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チャンプルーファンタジー  作者: マーナリ
火の鳥マジムン編
11/145

第11話 リベンジ

 2019年3月7日。

 比地大滝ひじおおたきの休業最終日。決戦の日がやってきた。


 施設の人にお礼をするため、上運天かみうんてんさんも現地に行くというので、早朝からラップカーで送ってもらった。


 施設の管理棟で上運天さんと別れて、俺とナビーと白虎で山道を進んでいく。


 前回と違って目的地までの距離を知っているので、だいぶ気が楽だった。

 戦いに支障をきたさないために、ゆっくりと疲れないように進むことにして、休憩をはさみながら1時間ほどかけて滝に着いた。


 滝口付近の木の枝には、あの時と同じように火の鳥マジムンが止まっている。

 一度痛い目にあわされているからか、白虎はやる気満々で、グゥーとうなりながら今にも飛び出しそうなので、首元を撫でて落ち着かせる。


「ここまで来てなんだけど、ナビーは今の俺たちで、あれに勝てると思っているのか?」


「ここは足場が悪いし、敵は空を飛ぶから戦いにくいけど、シバたちが特訓の成果を出せば大丈夫よー!」


「それならいいけど、どうやって戦うんだ?」


「私はアカショウビンが上空に逃げないように、私自身が上空に行って対処するから、シバと白虎で低空飛行になったアカショウビンに攻撃して倒してちょうだいね……それからシバ、忘れないようにね!」


「大丈夫だって! 今、確認しようと思ってたから」


 戦う前にステータスをしっかり確認する。



Lv.15  


HP 90/90  SP 83/83


攻撃力 120 守備力 112 セジ攻撃力 40 セジ守備力 26 素早さ 20


特殊能力 中二病 マージグクル(土心) 昼夜逆転 身代わり


特技 テダコボ……



 甲高い鳴き声が急に聞こえてきた。


「キョローー!」


あいやーなー(大変だ)! 気づかれたさー! しょうがないからすぐ行くよ!」


 ステータス確認の途中だったが、重要な項目は確認できていたので、直ぐに戦いの気持ちに切り替えて、白虎と一緒に滝つぼ付近の岩場に飛び乗った。


 ナビーはヒンプンシールドを足場に、滝口にいる火の鳥マジムンめがけて駆けあがっていく。

 火の鳥マジムンは逃げることなく、ナビーに向かって飛び出すと、燃えている大きな左翼で打ち付けようとしている。

 ナビーは、滝の中間くらいの高さに設置したヒンプンに立ち止まると、博物館で買って普段からつけている、花笠はながさの飾りがついたヘアゴムを左手の甲にはめて、セジをめると手持ちの盾になった。


「叩き落とすよー!」


 花笠はながさの盾で、向かってくる炎を振り払うように、滝つぼめがけて叩きつけると、火の鳥マジムンはすごい速さで滝つぼに落ちていった。

 ナビーは、滝口付近の木の枝に乗り移って滝つぼを見下ろしている。


「やったか!」


「おい! いくら何でも早すぎだろ!」


「へへ、言ってみただけさー!」


 案の定、倒せてなかった。

 水中から出てきた火の鳥マジムンは、全身に炎をまとい、ますます火力が上がっている様だ。

 今度は俺と白虎に向かって、燃えながら飛んでくる。

 多分、ここまで燃えている敵にテダコボールは通用しないと思うので、手に石をもって身構えた。

 すると、白虎が俺の前に立ち、迎え撃とうとしている。

 そこに、ナビーの掛け声が響いた。


「白虎! 咆哮波ほうこうは!」


「ワウン!」


 激しい波動が火の鳥マジムンに直撃したが、少し勢いが落ちた程度でそのまま白虎にぶつかりそうになったのを見て、あわててヒンプンシールドで白虎を守った。

 急に現れたヒンプンシールドをそのまま破壊されたが、勢いが落ちていたおかげでこちらまで攻撃は届かなかった。

 警戒しているのか、俺とナビー両方から距離が取れる木の枝に止まって、観察し始めた。


「シバ、ナイスタイミングだったさー! こいつ、前より強くなっているみたいだから、気合入れて行こうねー!」


 ナビーが自分より上にいることが気に食わないのか、飛び出したと思ったら上昇し始めた。

 鳥は基本的に獲物より高いところにいるので自然な反応だろう。

 しかし、ナビーはそれを許さなかった。空中に設置した足場にわたり、火の鳥マジムンに向かって攻撃を仕掛ける。


カタブイ(通り雨)!」


 かざした両手からシャワーのように水が発射されて、火の鳥マジムンに降り注ぐ。

 火力が弱まり危険だと感じたのか、また元の高さまで戻っていった。


「上空に行くのはあきらめて、そっちに行くと思うから気を付けて!」


 ナビーは空中からカタブイ(通り雨)で攻撃を再開した。

 当たらないようにと、火の鳥マジムンは飛び回って逃げている。

 逃げながらこちらに近づくと、翼で攻撃をあててこようとするが、イシ・ゲンノー(石ハンマー)ではじき返し、それが数回続いた。


 白虎が俺に向かってワンと吠えてきた。自分も戦いに加わりたいのだろうか、少し興奮気味に見える。


「ナビー! 白虎に攻撃させたいけどどうする?」


 正直、この足場の悪い場所で白虎はとても不利なので、できることが限られてくる。

 突進なんてここではできないし、咆哮波ほうこうはも相手が近寄らないと届かないので、白虎の活躍の場面はなさそうだ。……と思っていたが、ナビーには考えがあったようだ。


「シバ、状況に応じてサポートお願いね!」


 ナビーはカタブイ(通り雨)をやめた。

 逃げる必要がなくなった火の鳥マジムンは、グルっと滝の前まで飛び回り、こちらに向かってくる。


「ヒンプンシールド・ナナチ(7つ)!」


 白虎の正面から火の鳥マジムンまで、一直線にヒンプンシールドで道ができた。

 ナビーは道を作った後、直ぐに白虎に指示をし、次の技を繰り出した。


「白虎、四肢突進ししとっしん! ヨンナー(ゆっくり)、ヨンナー、ヨンナー……」


 白虎がヒンプンロードを走り出す。

 ヨンナーは確か、使用中は手が離せないと言っていた技だ。

 ヨンナー効果で、火の鳥マジムンのスピードが明らかに遅くなっているのが分かった。

 しかし、火の鳥マジムンはそのまま突っ込むのはヤバイと感じ取ったのか、ヒンプンロードの上からずれようとしていた。

 ヒンプンロードからずれると、白虎の攻撃が届かなくなると思い、咄嗟とっさに逃げようとしている方向に通せんぼを設置した。


「ヒンプンシールド・ターチ(2つ)!」


 俺が設置したヒンプンに驚いて、進むのが一瞬止まった時、白虎が白く光ったセジをまとい火の鳥マジムンを滝まで吹っ飛ばした。


「うおおおおおおお!」


 思わず叫んでしまうほど気持ちよかった。

 みんなで強敵に立ち向かい、サポートしあって成功させるこのチーム感が最高に心地よく感じた。


「ワウーーーーン!」


 白虎は雄たけびを上げながら、ヒンプンロードを使い元の位置まで戻ってくると、すぐに俺めがけてタックルしてきた。

 俺もうれしかったので受け止めて思いっきり撫でてやる。


 維持するのが大変なのでヒンプンロードを消したナビーが忠告してきた。


「喜ぶのは後にしたほうが良いよ。まだ、ヒンガーセジ(汚れた霊力)が出てきてないから、倒せてないってことだからね!」


 ナビーが言ったように、喜ぶのは早かったようだ。


 滝つぼから出てきた火の鳥マジムンは、増々燃えているように見えた。

 このマジムンは、今までの奴らと明らかにレベルが違いすぎる。ここまでやって倒せないとは思わなかった。

 火の鳥マジムンは白虎だけを見ている。

 何もできずにただ立ち尽くしている白虎に向かって、火の鳥マジムンは口から火を吐いた。


「あぶない!」


 俺とナビーは、ヒンプンシールドをだす時間がないほど不意を突かれてしまう。

 そこに、俺の特殊能力【身代わり】が発動した。

 白虎に向けられていたはずの火炎放射が、方向転換して俺に向かってくる。


「うっ!」


ウフアミ(大雨)!」


 ナビーが攻撃をすると火がおさまった。

 カタブイ(通り雨)の勢いよりも倍以上の威力で、バケツをひっくり返したような水が火の鳥マジムンに当たって、また滝つぼに落ちていった。


「大丈夫かシバ!」


 もろに食らってすごい痛かった、というより熱く感じた。

 自分は大丈夫なのかを知るために、HPとSPを確認してみる。



HP 31/90  SP 5/83



 ……ヤバイ。


 確か、特殊能力【身代わり】は、攻撃をかばうとダメージが半減する効果があったはずだ。

 HPを半分以上減らされているということは、普通に食らえば一発でやられていたことになる。


「うん、身代わりの効果で大丈夫だった! だけど、次食らったら終わりだよ」


 ナビーは俺たちのところまで下りてきて、俺に回復技のグスイ()を掛けてくれた。


「そろそろ決着をつけないと、こちらが不利になるね。シバはあとSPどれくらい残ってるね?」


「あと5しかないけど、どうしよう……」


「少ないな……私も使いすぎて、あまり残ってないわけよ……」


 ナビーが悩んでいると、火の鳥マジムンが滝つぼから出てきた。

 一瞬身構えたが、火の鳥マジムンは滝口付近の木に止まった。


「悩んでる暇なさそうだね。シバ、これを白虎の顔に被らせて、セジをめてちょうだい」


 渡されたのは、ナビーが俺の家で見つけて持っていたお面型のシーサーだった。

 何で今これが出てくるんだと思ったが、せかされたので急いで白虎に被せてやると、すんなり受け入れて被ってくれた。

 そして、言われた通りセジをめると、白虎の体が虎くらいの体高で四肢が丸太のように太くなりながら、全身赤褐色(せきかっしょく)に染まっていった。


「うわぁ!? スゲー! なんだこれ!?」


「シーサー化、成功! やっぱり、マージグクル(土心)もちがやったらSPも少量で済むし完成度も高いさー!」


「ガオーーーーーーン!」


 シーサー化した白虎が雄たけびを上げると、火の鳥マジムンが急上昇し、ナビーに邪魔されないのをいいことに50m位の高さまで飛んで行った。


「下降しながら勢いつけてくるつもりだな。よし、シーサー化した白虎の咆哮波ほうこうはで迎え撃つよ! シバは危険だから私の後ろに下がってて」


 今の俺は何もできないので、言われた通りナビーの後ろに隠れさせてもらう。

 火の鳥マジムンはタイミングを見計らっているのか、上空で円を描くように回ってこちらを見ている。

 いつ来てもいいように、こちらは上空を見上げながら構える時間が数十秒続いたとき、火の鳥マジムンが一気に急降下してきた。


「来るよ!」


 相手もとどめを刺しに来てるのか、今までとは段違いの勢いで向かってくる。

 ナビーは咆哮波ほうこうはが当たる距離まで引き付けるために、冷静にタイミングを見計らっている。

 そして、白虎に指示を出した。


「白虎――咆哮へ……?」


 咆哮波と言う前に火の鳥マジムンの炎が消え去り、ヒンガーセジ(汚れた霊力)黄金勾玉クガニガーラダマに吸収されると、火の鳥マジムンは元のアカショウビンに戻り、森の奥へ消えていった。


「え!? 勝ったの? 今、何かしたっけ?」


「何もしてない……勝手にやられよったさー。何でかねー?」


 2人で顔を合わせ考え込んでいると、ナビーが気が付いたようではしゃぎながら教えてくれた。


「わかったー! 特殊能力【中二病】のこと忘れていたさー! 私とシバ、2人を同時に視認しにんしたから、中二病の効果で2人分のダメージを与えていたんだねー」


「まじか! 中二病怖すぎだろ!」


「まあ、アカショウビンのHPをだいぶ削れていたんだねー。よかったさー」


「そうだな、でも、白虎がこんなすごい変身したのに、消化不良みたいになったな……っていうか、昨日の午後だけで、よくこんなにいろいろ白虎に仕込んだな?」


「ただ、技名付けて覚えさせた後、面シーサーを付けたら変身できることを教えただけだよ」


 ナビーはシーサー化のままの白虎の背中を大きく撫でながら言う。


「シバの面シーサー初めて見たとき、本当は私が被ろうと思ってたんだけど、白虎がいてくれてよかったさー」


「はぁ? ナビーが被ってもシーサー化するのか?」


「多分するよ。そして、シバをのせたりできないかなと思ってたわけよ」


「誰が乗るか!」

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