第49話 大獅子マジムン
金城琉美
LV.39
HP 480/480 ドSP 2010/2010
攻撃力 420 守備力 110 セジ攻撃力 390 セジ守備力 80 素早さ 60
特殊能力 ドS 中二病
特技 マブイグミ LV.7 サドラゴンウィップ LV.3
グスイ LV.8 ムチグスイ LV.4
見渡す限り畑が広がるその真ん中を、高さ7から8mほどある真っ黒な巨大シーサーがまっすぐ横切って進んでいる。
そのまま行くと住宅街に突っ込んでしまい、大変なことになることは簡単に想像できてしまう。
「色はヒンガーセジで黒くなっているけど、大きさからして残波の大獅子で間違いなかったみたいだよ」
「元からあの大きさなのか? しにまぎーだな! やしが、動きがよんなーだから、時間をかければ何とかなりそうさー。住宅街に行く前にやっつけようねー」
ナビーの話を聞いたシバは、まだ不安なことがあるようで神妙な面持ちになっていた。
「時間をかけてはいられない。キジムナーは、こんなに大きなシーサーを動かせる奴と戦っているってことだろ? 急いで加勢しないと大変なことになるぞ!」
シバの意見に納得できたが、いくら早く倒せたとしても、倒した後のことを考えているように思えなかった。
シバとナビーは、マジムン化が解けた後の巨大シーサーを、元の場所に戻すまでのことを忘れているようだ。
今の現状で最善策を練ってみると、私の勇気次第で戦況が大きく変わる気がしている。
現在、キジムナーは自分と同等以上の敵2人と戦っていて、いつ負けてもおかしくない状況のはずだ。早く加勢をしなければならない。
しかし、こっちの巨大シーサーも放っておけば、何十人、何百人とマブイを落とされてしまう。
今の私がキジムナーに加勢したところで、舜天以上に強い敵と戦っている最中に、回復をしてあげることはできない。だけど、ナビーなら戦いに加わりながら回復もできるだろう。
シバも今帰仁城跡の戦いからさらにレベルが上がっているので、十分戦力になるはずだ。
……ここは、私が1人でやるしかないじゃない!
「ナビーとシバはキジムナーの所に行ってちょうだい。ここは私が何とかして見せるから」
「それなら俺も残るよ!」
「ダメ! シバは絶対、あっちで必要な戦力になる。2人ともお願いだから、私を信じて行ってちょうだい! シーサーを元の位置まで戻すことを考えたら、絶対に間に合わない。私は2人よりセジが多いから、巨大シーサーにセジを籠めて動かすこともできると思うの!」
ナビーは硬い表情になり、考え込んでいる。
私に任せても良いか、脳内シミュレーションをしているみたいだ。
表情が緩んだナビーは、白虎をひと撫でして答えを出してくれた。
「わかった。琉美を信じて任せようねー。白虎も置いていくから、一緒にちばりよ!」
シバも白虎の頭を撫でると、私と白虎に一言ずつ言った。
「琉美はヒーラーなんだから、攻めすぎることには注意してよ。白虎、どっちが本物のシーサーなのかを見せつけてやれ!」
「わん!」
「いや、白虎は本物ではないけど……」
ナビーとシバは、キジムナーの所にすごい速さでかけていく。
私は白虎に乗り、ゆっくり歩を進める大獅子マジムンに近寄って、とりあえずムチで攻撃をしてみることにした。
正面で対峙するとあまりの大きさにビビってしまいそうなので、左側から近づいて左前脚に攻撃する。
「サドラゴンウィップ!」
龍のムチが触れた表面のヒンガーセジが少し薄れただけで、全然ダメージを与えている気がしない。
……時間はかかりそうだけど、これを繰り返すのが確実な倒し方なのかな?
長期戦を覚悟してヒットアンドアウェイを繰り返すが、このままのペースでは住宅街に突入してしまう。
「行くよ!」
続けて攻撃をしようと白虎に指示を出したとき、急に足を止めて身体を低くした。どうやら、私に降りてほしいようなのでそれに従った。
「何か考えがあるの?」
「わん!」
白虎はスロー再生のようにゆっくり歩き始めると、左前脚が地面に着くタイミングでわざと踏み外し、コロンと倒れてしまった。
すぐに起き上がって私に吠えると、大獅子マジムンにも吠えて何かを一生懸命訴えている。
「そうか! 白虎は大獅子マジムンになりきっていたんだ。てことは、あれを転ばせようって言いたかったんだね!」
「わんわんわん!」
しかし、白虎がやって見せたように前脚だけ踏み外させても、バランスは崩れるだろうが、他の3本の脚で踏ん張られる可能性がある。
……私が左前脚に攻撃をして、バランスを崩したタイミングに右側の胴体に白虎の獅子突進をくらわせば、いけなくもないかな?
実際に白虎に触れながら、今からやることを理解させる。
「私が左前脚に攻撃をしてバランスを崩す。白虎は反対側から胴体に獅子突進してちょうだいね」
「わん!」
白虎は理解したようで、私を背中に乗せて大獅子マジムンの進行方向に先回りして降ろしてくれた。
そして、ヤンバルスパイクモードになって反対側の奥の方に走って行くと、いつでも行けるようにスタンバイしている。
私たちのことを気にも留めず、ただ歩き続ける大獅子マジムンをよく見て、攻撃のタイミングを見計らう。
白虎がやって見せてくれたように、足が上がって降ろされるタイミングでないとバランスは崩れないので、その時を待つ。
ついに、先回りした私の前に大獅子マジムンがきた。
すごい迫力なのでひるみそうになったが、左前脚だけに集中して意識をしないようにした。
ムチの届く距離で足が上がり、降ろされる。
「サドラゴンウィップ!」
地に着くはずだった左前足に、銀の龍が噛みつきながら押し込むと、踏み外したように少しこちら側に体が傾いた。
「いっけーーー!」
「わうん!」
ヤンバルスパイクモードの獅子突進が、大獅子マジムンの胴体にぶつかると、半回転しながら倒れた。
こちら側に倒れてきたので、急いでその場から離れる。
……やった! 作戦成功!
喜んでいる暇はない。
白虎は、倒れても手足を動かし続ける大獅子マジムンに向かって、咆哮波を何発も当てていた。なるべく触れないようにしている様だ。
……私もやらないと。
私もムチで何度も何度もヒンガーセジが消えるまで、ひたすらたたき続ける。
大技のサドラゴンウィップをした方が早いが、この後、ヒンガーセジが抜けた大獅子にセジを籠めて元の場所に戻すことを考えれば、SPを温存しなければいけない。
どれくらいセジを使うのか、やってみないとわからない。
大獅子マジムンは3分ほど攻撃をうけ続けて、やっと動きを止めた。
こんなのがもし攻撃してきたらと思うと恐ろしい。巨大な分、動かすだけで精一杯だったのだろう。
マジムンではなくなったので、畑の真ん中に残波の大獅子が倒れているのを一般人にも見えている状況だ。
大事になる前にセジを籠めることにする。
……元の場所に戻ってちょうだい!
今までに感じたことがない量のセジを消費している感覚がした。
それでも、さらにセジが大獅子に流れこんでいく。
しばらくするとセジの流れがとまり、残波の大獅子がゆっくり立ち上がった。
元いた場所の方向を見据えると、そのまま真っ直ぐ歩きだした。
5分ほどかけて元の台座に乗せることができた。
最後に、スマホで残波の大獅子を検索して、出てきた画像を参考に向きを調整する。
この残波の大獅子は、琉球王朝時代に中国と交流があったことを後世に伝えるためにつくられたもので、中国を見ているらしい。
魔よけとして造られたものではないので、戦いには向いてなかったのかもしれない。
自分の役目を終えて少し気が抜けると、急にけだるさを感じた。
……もしかして、セジが切れそう? 確認しなきゃ。
LV.42
HP 500/500 ドSP 38/3026
攻撃力 490 守備力 130 セジ攻撃力 420 セジ守備力 100 素早さ 70
特殊能力 ドS 中二病
特技 マブイグミ LV.7 サドラゴンウィップ LV.4
グスイ LV.8 ムチグスイ LV.4
大獅子マジムンを1000発以上たたいてドSPが増えていたにもかかわらず、あと少ししか残ってない。
……やっぱり、私じゃないとダメだったんだ。勇気を出してよかった!
ナビーたちの戦況は気になるが、セジが少ないヒーラーが戦場に向かっても足手まといになるので、花香ねーねーと連絡を取って、白虎に乗ってヒヤーを受け取りに行くことにした。
白虎にまたがり電話をかけようとした時、背後から急に声をかけられた。
「くまーぬマジムン、たっぴらかしたのはうんじゅかねー?」
「はい!?」
振り返ると淡い黄色の着物をきて、腰には刀を差している、あごひげを生やし顔の堀が深めな男性が立っていた。
「うんじゅはナビーぬしんかやんやー? ナビーは、まーやがやー?」
何を言っているのかわかりにくかったが、ナビーを探していることだけはわかった。
着物に刀、そしてうちなーぐち。この3つの要因から異世界琉球から来たのだと悟った。
……それなら、急いで連れて行かないと!
白虎の上から男性に手を差し伸べて後ろに乗るように促したが、手を借りずにサッと飛び乗ってきた。
「ゆたしく」
「白虎、ナビーの所に急いでちょうだい!」
「わん!」
皆がまだ無事なことを祈りながら、急いでこの人を連れて行くことにした。




