジムナーは為朝と舜天を引き離すために遠距離で攻撃しているが、為朝のヒンガーセジ(汚れた霊力)で簡単にかき消されている。

 2人とも、そろそろ限界が近いのかもしれない。

 


ゆくらせたら(休ませたら)だめだ。早速やるよ!」


 俺が納刀して居合の構えをすると、護佐丸が鞘を握って風のセジを籠めてくれた。


「これで飛ぶ斬撃が使えるようになる。やってみなさい」


 しかし、風だけでは物足りない気がしたとき、ナビーとのアースン(合わせ技)でやる火災旋風かさいせんぷうを思い出した。


 ……あれは、風を使って火の勢いを増す技だったよな? なら、これに火も籠めれば強くなるんじゃ?


アースン(合わせ技)火風斬かふうざん!」


 激しく燃える斬撃が、一直線に為朝たちに向かっていく。

 為朝には大太刀で受け止められたが、舜天のほうは勢いで弾き飛ばすことができた。


「た、為朝様。これ以上はもう、私が持ちません。もう一つの目的だけ果たして帰りましょう」


「しょうがない。お前までやられてしまうのはまずいか……」


 為朝は鬼化を解いて元の姿に戻ると、右手を天に掲げた。


「戻ってこい、我が子よ!」


 小さく黒い光が北東の方角から飛んでくると、為朝のかざした手に収まった。


舜馬順熙しゅんばじゅんき、こんなに粉々にされよって。まあいい、舜天、こっちにこい!」


 舜天が為朝の元で片膝をつくと、為朝が持っていた黒い光を舜天の身体にのめりこませた。


「壊されて半分の力しか残ってないが、大きな力になるだろう。なじむのに時間がかかるのでいったん引く。護佐丸と言ったか? 今度は決戦の首里で会おう。せいぜいその時まで人生を楽しむことだ。はっはっはっは」


 力が抜けた舜天を肩に担いだ為朝は、高笑いをしたままヒンガーホールに入っていった。

 為朝たちが帰るのを見届けると緊張の糸が切れ、みんなその場で溶けるように座り込んでしまった。

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