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優しい神様と赤ちゃん

作者: さち

 空の上に神様の国がありました。そこには優しい神様とたくさんの赤ちゃんがいました。赤ちゃんはたくさん遊び、美味しいものをお腹いっぱい食べ、暖かい布団で眠ります。赤ちゃんたちは神様からの愛情をいっぱい受けて幸せに暮らしていました。

 神様の家の外は真っ白い雲の庭が広がっています。赤ちゃんたちは楽しく遊びながら時々雲の隙間から下界を覗いていました。下界にはたくさんの人がいました。その中でも赤ちゃんたちは仲良く2人でいる人たちに興味を持ちました。

 女の人と男の人、男の人同士、女の人同士、肌の色が違う人同士、目の色が違う人同士、色々な人たちがいましたが、みんな幸せそうでした。そんな人たちを見るのが赤ちゃんたちは大好きでした。


 ある時、ひとりの赤ちゃんが神様に言いました。

「神様、ぼく、下界に行ってみたい」

「そばに行きたい人を見つけたのかい?」

神様は赤ちゃんを優しく抱き上げて尋ねます。すると赤ちゃんはにっこり笑ってうなずきました。

「うん、見つけたの。あの人たちのところに行きたいな」

「そうか。だが、下界は楽しいことばかりではないよ?今は優しい人でも、いつか怖い人になるかもしれない。きみも病気や怪我をするかもしれない。長くは生きられないかもしれないし、生まれることもできないかもしれない。それでも下界に行きたいかい?」

神様の問いかけに赤ちゃんは笑顔でうなずきました。

「うん!それでもぼくは行きたいよ。少しだけでもいいの。あの人たちのそばに行きたいな」

赤ちゃんの答えに神様は優しく微笑んでうなずきました。

「わかった。ならば行っておいで」

そう言って神様は赤ちゃんを下界に送り出しました。


 またある時、赤ちゃんが神様に言いました。

「神様、あたし下界に行きたいの」

神様は優しく微笑んで赤ちゃんを抱き上げました。

「そばに行きたい人を見つけたのかい?」

「うん!あの人たちよ!」

そう言って赤ちゃんが雲の隙間から下界を指差します。神様が目を向けると、そこには男の人が2人いました。

「きみがあの人たちのところに行くには、別の女の人にお母さんになってもらわなくてはいけない。お母さんになってもらう人は見つけたのかい?」

「うん、見つけたの。お母さんにはあの人がいいわ。でも、あの男の人たちのところに行きたいの」

赤ちゃんの答えに神様はうなずきました。

「あの人たちのところに行くには、お母さんはきみと離れ離れにならなくてはならない。お母さんはきっと悲しむだろうし、きみも悲しいこと、辛いことがあるだろう。それでもいいかい?」

「いいわ。お母さんに悲しい思いをさせるのは辛いけど、あたしはお母さんにもあの人たちにも会いたいの」

神様はうなずくと赤ちゃんの額にキスをしました。

「わかったよ。では行っておいで」

そう言って神様は赤ちゃんを下界に送り出しました。


 神様は赤ちゃんたちがそばに行きたい人を見つけると下界に送り出していました。神様はいつも優しく笑っていますが、赤ちゃんを送り出すときだけは少しだけ悲しそうでした。

「神様、神様はいつもぼくたちを送り出してくれるけど、寂しくないの?」

ある時、ずっと神様を見ていた赤ちゃんが尋ねました。神様は驚きながらも赤ちゃんを抱き上げて微笑みました。

「寂しくないよ。下界に行った子たちはいつか命が尽きてまたここに戻ってくるからね」

「じゃあなんで下界に送り出すとき悲しそうな顔をするの?」

赤ちゃんの質問に神様に優しく微笑んでぎゅっと赤ちゃんを抱き締めました。

「下界には辛いこと、苦しいこと、悲しいこともたくさんある。そんなところに送り出すことが少しだけ辛いんだ」

「神様は優しいね。でもね、ぼくたちは下界に行けて嬉しいんだ。たとえほんのちょっとしかいられなくても。だから神様、悲しまないでね」

赤ちゃんはそう言うと神様の頬にキスをしました。


 今日も神様は赤ちゃんたちを下界に送り出します。そして、命を終えて真っ白な存在になった赤ちゃんたちを迎えます。

 神様の国では優しい神様と赤ちゃんたちが下界に行く日を待ちながら今日も幸せに過ごしています。

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